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数字で見る"スマートフォンシフト"

2010.10.04

Updated by Naohisa Iwamoto on October 4, 2010, 09:00 am JST

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(cc) Image by Takamorry

最近になって急速に、スマートフォンを街角などで見かけることがとても多くなった。読者のみなさんも同じように感じているに違いない。

●体験1

先日、とある記者会見が開かれた。特にアップルやソフトバンクモバイルとは直接の関係はない企業のものである。会見の場にはざっと50人ばかりの記者や編集者がいただろうか。そこでふと周囲を見回すとほぼすべての参列者がiPhoneを机に載せているではないか。その瞬間のスマートフォンの市場占有率は95%といった印象だった。

これは、いささか特殊な例かもしれない。IT関連の記者たるもの、自ら新しいデバイスを試すぐらいの心意気は必要だろう。使いもせずに記事は書きにくい場合もある。

●体験2

東京の山手線は、いつでも混雑している。飲み会の帰りにたまたま座れた山手線で、メールチェックなどをしていた。何気なく他の乗客を見ると、見える範囲で携帯電話を持っていた人がおよそ20人。その中で従来型の携帯電話(フィーチャーフォン=ガラケー)を手にしていた人は4人ほど。残りはほとんどがiPhoneで、W-ZERO3シリーズとXperiaが1人ずつぐらい見えた。その瞬間のスマートフォンの市場占有率は約80%だった。

これに近い現象は、よく体験するようになった。喫茶店や電車の中など、人が集まり、そして何かで時間を潰している場面で。自分も含めて周囲の10人ぐらいがみんなiPhone 4使いだったりすると、少なからず驚くことになる。先日などは、BlackBerryを使っていたビジネスウーマン風の女性が、ハンドバッグからもう1台取り出したのがデコったiPhoneだったこともあった。この人、スマートフォン率が200%?かもしれない。

たまたま目にした範囲が特殊だったのだろうか? 実際にどの程度スマートフォンが普及しているのか、数字で見てみよう。

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出荷台数は昨年度の「倍増」

2010年9月、大手の調査会社2社がモバイルに関連した市場の調査報告を公表した。矢野経済研究所の「国内携帯電話市場に関する調査結果 2010」とIDC Japanの「国内モバイルデバイス市場 2010年第2四半期の実績と予測」である。これらの調査からいくつかの数字をピックアップして、スマートフォンへのシフトの状況を確認していきたい。

まず、国内でスマートフォンはどのぐらいの増え方をしているのか。携帯電話市場2009年の実績と2010年の予測を比較した調査結果から見ていこう。矢野経済研究所の調査では、2010年度のスマートフォンの出荷台数として426万5000台を見込んでいる。これは2009年度に比べて196.1%の数値だという。2009年から2010年の1年間で、市場に流通していったスマートフォンは倍増したということになる。

同じく矢野経済研究所によれば、2010年度の移動体通信端末の出荷台数は3736万台を見込んでいる。これは携帯電話、WiMAX、PHSの各端末を含んだ数字である。2009年度に比べて101.5%の微増。前年の2009年度の実績は2008年度比で92.3%と落ち込んでいたことからすると、微増とは言え市場規模が持ち直してきている傾向あることが分かる。落ち込んでいた2009年度も、矢野経済研究所では「スマートフォンやモバイルルーターに代表されるモバイルデータ通信端末の人気が高まっており、低迷する市場を牽引した」と分析している。

矢野経済研究所のリポートの抄訳では言及していないが、これらの数字から計算すると、2010年度のスマートフォンの出荷台数シェアは11.4%になる。1年間の出荷台数シェアと実際の利用台数シェアには違いがあるとはいえ、スマートフォンが2010年に1割を超すシェアを確保するという数字には現実味がある。冒頭に紹介したような実際の印象からすると、むしろ少ないぐらいにも感じる。

国内移動体通信端末・スマートフォン出荷台数 実績・予測 [PDF]
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金額ベースではさらにシェアを高める

一方、IDC Japanの調査は、2010年第2四半期の国内モバイルデバイス市場についてのものだ。四半期の結果の数字であり、矢野経済研究所の年度ベースのものとは基準が異なることをご承知おきいただきたい。

