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次世代基地局は燃料電池や太陽光、風力もエネルギー源に活用──通信機器ベンダーが準備する基地局の災害・停電への対策とは

2011.07.22

Updated by WirelessWire News編集部 on July 22, 2011, 12:00 pm UTC Sponsored by NOKIA

通信サービスを提供するには、常に多くの電力を必要とする。この夏の最重要課題である節電対応や万が一の災害時の停電対策を考えるとき、ネットワークが消費する電力をいかにして抑えるか、またサービスを継続して提供するための電力をどう確保するかが、大きな鍵を握る。それでは通信事業者にネットワークシステムを納入する通信機器ベンダーは、節電・停電対策にどのようなソリューションを用意しているのだろうか。大手通信機器ベンダーのノキア シーメンス ネットワークスでグローバルサービス セールスマネージャーを務める佐藤格仁氏に、通信事業者で最も電力を消費する携帯電話基地局の節電・停電対策ソリューションを聞いた。

複数要素を組み合わせて構築する節電・停電対策ソリューション

東日本大震災以降、携帯電話のサービスが災害時や停電時にも継続して利用できることに対する要求が高まった。大震災により、携帯電話がつながることが文字通りライフラインであることを再確認したからだ。サービスを提供するために、通信回線と並んでなくてはならないのが通信機器を動かすための電力である。特に、携帯電話の場合は全国各地にちりばめて設置された基地局の電力確保と省電力対策が大きな課題になる。

通信機器を実際に運営しているのは、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルといった通信事業者である。一方、これらの通信事業者は、通信機器ベンダーから機器の納入を受けてシステムを構築している。ここでは通信機器ベンダーが提供できる電力確保のソリューションを見ることで、これから通信事業者が導入していくソリューションの方向性を予見してみたい。大手通信機器ベンダーのノキア シーメンス ネットワークスでグローバルサービス セールスマネージャーである佐藤格仁氏は、「電力をどのように確保するかという"エネルギーソリューション"は、再生可能エネルギーやバックアップソリューションといったいくつかの要素を組み合わせて構築している。要素の組み合わせをどのように考えて取り入れていくかが鍵となる」と語る。

基地局のエネルギーソリューションに登場する面々を紹介していこう(図A)。まずエネルギーを供給する要素としては、図中に緑色で示した「再生可能エネルギー」と、赤色で示した「バックアップソリューション」がある。これに、既存の商用電力網から得る電力が加わる。再生可能エネルギーには、ソーラーパネルを使った太陽光発電や、風力タービンを使った風力発電が含まれる。バックアップソリューションには、バッテリーや発電機、燃料電池などが含まれる。そして、エネルギーソリューションの中核をなすのが、エネルギーを供給する要素をまとめて制御するコントローラー部分である。図中では黄色で示してある。ここでは複数のエネルギー供給装置からの電力供給状況を把握し、通信機器に対して安定した電力を提供する。さらに、リモート管理ソリューション「NetAct」を使うことで、遠隔地にある基地局をネットワークセンターから集中管理でき、各個別局毎の電力状況を可視化することも可能である。

▼図A ノキア シーメンス ネットワークス(NSN)は、基地局のエネルギーソリューションを色分けした4つの項目に分けて整理している(※画像をクリックして拡大)
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こうした要素は、どの基地局に対してもすべてが必要になるわけではない。都心部の基地局と山の中や離島の基地局では求められる要素が異なる。どのような災害対策ソリューションを求めるかによって、要素の組み合わせ方法やバッテリーの持ち時間などの量的な側面も異なってくる。さらに、災害時のサービス継続のためにマイクロ波通信装置などを使って通信回線を冗長化するケースもある。

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ソリューションは2つの側面に分けて考える

実際にシステムを考えるときには、どのようなソリューションが考えられるのだろうか。佐藤氏は「基地局のエネルギーソリューションと一口に言っても、目的によってそれぞれ適用できるソリューションは違う」と言う。目的は大きく2つに分けられる(図B)。目的の1つ目は、緊急時の災害対策である。この目的では、基地局の電源を長時間バックアップすることが必要になる。目的の2つ目は、商用電源の消費と依存を減少させることである。エコや経費削減を目指すだけでなく、今夏のような節電への対応にもそのままつながる。

▼図B エネルギーソリューションを導入する目的は2つ。災害対策と商用電源の利用削減の2つ目的からソリューションを捉える(※画像をクリックして拡大)
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目的1のソリューションとして適用されるのが、図Aで説明した「バックアップソリューション」である。大容量バッテリー、発電機、燃料電池という要素から、通信事業者が必要なバックアップのための要件を見極めて組み合わせていくことになる。要件としては、バックアップする時間、基地局の設置場所、メンテナンスや復旧のためのマンパワーの有無などが挙げられる。

