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電気自動車の普及を後押しするICTソリューション──E-モビリティ実現に向けたICTの役割とは

2011.08.11

Updated by WirelessWire News編集部 on August 11, 2011, 12:00 pm JST Sponsored by NOKIA

エネルギー問題や環境保護の観点から電動自動車の普及推進を目指す「E-モビリティ」への動きが世界で活発になっている。電気自動車の普及には、エネルギー供給のインフラ整備も平行して進めなければならない。そこには通信ネットワークと同様の管理や課金の仕組みが必要になる。ノキア シーメンス ネットワークスでスマートグリッドソリューションを手がけるロタール・シュトール博士に、E-モビリティの現状と通信機器ベンダーとの関わりを聞いた。

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Lothar Stoll(ロタール・シュトール)博士
ノキア シーメンス ネットワークス
スマート・グリッド・ソリューション担当

世界の大手通信事業者に通信機器を納入する通信機器ベンダーのノキア シーメンス ネットワークスは、電気自動車の普及にも関わりがある。これまでにも電力会社に通信インフラを提供するなどエネルギー業界でのノウハウを持つノキア シーメンス ネットワークスは、電気自動車に電力を供給するエネルギーのインフラ構築にも積極的に取り組んでいると言うのである。

まず、電気自動車を普及させるE-モビリティの動きがどのように世界で展開されるのかを確認していきたい。ノキア シーメンス ネットワークスでスマートグリッドソリューションを手がけるロタール・シュトール博士は、「E-モビリティ実現に向けて青信号が点灯した状態だ」とその前途を表現する。

E-モビリティ実現への高いスピード感

状況を理解するために、シュトール博士は「いま世界で政治家がこの業界に対してどういった発言をしているかを見るといい」と指摘する。特にヨーロッパやアメリカで、積極的な発言が続いているというのだ。例えばドイツ。電気自動車を2020年までに100万台普及させるという政策により、動きが活発化している。フランスやオランダ、アメリカでも同様の動きがある。これまで考えられていたよりも「E-モビリティがいかに速いスピードで現実のものになろうとしているかがわかる」(シュトール博士)。

それでは、E-モビリティを具現化する「電気自動車」の市場動向はどうか。シュトール博士によれば、すでに2010年にはプジョーなどが小型の電気自動車を市場に投入している。日本のメーカーでも三菱自動車や日産自動車はすでに電気自動車を市販しており、トヨタも米国市場への投入計画がある。2011年以降では、30種類以上の電気自動車が市場に投入される計画があると言う。もちろん大手メーカーも例外ではなく、フォード、GM、ルノー、ダイムラー、フォルクスワーゲン、アウディなどが名乗りを挙げているほか、大手以外の参入もある。

▼図A アメリカとドイツの電気自動車市場の発展予測(※画像をクリックして拡大)
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マーケットの予測でも未来は明るい。特にドイツとアメリカがE-モビリティ実現の牽引役になりそうだ。前述したように、ドイツでは2020年までに100万台の電気自動車を普及させる政策が動いている。これが実現すると、「ドイツ国内のすべての自動車の4%を電気自動車が占めることになる。アメリカでも同時期までに100万台規模のマーケットが予測されている。政治家からの発言がE-モビリティを支えていて、電気自動車そのものもすでに市場にあり、マーケットも今後伸びることを予測している。これらが指し示すところから、E-モビリティのマーケットは近く現実のものになると考えている」(シュトール博士)。

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自動車メーカーも電力会社もサービス事業者になる

電気自動車を活用するE-モビリティのマーケットは誰が現実のものにするのか。これを考えるためにE-モビリティに関わるプレーヤーを説明していく。E-モビリティは、関連するプレーヤーが多く、様々なビジネスの機会を開くという(図B)。

