台湾のHTCは米国時間5日、スマートフォン向けのクラウドサービスを展開する米ダッシュワイヤー（Dashwire）を1850万ドルで買収すると発表した。

ダッシュワイヤーは現在、携帯通信事業者や端末メーカー、小売業者などにさまざなクラウドサービスを提供しているが、たとえば「Dashworks」というサービスでは、スマートフォン内にあるさまざまなデータ -- テキストメッセージや写真、連絡先、動画、設定などを同期できる。同社のサービスはAndroid、Symbian、BlackBerry、Windows Mobileなど各社のモバイルOSに対応しているという。

HTCではこの買収について、ダッシュワイヤーの最新の同期サービスやモバイルクラウド事業での経験が、顧客の望むクラウドサービスの構築に役立つだろうと述べており、この買収によって得た技術やサービスは今後HTCのユーザー向けポータル「HTC Sense.com」に組み込まれる可能性もある。

いっぽう、今回の買収については、HTCの目的がダッシュワイヤーの持つ特許の取得にあるのではないかという見方もある。同社は4月に、2万件以上の特許を所有するインテレクチュアル・ベンチャーズ（Intellectual Ventures）とライセンス契約を結んでいたことから、HTCではこれらの特許を利用することが可能になると考えられる。

HTCは現在、スマートフォンやタブレット端末の市場で競合するアップル（Apple）と特許訴訟を争っており、7月にはこのための対抗手段として、アップルを相手取った訴訟で勝訴しているS3グラフィクス（S3 Graphics）を買収。ただし、この買収に関しては一部の特許侵害が覆され、認められた特許侵害もアップルの売上の多くを占めるiOS製品を対象とするものではなかったなど、HTCにとっては誤算となっていた。

【参照情報】
・HTC Purchase Could Help in Patent Suits - WSJ.com
・HTC acquires Dashwire to bolster cloud services - and patent portfolio -BGR
・Dashwire Becomes Intellectual Ventures Customer and Gains Patents for Defensive Purpose - Intellectual Ventures
・HTCに痛手 - アップルによるS3特許の侵害、iPhoneではなく実はMacと判明
・HTC、アップルとの特許訴訟で歩み寄りの姿勢 - アップルの出方に注目
・アップル対HTCの特許訴訟 - ITCがアップルの訴えを認める判断