目的2のソリューションとしては、同じく図Aの「再生可能エネルギー」が対象になってくる。太陽光発電や風力発電を使って、基地局の消費電力の一部をまかなうソリューションである。自前で発電した電力量に相当するだけ、商用電源を使わなくて済むようになる。「基地局の電気代を1局あたり月間4万〜5万円とすると、1つの通信事業者が10万局の基地局を持っていたときに、40億〜50億円という電気料金が発生する。国内の電気料金の1%を1つの通信事業者が支払っているという試算があるほど。これを何割かでも減らせたら、コストと商用電源への依存の双方を引き下げることにつながる」(佐藤氏)と考えられる。

ここからは目的ごとのソリューションについて、詳しく見ていく。

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停電対策の本命は「燃料電池」!?

災害や停電などの対策として採用するバックアップソリューションには、前述したように「大容量バッテリー」「発電機」「燃料電池」といった要素がある。

バッテリーは国内の通信事業者の既存基地局で利用されており、3時間程度のバックアップが可能になっている。「10時間程度までならば鉛のバッテリーでバックアップのための容量を確保することもできる。ただし、それ以上の時間となるとバッテリーが重く大きくなり、メンテナンスの負担も増える」(佐藤氏)。すべての基地局で大容量バッテリーを採用するのは現実的ではない。

次に発電機の利用を考える。佐藤氏は「発電機は信頼性が高いソリューション」だという。実際に商用電源の供給が不安定な国などでは、発電機を基地局に設置して突然の停電に備えているのだそうだ。「商用電源が頻繁に落ちるバングラデシュでは、非常用発電機に大規模エリアで燃料供給を機動的に行うサービスを弊社で提供している。お客様からも大変感謝されており、ノキア シーメンス ネットワークスの社内表彰を受けたこともある。グローバルでは現実に多く利用されているソリューションだ」と言う。

しかし、発電機にも弱点がある。燃料の供給と、メンテナンスだ。バングラデシュの例のように、燃料を供給する人的な運用や、非常時の燃料確保の方法など、考えるべき点は多い。また、発電機は燃料でエンジンを動かして発電するため、定期的な試験稼働が必要になる。エンジンを回しておかないと、非常時にエンジンがかからないという事態を招く。そのためには、人手が必要になるし、山の中などの基地局にも定期的に出向かなければならない。

ノキア シーメンス ネットワークスが、バッテリーや発電機といった現行のソリューションの弱点をカバーできるソリューションとして注目しているのが「燃料電池」である。燃料電池とは、水素やメタノールを燃料として、電気化学反応により電力を取り出すものである(図C)。佐藤氏は「イメージとしてはプロパンガスのようにボンベに燃料を入れて、それを使って発電する。オフィスの書類用のキャビネット程度の大きさのシェルフで、基地局に数日間にわたり電力を供給できる」と説明する。

▼図C 水素やメタノールを燃料として電力を取り出す燃料電池(※画像をクリックして拡大)
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100時間のバックアップが可能な製品も

燃料電池が有力な鍵となる理由の1つは、基地局のバックアップソリューションをメンテナンスフリーにできること。定期的にエンジンをかけてメンテナンスする人手が必要になる発電機とは異なり、「10年はそのままで大丈夫」(佐藤氏)。燃料電池を使えば、山間部や離島など、メンテナンス要員が出向くことが難しい場所に設置した基地局に対しても、長時間のバックアップソリューションを提供できる。

また、燃料電池では反応による生成物が水であり、有害な物質が発生しないことは積極的な導入へのメリットとなる。さらに、「メタノールを利用した燃料電池ならば、燃料が安価であることもメリット」(佐藤氏)と言う。

ノキア シーメンス ネットワークスでは、同社の小型基地局「Flexi BTS」向けに、水素利用ならば48時間、メタノールでは100時間といった長時間のバックアップが可能な燃料電池システムを用意している(図D)。このような長時間のバックアップは、重く大きくなる大容量バッテリーでは現実的には不可能なのだ。

▼図D オフィスにある書類用のキャビネット程度の装置で、数十時間から100時間の長時間バックアップが可能(※画像をクリックして拡大)
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実際、燃料電池に対して「大震災以降は、引き合いが非常に多くなっている」(佐藤氏)ように、今回の大震災を契機に新しいシステムの導入の検討が始まっていることがわかる。燃料電池による基地局への給電は、GSM方式を採用している国の一部で、商用で利用しているケースもすでにあると言い、実用化そのものは可能なフェーズにある。