▼図B E-モビリティのプレーヤーと、それぞれの得られる利益(※画像をクリックして拡大)
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E-モビリティの世界で、当然のことながら「最も恩恵を受けるのは自動車産業」(シュトール博士)である。第一に、電気自動車の販売がそのビジネスに貢献する。次に、既存のガソリン車に加えて電気自動車をラインアップすることで、ブランドアイデンティティの強化につながる。ここまでは、自動車を売ってその後に修理や点検をしていくという旧来の自動車産業のビジネスモデルに立脚する部分である。しかしシュトール博士は、E-モビリティが「自動車産業に新しいモビリティのサービスプロバイダーとしてのビジネスモデルを追加し、業界の拡張に寄与する」と、ビジネスモデルの将来像を語る。

具体的に、自動車産業の拡張する新しいビジネスモデルをシュトール博士に説明してもらった。そこでシュトール博士は、こう切り出した。「あなたがある自動車メーカーの新しい電気自動車を買ったとしよう。するとE-モビリティ時代の新しいビジネスモデルでは、自動車メーカーのIDカードが付いてくる。このIDを使って様々なサービスをユーザーに提供することで、自動車メーカーがモビリティのサービスプロバイダーに変わる」と言うのだ。

より具体的な例をシュトール博士に挙げてもらった。電気自動車を利用する上で、最も基本的で不可欠なサービスは「充電」だろう。自宅で充電するだけで事足りる日常の買い物用途だけなら問題ないが、電気自動車が一般的になれば泊まりがけの旅行にも出かけるだろう。そうなると、充電スタンドで充電するケースも出てくる。すると自分の契約している電力会社と異なる会社の充電スタンドを使うこともあるし、ヨーロッパなどでは違う国の充電スタンドで充電することもある。そんな時に、"この自動車メーカーのゴールドカードを持っていれば、世界中のどの国でも充電スタンドを使える"というサービスを提供するビジネスモデルが成り立つと言うのである。

このビジネスモデルでは、カードのユーザーに"充電"というサービスを提供するために、自動車メーカーが自国や他国の電力会社と契約を結ぶ必要がある。ことは充電だけに限らず、E-モビリティのプロバイダービジネスにはさまざまなサービスが成り立つ。例えば、カードユーザーには充電スタンドの予約を受け付けるサービスが考えられる。ガソリンを入れるのとは異なり、充電には時間がかかる。予約ができれば待ち時間なくスムーズに出先でも充電が可能になり、カードユーザーにメリットを提供できる。このほかにも、パーキングエリアの優先利用や、空港の乗降スペースを優先的に使える権利を提供するサービスも考えられる。要するに、車を売ったり修理したりするのとは異なる、エネルギーやインフラに関連するサービスを自動車メーカーが提供するようになるのである。

もう1つの大きなプレーヤーがシュトール博士が言う「ユーティリティ」、すなわち電力会社である。直接的には、電気自動車に電力を供給することになるわけで、電力需要が増えるという恩恵を受ける。しかし、利用が増えることに安穏とはしていられない。電気自動車が増えれば競合する企業が電力を供給するケースも出てくるだろう。そこで顧客をつなぎとめるには新しいサービスの提供が必要になる。

ここでも例で考えてみよう。シュトール博士はこう言う。「例えば地域の電力会社のゴールドカードを持っていたとする。E-モビリティ時代の電力会社は、地域の電気の契約をまとめているだけでなく、駐車場のサービス、充電スタンドの契約なども取りまとめたサービスプロバイダーとしての役割も果たしているだろう。ゴールドカードの保有者に対して電力会社は、電力を販売するだけでなく様々な付加サービスを提供できるようになる」。
また、自治体や政府もE-モビリティには常に高い関心を寄せている。環境汚染を防ぐ観点から、交通機関に関しては環境に配慮したシステムの導入が急務となっている。排気ガスの出ない電気自動車を使ったE-モビリティは、自治体や政府にとってもメリットがある。もちろん、電気自動車を使うユーザーも環境に優しい生活を送れることになる。

