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パンドラの箱を開けるグーグル - 「モトローラのハードウェア部門売却説」浮上の理由

2011.08.16

Updated by WirelessWire News編集部 on August 16, 2011, 11:28 am JST

昨晩(日本時間15日夜)にグーグル(Google)がモトローラ(Motorola Mobility)の買収計画を発表したことは、すでにお伝えした通りだが、その後も英語圏のニュースサイトやブログなどでは、この意表を突いた動きに関して、「ソフトウェアとハードウェアの両方を直接コントロールする、アップル型の事業モデルにグーグルが方針転換/アップルと直接対決に」といったものから、「相継ぐAndroid関連の特許紛争で、グーグルが一定の抑止力を手に入れるための防御策」といったものまで、いまなおさまざまな見方が出続けている。まだ「ほこりが宙に舞っている状態」というのが全体的な印象だが、そのなかで目に付いた指摘や見解を可能な限りフォローしていきたい。

まず、AllThingsDでは、IT関連、なかでもとくにモバイル分野に詳しいベテラン記者の(Ina Fried)氏が、この買収で生じる複数の問題をクリアするために、グーグルにはモトローラのハードウェア事業を売却するという選択肢がある、という指摘をしている。

グーグルのラリー・ペイジ(Larry Page)CEOが同社ブログのなかで触れているとおり、この買収の狙いのひとつがモトローラの保有する無線通信関連の特許取得を通じたAndroidの防衛にあることは、さまざまな媒体が指摘している。本媒体でも再三お伝えしてきているが、グーグルに対してはオラクル(Oracle)がJava関連の特許侵害で訴訟を起こしており、またAndroid OSを自社製品に採用するハードウェアメーカー各社に関しても、たとえばアップル対サムスン、アップル対HTC、アップル対モトローラ、マイクロソフト対モトローラなどがさまざまな法廷で係争中であり、すでにサムスンに対してはアップルの訴えを受けたドイツの法廷から「Galaxy Tab 10.1」に関する欧州での販売仮差し止め命令も出されている。またマイクロソフトからはAndroid端末メーカー(たとえば、HTCなど)に対し、自社特許に関するライセンス使用料を徴収するなどの圧力も加わっている。

こうしたなかで、とくに6月末に実施されたノーテルの特許売却オークションで約6000件を超える特許をアップルやマイクロソフトなどの競合各社にさらわれたグーグルでは、この特許部分に関する強化を目的とした企業買収などを模索しているとされ、米インターデジタル(InterDigital)社など具体的な買収先候補の名前もあがっていた。

そうした矢先に発表された今回のモトローラ買収だが、グーグルがこの買収を実現させた場合、同社はモトローラの特許約1万8000件(取得済みのものが約1万2500件、申請中のものが約7500件)を手にすることになる。

しかし、それと同時にグーグルは、サムスンやHTCをはじめとするAndroid陣営の各社からの信頼をどうつなぎ止めるか、という厄介な問題を抱え込むことになる。

グーグルは2007年にAndroidの普及を目的としたOpen Handset Alliance(OHA)を結成、同団体の参加メンバー各社にAndroid OSを無償で提供してきており、現在同OSを採用するハードウェアメーカーは全世界で39社、またこれらの端末を取り扱う携帯通信事業社の数は世界123カ国の231社に達しているという。ただし、同社は各ハードウェアメーカーと等距離を保っているとは言い難い部分もあり、たとえば最近ではタブレット用に最適化した初のバージョンとなる「Honeycomb」に関して、「XOOM」の開発を進めていたモトローラにいち早くこれを提供したとして、他のベンダーの間からは不満の声が上がっていたといった事例もある。

モトローラを傘下に収めることで、グーグルはOHAに参加するハードウェアメーカー各社から、こうした点についての懐疑や批判に常にさらされることになるが、この問題を回避するための方策が、モトローラの特許だけを自社で持ち続け、ハードウェア事業は手放す、というもの。