問題は燃料の供給。特に水素は国内でエコシステムがまだできていないことが課題として挙げられる。地域限定的に水素を燃料とした自動車向けに水素ステーションができてきたような段階で、国内全域でのエコシステム確立には時間がかかる可能性がある。また実用化を支える法整備も必要になる。

燃料供給まで含めて考えると、「水素よりもメタノールの方が国内での実用化は早いかもしれない。考え方次第だが、ノキア シーメンス ネットワークスのような通信機器ベンダーは燃料電池の装置を提供するだけでなく、通信事業者に対して燃料の供給なども含めた燃料電池事業をサービスとして提供する形態もあり得る」(佐藤氏)。課題はあるとしても、導入することが決まれば燃料電池の実用化は具体的に動き出せる段階にあるようだ。

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膨大な数の基地局で消費電力を削減する

ここからは商用電源の消費と依存を減少させるという2つ目の目的に沿って、基地局が採用できるリューションを見ていこう。大震災の影響もあり、家庭から企業まで消費電力の削減は緊急課題となっている。佐藤氏は昨今の状況を踏まえて「通信事業者が基地局の消費電力を何割かでも削減できたら、その分の電力が回り回って家庭のエアコンを使えるようになり、家の中で熱中症になる高齢者の数を減らせるのでは」と問題提起をする。

商用電源の利用を減らすための抜本的なソリューションとして、ノキア シーメンス ネットワークスでは「再生可能エネルギーとの組み合わせがいいのではないか」(佐藤氏)と考えている。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを活用することで、「基地局の消費電力のすべてをまかなうことはできなくても、例えば30%でも再生可能エネルギーに置き換えられれば、商用電源の消費が減りランニングコストの削減にもつながる」(図E)。

▼図E 海外で導入されている太陽光パネルと風力タービンを組み合わせた「NSNハイブリット自律局ソリューション」(※画像をクリックして拡大)
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再生可能エネルギーを利用して商用電源の利用を減らすには、初期投資がかかること以外にも課題がある。再生可能エネルギーは安定的に供給されないことである。太陽光発電システムは夜間に電力を供給してくれないし、風力発電システムは風がなければ発電しない。一方で基地局の無線設備は一定の安定した電力を要求する。このギャップを埋めるソリューションが必要になる。

電力の安定供給に効果をもたらすのは、「グリーンエネルギーコントローラー」と呼ばれる装置である。電力を使う側の通信機器からすると、フラットな電圧・電流が欲しい。グリーンエネルギーコントローラーは、太陽光発電や風力発電、商用電源といった複数の電力供給手段を入力として、安定的な出力を作り出すことができる。太陽光発電システムや風力発電システムから発電状況などの情報を取り込み、再生可能エネルギー側の電力供給が減少してきたら商用電源からの供給を増やすといった制御が可能だ。また、タイマー機能によりコストの安い夜間電力で充電をしておき、昼間はできる限り太陽光、風力、バッテリーの組み合わせで電源供給を行うといった設定も可能だ。このようなコントローラーを組み合わせることで、再生可能エネルギーを安定した基地局の電源として使えるようになる。

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基地局そのものの電力消費を抑えるには

基地局で商用電源の利用を減らす1つの抜本的な方法が再生可能エネルギーなどの代替エネルギー源を求めることだとすれば、もう1つの方法は消費電力そのものを減らすことである。基地局の消費電力を大幅に減らせれば、商用電源の利用を減らすだけでなく、再生可能エネルギーだけで基地局を運用することも可能になる。

基地局の消費電力を抑えるソリューションとして、佐藤氏は「無線機の設置方法や、基地局の空調など、いくつものファクターがある」と語る。

まず無線機の設置方法を見ていこう。ここでは基地局の主要部分は電波を発するアンテナと、無線信号を増幅するRFモジュール、ベースバンド信号処理を行うシステムモジュールの3つに注目してみる。このうち、「理論上は、アンテナとRFモジュールの距離を近づければ、アンプ(増幅器)出力が1サイズ小さいタイプでもよくなり、結果として消費電力を抑えられる」(佐藤氏)のだ。鉄塔局の場合、地上にシステムモジュールとRFモジュール設置し、塔頂部にあるアンテナまで30〜50mメートルに及ぶフィーダー(給電線)で繋いで接続するという方法が一般的だ。この際、地上のRFモジュールから塔頂にあるアンテナにたどり着くまでのあいだにエネルギーは大きく損失されてしまう。この損失を極力小さくする、すなわちアンテナと無線機間の距離を出来る限り近づけるだけで省エネ化が可能だと言うのだ。これは自明なのだが、実際には各種の制約がありすべての基地局で無線機をアンテナ近くに構成するには至っていない。