まず市場全体では、2010年第2四半期に2911億円となったとの結果を得た。これは対前年同期比23.1%増であり、IDC Japanの調査でも2010年にはモバイル関連の市場が回復していることが見て取れる。その要因としてIDC Japanは「(1)iPadにより、メディア・タブレット市場が急速な立ち上がりを見せ始めたこと、(2)スマートフォン市場の急拡大、(3)ポケットWiFiに代表される3Gパーソナルルーター需要の拡大」を挙げている。

具体的には、2010年5月に発売になった「iPad」の効果でメディア・タブレット市場が50億円以上にまで急拡大していることが1つの要因だという。また、イー・モバイルやソフトバンクの「ポケットWiFi」に代表されるモバイルWi-Fiルーター(IDC Japanでは3Gパーソナルルーターと表記)も20億円規模に達するように拡大基調にあるようだ。しかし、新興のこうした製品はたかだか50億円や20億円であり、市場全体の1%〜2%にすぎない。20%以上の市場成長に対して、1つの要因ではあっても主因ではない。ここでは、やはりスマートフォンの成長が大きく起因していると考えるのが自然だ。IDC Japanではスマートフォンの市場規模は450億円レベルにまで拡大していると分析している。「ソフトバンク向けiPhoneに加え、ドコモ向けXperia等の端末販売が好調」(IDC Japan)であることが、こうした市場拡大に貢献しているというのだ。

市場規模で見ると、2010年第2四半期のおけるスマートフォンの450億円という金額は、全体の2911億円に対して15.5%を占めるに至ったことになる。矢野経済研究所の調査では、2010年度の携帯電話端末の傾向の1つには「普及価格帯モデルへのシフト」があるという。普及価格帯のモデルでも充実した機能を備えるようになり、ハイエンド機から普及機に主流がシフトしているのだ。そうなると、比較的単価が高いスマートフォンが、台数よりも金額で先行して高いシェアを示すこともうなづける。

もう1つ、スマートフォンへのシフトが示す数字がある。これは矢野経済研究所の調査で、海外メーカーのシェアを見たものだ。2010年度の海外メーカーのシェアは17.5%に上るというのだ。2009年度の16.2%から一段とシェアが拡大する見通しなのである。2010年になって、国産のスマートフォンも再び製品化が活発になっている。とはいえ、国内でスマートフォンの代名詞といえばiPhoneであり、その伸長が海外メーカーのシェアをじりじりと押し上げていると言えそうだ。

国内モバイルデバイス市場規模予測、2010年〜2014年
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スマートフォンはどこまで増えるのか

今後の見通しを確認してみよう。矢野経済研究所では、2013年度の市場規模をこう予測する。移動体通信端末の出荷台数は4516万5000台、そのうちスマートフォンが1354万台、モバイルデータ端末が539万台というのだ。これは全出荷台数の30.0%をスマートフォンが占めるという予測だ。IDC Japanの国内モバイルデバイスの市場規模予測で見ても、2014年には1兆4400億円の市場全体に対して、グラフから読み取れる範囲で約5000億円がスマートフォンの市場となる。金額シェアは2014年にはざっくり35%ほどにもなる。

スマートフォンには明確な定義がなく、iPhoneが登場するまではその線引きを一般に理解してもらいにくかった。今でもタッチ操作のiPhoneやXperiaなどはスマートフォンと言い切りやすい。一方で、同じOSで12キーを付けた端末だって作れるだけに、フィーチャーフォン的な形のスマートフォンも今後はあり得るだろう。まあ、それでもiPhone的なものを大きくスマートフォンといったときに、流れは明らかにスマートフォンへシフトする方向にある。

スマートフォンの台数シェアが今で10%なら、確かに統計数値としては3年後に30%というのは自然な数字だろう。きっと、1億数千万契約の中でのシェアはそんな数字に落ち着く。でも、いざという時に電話ができればいいといった利用者や、ランドセルにお守り代わりにGPS端末として付ける利用者もいる。そうなると、アクティブな携帯電話の利用者の中でのスマートフォン比率はもっと高く見えるはずだ。今でも街なかでスマートフォンユーザーに囲まれることがしばしばあることを考えると、3年後のアクティブユーザーの多くがスマートフォンの使い手である可能性は高い。シフトは急速に進むと考えて準備を進めたい。

【調査資料】
国内携帯電話市場に関する調査結果 2010(矢野経済研究所)
国内モバイルデバイス市場 2010年第2四半期の実績と予測を発表(IDC Japan)

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。