上記のAllThingsD記事では、市場調査会社ガートナー(Gartner)アナリストのマイケル・ガーテンバーグ(Michael Gartenberg)氏の「これまで(OSの)ライセンス先とハードウェア市場で競合する立場に立って、成功した例はない」とのコメントが紹介されており、また実際の失敗例としてHPに買収された旧パーム(Palm)や90年代後半(スティーブ・ジョブズ氏復帰前の)アップルのMac事業を挙げている。

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この指摘に相通じる見解はほかにも複数見られ、たとえばBusiness Insiderブログを主催するヘンリー・ブロジェット(Henry Blodget )氏は、このグーグルが直面する「利害の衝突」に関して、「アップルのやり方を真似ようとグーグルが頑張るほど、ほかのAndroid端末メーカーからの反発が強まる可能性が高い」としている。

また、FOSS Patentsブログを運営するフロリアン・ミューラー(FLORIAN MUELLER)氏も、「モトローラという名乗るグーグルの完全子会社と、他のAndroid端末メーカー各社とが、公平な立場で戦えるようにするシンプルな方法はない」と、このグーグルが抱え込む利害の衝突について悲観的な見方を示している。

さらに、Asymcoブログを運営する携帯市場アナリストのホレス・デディウ(Horace Dediu)氏は、自らもかつて席を置いたノキアのSymbian OSに関する失敗例を引き合いに出しながら、「1社のなかに、ライセンス提供側とライセンス先を同時にもつことは、他のライセンス先を不安させる。(OSの)提供者がハードウェア市場で競合相手になるからだ。こうした古典的な利害の衝突はよい結末に至った試しがない」「グーグルがAndroidをオープンソースのままにしようがしまいが、こうした利害衝突の可能性を含んだ関係はうまく回らない」などと述べた上で、「モトローラの買収実現後も同社を独立部門として運営し、同時にAndroidをオープンなプラットフォームとして提供し続ける。これまで多くのハードウェア・パートナー企業がAndroidの成功に貢献してきており、われわれは今後もすべての関係者が優れたユーザーエクスペリエンス提供のために協力し合っていくことを楽しみにしている」というグーグルのペイジCEOのブログでの発言を、「ナイーブな考え」と切り捨てている。

これとは別に、非常に効率のよいビジネスを展開するグーグルが、どうしても薄利になりがちなモトローラのハードウェア事業を抱え込むことを、グーグルの投資家は承知しないだろう、という見方もでている。今年第2四半期(4-6月期)の業績は、従業員数が約2万9000人まで増加したグーグルがそれでも売上90億3000万ドル(前年同期比32%増)、利益25.1億ドル(同36%増)を計上したのに対し、約1万9000人の従業員を抱えるモトローラでは携帯端末部門の売上が24億ドル(同41%増)となったものの、最終損益は8500万ドルの赤字(GAAPベース)となっている。

こうした諸点を考え合わせると、今回発表した買収に際して、グーグルがハードウェア事業を売却することのメリットがより説得力を持つように思えてくる。ただし、前述のミューラー氏は「モトローラのもつ特許がそれほど強力なものなら、そもそもアップルやマイクロソフトが同社を訴えることもなかっただろう」との見方を示しており、たとえグーグルが多数の特許を手に入れたとしても、Androidに対するアップルやマイクロソフトからの攻撃は今後も続くだろう」と述べている。

【参照情報】
Supercharging Android: Google to Acquire Motorola Mobility - Google Official Blog
Should Google Keep Motorola's Patents and Sell Off the Hardware Business? - AllThingsD
Google: We're Spending $12.5 Billion on Motorola to 'Protect' Android - AllThingsD
THE TRUTH ABOUT THE GOOGLE-MOTOROLA DEAL: It Could End Up Being A Disaster - Business Insider
$2.5 billion Google-Motorola break-up fee reflects sellers' concern and buyer's desperation - FOSS Patents
The perils of licensing to your competitors - Asymco
Google and Motorola: what are all those patents for? - TNW
Motorola Mobility (NYSE: MMI) Earnings Q2 2011 - Fierce Wireless
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