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アフリカ編(1)急成長するアフリカ携帯電話市場

2011.01.20

Updated by WirelessWire News編集部 on January 20, 2011, 18:00 pm UTC

○アフリカが今、成長市場として脚光を集めている。当初アフリカ地域には植民地支配をしていた欧州諸国の進出が目立ったが、市場の成長性や豊富な資源に着目し、特に中国を筆頭とした新興勢が強力にこの動きを推し進めている。さらに、少子化に伴う市場縮小等から海外展開の必要性が急激に叫ばれるようになった日本国内でも、次なる市場としてアフリカに多くの注目が集まるようになった。

○通信業界も例外ではない。そこでこのコーナーでは、3回の連載により、アフリカの携帯電話市場について市場の特徴や端末、オペレーター、サービスなどの動きを包括的にレポートする。

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(cc) Image by ^@^ina

アフリカとはどのような地域か

通信業界の話題に入る前に、まずはアフリカの全体像から見てみたい。一口に「アフリカ」と言っても50カ国以上ある上、実際には各国の文化背景が異なり、経済規模や発展段階も様々であり、ひとくくりで語るのは大変難しい地域でもある。

地政学的に見ると、地中海に面した北アフリカとサハラ砂漠以南のサブ・サハラの二つに大別できる。特に北アフリカは、欧州諸国にほど近く、歴史的にも関わりが深い。さらにイスラム圏であることから、むしろ中東、アラブ諸国に分けられることも多い。サブ・サハラ地域との間に存在する「南北格差」は根強いものがある。

サブ・サハラ地域は、南アフリカ共和国のような先進国に近い国もあり多種多様であるが、一般に鉱物資源や特産物などの特定の産業に依存する「モノカルチャー経済」であることも多い。大半の国が20世紀後半まで欧州諸国の植民地であったことから、旧宗主国への経済依存が強いことも特徴である。80〜90年代までは内戦や累積問題の深刻化などにより、経済成長とは無縁の地域であったが、2000年以降、あらたな市場として注目されるようになった。

しかし実際のところ、特に日本国内ではアフリカに関する情報は他の地域と比較して極めて少ないのも現状である。日本では1980年から90年代にかけて、ODAを活用した新興市場への進出が活発であったが、2000年に入ってからは撤退する企業も目立ち、これに伴い関連情報も減少していった。1993年からは日本政府が国際連合(United Nations)や世界銀行と共催でアフリカ開発会議(TICAD: Tokyo International Conference on African Development)を5年おきに開催しており、その時期になるとアフリカ関連の報道も一時的に活発化する。しかし、これが終わるとしばしの間、注目度も低く情報が流通しない市場となってしまう状況が続く。いわばアフリカは、注目される一方で情報の少ない地域という側面がある。

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潜在性が高いアフリカの携帯電話市場

世界の携帯電話市場においてアフリカは最も急成長を遂げる市場である。アフリカ市場は加入者規模では全世界の1割程度にすぎないが、人口当たりの普及率は最も低い一方、成長率は中国やインドといった成長市場を抱えるアジア地域を抜いて他のどの地域よりも高く、このことから潜在性が最も高いと言える地域になっている。【図表1-3参照】

▼図1:世界の地域別携帯電話加入者数
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(出所:Telegeography)

▼図2:世界の地域別携帯電話加入者数の成長率
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(出所:Telegeography)

▼図3:世界の地域別携帯電話の人口あたり普及率
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(出所:Telegeography)

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アフリカ内で見てみると、特に北部および西部は普及が早い地域であり、アフリカ全土で6割以上の加入者がこの地域に集中している。また国別で見ると、アルジェリア、エジプト、ガーナ、モロッコ、南アフリカ、チュニジア、コンゴといった国が突出している。

▼図4:アフリカ主要国の携帯電話普及率
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(出所:携帯電話加入者数:Telegeography(2009年末)、一人当たりのGDP: The World Fact Book(CIA)、2009年央の推計値)※国名アルファベット順に記載

▼図5:アフリカの国別携帯電話普及状況(2009年)
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(出所:TeleGeographyのデータをもとに宮下作成)

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設置コストも端末も「低価格」がキーワード

携帯電話の登場により、アフリカの通信事情は大きく変わった。1990年代には固定電話が利用できる層はごく限られていたが、携帯電話の普及により多くの人々が通信手段を持つことができるようになった。

携帯電話は1990年代後半から提供されるようになったが、固定電話と比較して設置コストが低価格で済むこと、さらに低価格端末や中古市場の台頭により携帯電話機が手に入れやすいことから急激に普及し、2000年には固定回線数を追い越し、それ以降は一時年間平均成長率が40%を超える程の大幅な伸びを見せた。2009年末時点では、固定回線数が3,100万(普及率は16%)の一方、携帯電話の加入者数は4億6,800万(普及率は47%)となっている。【図6参照】

▼図6:アフリカ地域の携帯電話・固定電話加入者数(単位:百万)
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(出所:Telegeography)

携帯電話の利用はもっぱら音声通話とSMSが中心で、GSMの加入者が9割程度となる。現状では一人当たりのGDPが年間$1,500程度の国がその多くを占めることから、販売される端末もULCH(Ultra Low Cost Handset)と呼称される超低価格端末が主流であり、端末自体の価格は2,000〜5,000円程度で機能を抑えた端末が一般的である。またこの地域の特色として、プリペイドによる加入が一般的であり、契約や初期コストが比較的小さくて加入できることも挙げられる。

アフリカの携帯電話市場には、特に2000年初頭から外資参入の動きが活発化した。特に世界のトップに君臨する携帯電話事業者にとってその地位を維持するためには、新興市場を取り込むことが成長への必須条件との見方から、オレンジ(フランス)やボーダフォン(英国)は2000年以降参入の姿勢を強めてきた。さらに中国などの新興勢力は、その豊富な資源に着目し、政府と企業が一丸となって大規模な進出を図っている。

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生活を支える携帯電話

携帯電話の普及は人々の生活を大きく変えている。多くの人々にとって携帯電話は最初に手にした通信手段であり、コミュニケーションが人々にもたらす効用は大きく、生活は大きく変わった。

通信の利用は家族や知り合いとの間での日常的な会話に始まり、農業や商売に欠かすことのできない道具として日常生活に浸透していった。それまで情報がないことから仲買人の言い値で農作物を売っていた農民は、携帯電話を手にすることで農産物の市場適正価格を知り、仲買人と価格交渉ができるようになった。銀行口座を持たない人が数多く存在する中で、携帯電話のSMSを利用して家族にお金を送る仕組みを活用する人々も急速に拡大している。

3GをスキップしてLTE網構築の計画も浮上

アフリカ地域では、携帯電話を活用したインターネットサービスの普及が期待されている。固定インフラが十分に整わないこの地域では、インターネットは携帯電話で利用するのがより現実的なシナリオとなっており、W-CDMA等の3Gサービスを通り越し、GSMからLTE(Long Term Evolution)網を構築するという計画も浮上している。この地域では今後、携帯電話の役割がますます大きくなるとの予想から、水面下では様々な試みが始まっている。

第1回は、次なる新興市場として脚光を集めるアフリカ市場について、次回は携帯電話機やサービスを、第3回にアフリカ市場参入に積極的な通信事業者の動きにそれぞれフォーカスしてお伝えする。

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