ドイツテレコム（Deutsche Telekom AG）が自社サイトでLTEの申込み受付を開始している。サービスブランドは「Call & Surf Comfort via Funk」という。敢えて訳せば「ラジオで快適、コール＆サーフ」ということで、DSLなしでインターネットを定額制で使え、さらにドイツ国内の固定電話にも一律料金でかけられるらしい（ドイツ語の「ラジオ」は"Funk"なのだが、英語の"funk"には「臆病」という意味があるので、英文の記事では変なネーミングのような扱いを受けているようだ）。

ダウンロード速度2,048kbpsで、月額29.95ユーロ（1ユーロ＝106.39円換算で約3,186円）で電話は全国2.9セント（約30.9円）/分。9月3日から8日までベルリンで開催のIFA 2010（Internationale Funkausstellung Berlin（ベルリン国際無線展覧会））で発表され、ウェブサイトで予約申込み受付が始まっている。

ドイツテレコムはブロードバンド・ギャップ、あるいは、DSLギャップと呼ぶ、固定系のブロードバンドが届いていないドイツの「地方部（rural areas）」の500エリアで今年中にLTEの提供を開始し、2011年には倍の1000エリアに増やす。提供中のUMTS（IMT-2000準拠の欧州3G）を使ったり、DSL提供エリアを広げることで、ドイツテレコムのカバーすべきエリアに点在する1000ヶ所のDSLギャップを2010年末までに埋め尽くす計画だ。周波数は800MHz帯を使う。

一方、ドイツ・ボーダフォン（Vodafone D2 GmbH）もLTEの料金計画を9月6日に発表した。同社は2010年末までに「地方部」の1,000エリア、2011年3月には1,500エリアに対し、こちらはダウンロード7.2Mbps（データ量は10GB）で月額39.99ユーロ（約4,254円）、21.6Mbps（15GB）が49.99ユーロ（約5,318円）、69.99ユーロ（約7,446円）だと50Mbps（30GB）になる。

なぜ、ボーダフォンもドイツテレコムも「地方部」なのかというと、それが今年行われた4G周波数オークションの条件であり義務だからだ。LTE周波数を割り当てられる事業者は、ブロードバンドの恩恵に浴していない地域で展開（90％をカバー）してからでなければ、都市部でのサービス提供をできない。人口稠密地域では恐らく1.8GHzや2.6GHzを使い、セル半径は1km程度で、ピコセルやフェムトセルを組み合わせたサービス展開をすることになるのであろうが、「地方部」では実効放射電力によっては5kmから30kmは飛ぶといわれる800MHzを使うのがよいらしい。

ドイツテレコムはIFA 2010で、同社の「Entertain」サービスに加入している利用者（ヨーロッパ全土）に対して、3D動画配信の提供を開始したことも明らかにした。「Entertain」は、いわゆる通信事業者が提供するトリプルプレーの動画配信部分で、既に配布済みのメディア・レシーバー（STB）が3D信号を受信できるため、ハードウェアの変更は不要だが、3Dメガネと、3Dテレビ受像機が必要となる。

さらにドイツテレコムと言えば、今週、フランステレコム（France Telecom SA）との合併の可能性が取りざたされた。ドイツ銀行（Deutsche Bank AG）がフランステレコム株の株式持分を5％まで増やしたことなどから噂が流れ、フランステレコムの労働組合から会社側に説明が求められたようだが、フランステレコムは噂を否定した模様。

【参照情報】
・ドイツテレコムのLTE予約サイト
・Deutsche Telekom showcases 4G mobile communications at IFA （ニュースリリース）
・DT opens the doors for DSL replacement using Huawei LTE gear (Rethink Wireless)
・DT Takes First Orders for LTE Service (Light Reading Mobile)
・Vodafone Germany announces LTE expansion, tariff plans (LteWorld)
・ドイツテレコムの「Entertain」サイト
・France Telecom, Deutsche Telekom Could Merge, Union Says, Reuters Reports
・France Telecom dismisses Deutsche Telekom merger rumors
・ドイツの4Gオークション終了 - 落札額は予想を大幅に下回る