3PARをめぐるデルとヒューレット・パッカードの買収合戦、決着へ
2010.09.13
Updated by WirelessWire News編集部 on September 13, 2010, 17:30 pm JST
2010.09.13
Updated by WirelessWire News編集部 on September 13, 2010, 17:30 pm JST
8月16日、PCベンダのデルが、企業向けストレージベンダとして知られる3PARの買収を発表しました。しかし最終的に、3PARはヒューレット・パッカードが買収することで決着しました。
なぜデルは3PARを買収しようとし、ヒューレット・パッカードがそれをさらっていったのか、3PARとはどんなベンダなのでしょうか?
▼3PAR
3PARは、ハイエンドからミッドレンジをカバーする製品ラインナップを備えたストレージベンダ。ファイバーチャネルに対応し、先進的なアーキテクチャを採用することで定評があります。
特に、実際のストレージ容量に対して仮想的なストレージ容量を設定することで効率的なストレージの利用を可能にする「シンプロビジョニング」機能をいちはやく実装し、アクセスが集中するデータに対しては高速なSSDを自動的に割り当てるなどの高度な「自律階層化」機能などが特長です。
デルのストレージは、低コスト指向でDAS(Direct Attaced Storage)やNAS(Network Attached Storage)を中心に揃えるPowerVault製品ライン、iSCSIによるミッドレンジをカバーしたEqualLogic製品ラインを持ち、さらにハイエンドはEMCからのOEMによるDELL|EMC製品ラインを持っています。
デルは自社の製品ラインナップに欠けていたミドルレンジからハイエンドのストレージを、3PARの買収によって充実させることができるようになるとみられていました。
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ところがデルが3PARの買収を発表した一週間後の8月23日、なんとヒューレット・パッカードが待ったを掛けました。ヒューレット・パッカードはデルの提示した1株あたり18ドルに対し、1株あたり24ドルを提示したのです。
ヒューレット・パッカードは3PARの製品に相当するミッドレンジのストレージを揃えてはいますが、仮想化機能に強い3PARの製品は同社にとって魅力的であり、かつこれをデルに取られるのはまずい、という判断が働いたと考えられます。
その後、デルとヒューレット・パッカードは3PARの買収を巡り株価をつり上げていきましたが、結局ヒューレット・パッカードが1株あたり33ドルで決着。3PARの買収を正式に発表しました。
デルとヒューレット・パッカードが3PARを取り合った背景にはいくつかの要因が考えられます。1つは、PCサーバ市場で両社が激しいライバル関係にあることです。PCサーバの多くはストレージとセットで販売されるため、ストレージ製品の強さはサーバベンダにとって重要であり、かつストレージ市場は今後の成長を期待されています。
そしてもう1つはクラウド、仮想化に対応するストレージの重要さです。仮想化はストレージの世界にも入り込んできており、シン・プロビジョニングなどストレージの物理的な容量と論理的な容量を切り離すストレージの仮想化機能や、VMwareのvSphereが持つストレージアレイAPI(VAAI、vStorage API for Array Integration)に対応するような、サーバ仮想化機能に対応したストレージの機能などが要求されるようになってきています。3PARはシンプロビジョニングに長け、またVAAIへのいちはやい対応も表明していました。
サーバの仮想化に続いて、ストレージの仮想化、ネットワークの仮想化と、企業のインフラストラクチャを構成する要素は仮想化への進化を進めており、それがクラウドへと向かう方向を示しています。3PARをめぐる買収劇は、そうした重要性を端的に表しているようです。
文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)
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