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LTE-Advancedに向けたノキア シーメンス ネットワークスの取り組み

2011.04.28

Updated by WirelessWire News編集部 on April 28, 2011, 16:00 pm JST Sponsored by NOKIA

日・米でともに昨年末から商用サービスが開始されたLTE。一般ユーザーへの幅広い普及はまだまだこれからだろうが、標準化組織3GPPでははやくも次世代のLTE-Advanced規格に関する議論が進行している。

ノキア シーメンス ネットワークスは、技術仕様のグローバルスタンダード(標準)化に積極的に取り組んでいる。その中で最も重要視しているのが、3GPPにおける活動だ。中心メンバーとして活躍するハリー・ホルマ氏に、現在策定中のLTE-Advancedで新たに実装されるポイントと、より高速になるネットワークの混雑を緩和する技術について聞いた。

(聞き手:WirelessWire News 編集部 三国大洋)

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ハリー・ホルマ氏 Dr.Harri Holma
ノキアシーメンスネットワークス 研究所 無線システムパフォーマンス 特別研究員
1994年にノキア研究センター(Nokia Research Center)に入所し、1995年にヘルシンキ工科大学(Helsinki University of Technology)から科学修士号を取得。1998年からノキアネットワークス事業部に在籍し、フィンランドおよびアメリカ合衆国にて勤務。2003年にヘルシンキ工科大学で博士(PhD)を取得。「WCDMA for UMTS」、「HSDPA/HSUPA for UMTS」、「LTE for UMTS」の編集を行ったほか、無線通信分野における数多くの書籍に寄稿している。

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──まず、LTEの標準化活動に取り組んでいる、標準化団体3GPPについて、簡単なご紹介をお願いします。

ハリー・ホルマ氏(以下ホルマ氏):3GPP(Third Generation Partnership Project)は、もともと第三世代携帯電話(3G)に関する標準仕様の策定を目指すプロジェクトとして、アメリカのT1、ヨーロッパのETSI、日本のARIBおよびTTC、韓国のTTAなど各国の標準化団体が集まって1998年12月に発足しました。1999年には中国が参加し、現在は全世界の370社を超える企業からの代表者が参加する、標準化のためのプロジェクトとなっています。

2009年9月、3GPPのオーガニゼーショナルパートナーである、ARIB、TTC、TTA、ETSIなどが連名で、次世代ワイヤレス通信の標準となるIMT-Advancedの候補としてITU(国際電気通信連合)に提案したのが、LTE-Advanced(Release 10以降)です。

現在、3GPPでは、2011年6月を目標に、Release 10の策定に向けたプロセスを進めているところです。

──LTE Advancedの特徴について教えて下さい。LTEと比べて、何が変わるのでしょうか。

ホルマ氏:Release10の特徴を、前後のリリースと比較してみましょう。

▼LTEのリリースとタイムライン
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この図中にあるように、「Release 10」では新たに下記のような点が実装されようとしています。

  • キャリア・アグリゲーション(Carrier aggregation)による広帯域化。複数の割当周波数を組み合わせ、より大きな帯域幅を『仮想的に』作り出す技術です。
  • マルチアンテナ技術の拡張(MIMO evolution)。MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術をLTEの4X4から8x8まで拡張して、より高速な通信を可能にします。
  • リレー伝送(Relays)によるサービスエリアの拡大をします。
    LTEのセル内にLTEの無線通信を伝送路として使用できる新しい基地局を追加することによりサービスエリアを拡大できます。伝送路に有線回線を準備する必要が無いために速やかなサービス拡大が可能です。
  • ドライブ試験の省力化 (Minimization of drive testing)
    端末からの各種測定結果及び状態報告の情報を基にネットワークの最適化をすることにより、従来行っていたドライブ試験の稼動を減らすことが可能です。
  • セル間の協調送信 (CoMP; Coordinated Multipoint Transmission)による性能改善
    複数のセルが連携して送信することにより、通信品質の向上、干渉の低減を行い、セル容量等の性能改善が可能です。

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これらの実装により、オペレーターはより効率的なネットワークリソースの利用や、より広範囲のサービス提供が可能となります。同時に、ユーザーにとっても高速移動時で最大100Mビット/秒、静止時で下り最大1Gビット/秒(いずれも理論値)というLTEにくらべてはるかに快適な通信環境が提供されることになります。

▼LTE Advancedの技術がもたらすメリット
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──これだけ高速なネットワークが利用できるようになると、ユーザーの使い方もきっと変わりますね。

ホルマ氏:そうですね、より高速で快適な通信環境が提供されればされるほど、より多くのユーザーが魅力を感じて、より多く利用することが見込まれます。すると、せっかく快適になったネットワークがまた混雑する、という、いたちごっこが続いてしまいます。

この課題を解決するためには、また別のアプローチが必要です。一つの解が、ノキア シーメンスネット ワークスが先日発表した「リキッド・ラジオ」("Liquid Radio")技術です。

▼ノキア シーメンス ネットワークスが提案するLiquid Radio技術
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基礎になっているのが「ベースバンドプール」という技法で、ある程度の広さを持つ領域内にある複数の基地局をたばねて、10Gbyte以上のベースバンド容量を柔軟に運用し、さまざまなネットワークレイヤーを、論理上統合された1つのネットワークとして利用することができるようになります。

Liquid Radioを使うことで、たとえば日中には利用者の多い商業地域での処理能力を高める、夜間には住宅地などにネットワークリソースをより多く配分する、といった弾力性に富んだ効率的なネットワーク運用が可能になります。

※編集部注:なお、Requid Radioについては、こちらで詳しく紹介されています。

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──3GPPでは既に次世代のLTE Advancedを見ていますが、日本で数ヶ月前にようやくLTEの商用サービスが始まったところです。ノキア シーメンスネット ワークスでは、LTEの商用サービスに機器を提供しているのですよね。

ホルマ氏:そうですね、では最後に、世界で他の地域に先駈けて展開がはじまったテリアソネラ(Teliasonera)のLTE網で、当社が提供しているサービスについて紹介しましょう。

▼テリアソネラのLTEサービスの概要
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テリアソネラは、LTEサービスを、スウェーデンを中心とする北欧3国で展開しています。使用している方式はFD-LTE、使用している周波数帯は2.6GHz帯で、20MHzの帯域を使用しています。現在サービスを提供しているのは28地域ですが、2011年末までに200地域に拡大すると発表しています。端末はSAMSUNG、基地局はノキア シーメンス ネットワークスとエリクソン、コアネットワークベンダーにはエリクソンが入っています。

このネットワーク上で、ノキアシーメンスネットワークスの基地局技術のパフォーマンスをテストしたのが次のグラフです。

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この通り、下りピーク時で、ノキア シーメンス ネットワークスの技術は100Mbpsを超え、平均でも約40Mbpsと非常に高速な速度を記録しています。

──日本でも今後、利用できる帯域が広がると、今のLTEよりももっと高速な通信が可能になりそうですね。本日はどうもありがとうございました。


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