制約の1つにはメンテナンスの問題がある。RFモジュールがアンテナの近くにあるということは、不具合が生じたときには高い鉄塔に人が登って対処する必要がある。地上に設置してあればいつでも作業員が急行できるが、「鉄塔の上などの高所では安全面の点から夜間の保守作業が認められていない」(佐藤氏)という制約がある。この課題に対して佐藤氏は、「お客様と保守作業の安全性を十分協議した上で、RFモジュールをアンテナ近傍に設置することを推奨していきたい」と説明する。また、高い位置に重量のある無線機も設置するとなると、鉄塔そのものの強度も考慮する必要がある。「ノキア シーメンス ネットワークスは、鉄塔への搭載重量が増加しても十分な強度が確保できる低コストで新しいデザインの鉄塔も用意している」。基地局の設備を総合的に提供できるベンダーならではのソリューションだろう。

また、空調の方式を変えることで消費電力を減らすソリューションもあると言う。佐藤氏によれば、「基地局の電源をまかなうバッテリーケースには、機器の冷却のために通常はエアコンが付属している。一方、ノキア シーメンス ネットワークスでは、エアコンではなく簡易冷蔵庫タイプでファンを使わないケースを用意している。このケースを使うと、冷却のために使う電力がエアコンの10分の1に抑えられる」。これらのソリューションを組み合わせることで、基地局が消費する電力そのものを低減させられるのである。

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総合的な視点で考えられる強み

基地局のエネルギー問題に取り組むに当たって、ノキア シーメンス ネットワークスの強みはどこにあるのだろうか。佐藤氏はこのように説明する。「例えば、日本には太陽光パネルを作っている優秀なメーカーがある。しかし、グローバルで見ると、中国などにも太陽光パネルを作っているメーカーは数多く存在している。ノキア シーメンス ネットワークスはグローバル調達が可能なので、安くていいものを大量に購入できる。通信事業者は、スケールメリットにより低コストで機器を導入できるようになる」。グローバル企業のスケールメリットが生きてくるというわけだ。

もう1つの強みは、ノキア シーメンス ネットワークスが総合的に機器を提供できるベンダーだということである。基地局の各装置に加え、太陽光パネルや風力タービン、グリーンエネルギーコントローラーなどの各種附帯装置群、さらにはそれらの様々な装置群を搭載するための鉄塔まで、まとめて一つのソリューション(スマートサイト)として提供している。「トータルで局全体を見立ててコメントできることが大きな強みだと考えている。特定の部品で優れていても、基地局全体のソリューションを提案できるベンダーは少ない」(佐藤氏)。通信事業者が求める要件を全体から見通して、機器や装置、鉄塔などまで含めて最適に組み合わせられる総合力を持っている。

さらに、グローバルで事業を展開していることで、すでに再生可能エネルギーを利用した自律型基地局を納入・運用している実績があることも評価ポイントとして挙げられる。佐藤氏は例として「中東やアジアの一部では、風力発電を導入するケースが増えている。砂漠地帯で常に風があるような場所に基地局を設置する場合である。商用電源が確保できない場所に基地局を設置する必要があれば、太陽光パネルと風力タービン、発電機などの電力供給源を何重にも用意することもある」と語る。これまでの実績から、すでに再生可能エネルギーの利用に対するノウハウが蓄積されている。

通信事業者のネットワークシステムを省エネルギーにシフトし、安定的に稼働させることは、この夏の日本に限った特殊な課題ではない。グローバルで永続的に取り組み必要がある大きな命題と言える。だからこそ、局所最適や小手先の対処だけでなく、ノキア シーメンス ネットワークスが提供するようなシステム全体を見据えたトータルのソリューションが求められるのである。

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佐藤 格仁(さとう・かくひと)
ノキアシーメンスネットワークス株式会社 グローバルサービス セールスマネージャー
1988年 第二電電株式会社(現KDDI株式会社)移動体通信事業本部に入社。移動機、携帯端末の企画・開発に従事。1995年 三井物産情報通信株式会社(現 株式会社ティーガイア)海外事業本部入社後、インドネシア駐在。ポケベル、GSM事業に従事。1999年 ノキアジャパン株式会社入社。以降、移動体通信機器、システム、附帯装置、及び各種サービスの業務に従事。

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