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E-モビリティを支えるICTソリューション

それでは次に、E-モビリティの構成要素を確認しておこう。図Cに簡単に構成要素を示した。E-モビリティに不可欠なものとして、電気自動車があることは誰にもわかりやすい。しかし、それだけでなく、システムを運用するためのIDによる認証のメカニズムや充電スタンド、接続性、そしてシステムを支えるICTソリューションが組み合わさって、E-モビリティを実現する。

▼図C E-モビリティを実現するための構成要素(※画像をクリックして拡大)
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シュトール博士は、その中でも「システムを支えるICTソリューションは、ノキア シーメンス ネットワークスが最も貢献できるもの」と言う。ここで言うE-モビリティのICTソリューションとは、充電スタンドや電気自動車の利用者の管理をするほか、決済を可能にするシステムである。シュトール博士はICTソリューションを実現の度合いで大きく2段階に分類して説明する。

1つは、すでにマーケットにあるソリューションであったり、ノキア シーメンス ネットワークスが提供しているソリューションであったりする。それは、基本的な充電スタンドの機能を提供するもので、電気自動車をどこでも充電できるようにする。さらに、国境を超えた充電を可能にするための電力事業者間でのローミングに対するソリューションも提供する。携帯電話では「国際ローミング」という言葉を聞くのは自然なことになったが、電気自動車の時代になると自動車で旅行や出張に出かけた時も「国際ローミング」を意識することになる(図D)。こうした利用を支えるソリューションとして、ノキア シーメンス ネットワークスでは、ユーザーのIDをRFIDカードなどを使って認証し携帯電話にSMSで通知するといった機能を提供する「IDM」(Identity Management)や、 課金ソリューションの「charge@once」を提供している。

▼図D ICTソリューションが実現するE-モビリティの機能(※画像をクリックして拡大)
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もう1つは次世代のソリューションである。例えば、支払いについて。電気自動車の利用者はパソコンやiPhoneなどのスマートフォンで、自分のアカウントの残高を常に確認できるようになると利便性が高い。また、プリペイド式の支払いやディスカウントの導入なども、事業者と利用者の双方に利便性をもたらす。これらは、テレコム業界のノウハウやソリューションがそのまま生かせる。様々な課金の種類、プランごとの使用制限などは、携帯電話などの通信サービスでは当たり前に使われている。

また、「ICTのソリューションを使うことで電気自動車や充電スタンドのモニタリングが可能になることにも注目したい。電気自動車のバッテリー容量をモニタリングして充電残量が減ってきたら、残量で到達できる充電スタンドを自動的に探す。そして、目指す充電スタンドに予約するといったこともICTソリューションが可能にする」とシュトール博士は将来像を語る。

ICTソリューションがEモビリティを支える大きな柱になるのが課金の仕組みである。シュトール博士は、Eモビリティでは柔軟性の高い課金が必要だという。例えば、ロードサイドにある充電スタンドで電気自動車に充電するとしよう。その時、電力の利用量に応じたディスカウントなどがあれば、充電スタンドでの利用も家庭の電気代と一緒の電力会社から請求してほしいと考えるユーザーがいる。一方で、家庭は電力会社Aから、電気自動車は電力会社Bからと別々に請求してほしいと考えるユーザーがいてもおかしくない。こうした個別の契約(パーソナルコントラクト)による課金の方法を提供するために、ICTソリューションが力になる。

課金の仕方としては、使った分だけ後払いする現状の電気料金と同様の課金方式だけでなく、携帯電話と同じようにプリペイド式で前払いする課金方法も求められる。また、国内、国外の電力会社とのローミング契約も必要だ。一般的に電力会社は地域に密着した企業だが、自動車がある街から別の町に移動したら充電できないというわけにはいかない。ローミングが実現することで、東京から関西に出かけても現地の充電スタンドでも充電できるようになる。こうした仕組みを整えるには「ICTソリューションが必要であり、通信サービスで多くのノウハウを得たノキア シーメンス ネットワークスは柔軟性の高いICTシステムでE-モビリティをサポートする」とシュトール博士は説明する。

