以前から何度か話題になってきている、チャイナ・モバイル（China Mobile）とアップル（Apple）とのiPhone提供をめぐる交渉が、いよいよトップ会談のレベルまで進んできているようだ。

加入者数で世界最大の携帯通信事業者のチャイナ・モバイル（China Mobile）の王建宙（Wang Jianzhou）会長が、18日に行った決算発表のなかで、同社のネットワークで採用されている中国独自の3G通信規格「TD-SCDMA」に対応するiPhoneの提供に関して、「アップル（Apple）のスティーブ・ジョブズ（Steve Jobs）CEOとこれまで何度か協議した」と語ったことが、一部のブログなどで採り上げられている。

すでに中国全体で携帯電話加入者の数が9億人を超えたなか、音声通話中心の2Gサービスからの収入が頭打ち傾向と見られるチャイナ・モバイル（加入者数は約6億1000万人）では、以前からiPhoneなどの提供に関してアップルに秋波を送ってきている。また、アップル側でもすでに米国に次ぐ第2の市場規模を持ち、今後も高い成長が望める中国を「最重点市場」と位置付けていることを、同社のティム・クックCOOが7月の決算発表の際などに明らかにしていた。さらに、6月には同COOの姿が北京のチャイナ・モバイル本社ロビーで目撃された、という話も伝えられていた。

今回の報道で目新しい点は2つ -- ひとつは両社の議題に「TD-SCDMA版iPhone」が含まれるという点で、もうひとつはこの話し合いにスティーブ・ジョブズCEOが直々に関与しているという点。

Economic Timesが掲載したReuters伝では、王会長の「iPhoneをできるだけ早期に投入したい」とするコメントが紹介されているが、ただし具体的なスケジュールについては明かされていないとされ、またAllThingsDで引用している同会長のコメントも「スティーブ・ジョブズ氏には数回会ったが、まだ合意には至っていない」となっている。

中国では現在、3Gサービス加入者の「指数関数的な増加」が続いているが、独自の「TD-SCDMA」を採用するチャイナ・モバイルでは、これに対応する人気端末の不足などから、下位のチャイナ・ユニコム（China Unicom）、チャイナ・テレコム（China Telecom）などに対して守勢に立たされている。

アップルは中国で、GSM/WCDMA版のiPhone（日本＝ソフトバンクモバイル向けと同じもの）をチャイナ・ユニコムを通じてすでに販売しており、またCDMA版iPhone（米ベライゾン・ワイアレス向けと同じものと思われる）についても今年中にチャイナ・テレコムに供給を開始する予定があると、Reutersが先ごろ報じていた。

いっぽう、まだ正式な契約を交わしていないチャイナ・モバイルにも、すでに約744万人のiPhoneユーザーが存在している。これらの加入者は、高速な3G回線サービスが使えないことを承知で、iPhoneのSIMカードをチャイナ・モバイルのものに差し替えて利用しているのだという。

また、チャイナ・モバイルの王会長は以前に、「アップルがiPhoneのTD-LTE対応を確約した」とする発言もしていた。いわゆる「4G」ネットワークについては、チャイナ・モバイルは同社が開発・普及の旗振り役となっている「TD-LTE」方式のものを採用するが、ただし本格的な展開の時期はいまのところ「2014年以降」ともいわれており、アップルとしても「いっきょにTD-LTE版iPhoneの投入」とはなりずらい状況とみられること、さらには競合するAndroid陣営のメーカー各社が相継いで低価格帯向けのスマートフォンを投入しはじめたことなどから、アップルが「はたしてTD-SCDMA版iPhoneの投入に踏み切るかどうか」に注目が集まっている。

なお、アップルの中国市場（本土、香港、台湾を含む）での売上は今年4-6月期に約38億ドルとなり、前年同期比6倍の成長を記録していたが、それでもティム・クックCOOは「まだ表面をわずかに引っ掻いたに過ぎない」と同市場の潜在力に大きな期待をかけていることを明かしていた。

【参照情報】
・China Mobile has been meeting secretly with Steve Jobs - Fortune
・China Mobile Talking to Steve Jobs About iPhone Deal - AllThingsD
・China Mobile says has held talks with Steve Jobs on iPhone - Reuters
・China Mobile H1 profit grows, talking to Apple on iPhones - Economic Times
・【図・グラフ】中国3Gサービス加入者の「指数関数的な増加」
・アップルQ3（4-6月期）決算で出てきた「主な数字」など（編集担当メモ）
・中国の携帯電話利用者数、2012年には10億人の大台に（英調査会社）
・チャイナ・テレコム、CDMA版iPhoneを年内発売へ（Reuters報道）
・「アップル、iPhoneのTD-LTE対応を確約」- チャイナ・モバイル会長がコメント
・まさに「白熱」 - 北京のアップルストア流血騒動の背景に2つの「崇拝」（編集担当メモ）
・過熱する中国のiPhone 4人気 - 転売屋が横行、アップルストアでは閉店騒ぎも