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始まる実用化、未来への進展

すでに、ICTソリューションは様々な側面でE-モビリティを支えている。シュトール博士は、実例を挙げながら説明する。「ドイツの公的機関であるsmartlabとノキア シーメンス ネットワークスは、企業向けE-モビリティのB2Bサービスに向けて共同で、ローミングを可能にする"e-clearing.net"と呼ぶ認証システムを開発している。また、フィンランド・ヘルシンキ市の公益電力企業Helsingin Energiaと共同で実施しているスマートグリッドの整備事業では、ピーク負荷を低減させるなどの管理システムの重要性が認識されている」。

スマートグリッドと電気自動車は密接な関係にある。電力の需要のカーブを見ると、昼間に比べて夜間は消費が少ないことがわかる。電気自動車を夜間に充電させることで、ピーク負荷を減らしながら、全体としての電力販売量を増やせるという算段である。さらに、電気自動車そのものをスマートグリッドの一部に取り込むという考え方もあると言う。「"Vehicle-to-Grid"(V2G)と呼ぶもので、電気自動車を一種の蓄電池と考えるもの。夜間に電気自動車に充電しておき、日中に走っていない電気自動車からスマートグリッドに電力を供給するといったことも可能になる」(シュトール博士)。こうした機能の実現にも、ICTソリューションの後押しが必要なのである。

現状のE-モビリティへの動向を確認しておく。「ドイツの大手電力会社RWEは、すでに200以上の電気自動車用の充電ソリューションを設置している。アメリカで2009年に始まった世界最大の電気自動車プロジェクトであるEV Projectには、電力会社や日産自動車、シボレーといった自動車メーカーに加えて、クアルコム、シスコ、スプリントといったテレコム・ICTの企業がパートナーに名を連ねていて、ICTがE-モビリティで重要な位置づけにあることがわかる。アイルランド最大の電力会社ESBは、E-モビリティのインフラを国全体で実現する計画で、1500基の充電スタンドと2000基の家庭向け充電機器を整備する。ここは、充電スタンドの入札が終わったところであり、次にE-モビリティのICTシステムを決める段階に来ている」(シュトール博士)。

このように、E-モビリティは世界中で拡大する動きが始まっていて、今後大きなビジネスに成長していく可能性が高い(図E)。そこにICTは重要な役割を果たし、ノキア シーメンス ネットワークスはこれからも影響力を保ち続けられると言う。「ノキア シーメンス ネットワークスは、通信産業で多くの経験を積み、それらを土台にして電力会社や自動車会社へのソリューションを作っている。ICTのノウハウを生かして高い利益を得られるソリューションを提供できる」(シュトール博士)。

▼図E E-モビリティの前途には青信号が灯る(※画像をクリックして拡大)
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E-モビリティのソリューションは、テレコムのソリューションとは異なるものだ。しかし、認証、ユーザーデータベース、課金といった根幹の機能は高度に進化したテレコム向けのソリューションを基にして作れる。通信機器ベンダーであるノキア シーメンス ネットワークスのノウハウが、E-モビリティの前途に大きく貢献するのである。

Lothar Stoll(ロタール・シュトール)博士
ノキア シーメンス ネットワークス、スマート・グリッド・ソリューション担当オスナブリュック大学とミュンスター大学(ドイツ)で応用物理学を研究。光通信技術に関する論文によりグラーツ大学(オーストリア)で理学博士号を取得。シーメンスR&Dセンター(ドイツ、ミュンヘン)で光コネクティビティの研究に従事した後、屋内配線のマルチメディア、スマートホームITソリューション、FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)などの研究開発やビジネスディベロップメントで様々なリーダーシップを発揮する。

2009年以降、欧州における電子モビリティ、スマートグリッド及びスマートメータリングの設計・開発の責任者を務める。欧州における電子モビリティに特に注力したスマート・グリッド・ソリューションのユニットのメンバー。

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