グーグル（Google）は先週、モトローラ（Motorola Mobility）を約125億ドルで買収すると発表したが、その際にこの買収の大きな理由の1つに、モトローラが保有する大量の特許（取得済み約1万7000件のほか、申請中のものが約7500件）を挙げていた。このポートフォリオのなかで、とりわけ位置情報サービスに関するものなどあわせて18件の特許が今後のスマートフォン業界の行方に大きな影響を及ぼす可能性があるという話をBloombergが伝えている。

Bloombergでは、ブラッドリー・アラン・ボウルト・カミングス（Bradley Arant Boult Cummings）という米法律事務所に所属する特許弁護士のデビッド・ミクソン（David Mixon）氏の話として、これらの特許に関する発明は1994年までさかのぼるもので、これまでモトローラが進めてきた、アップル（Apple）などの競合企業に対する特許訴訟で切り札となってきたと述べている。

また、ICAP Patent Brokerageという特許仲介会社でCEOを務めるディーン・ベッカー（Dean Becker）氏は「モトローラの特許ポートフォリオのなかには、魅力的なものが多くある。ただし、グーグルが自社の法的立場を防御するには、何件かの（重要な）特許があればよい」とコメントしている。

最重要とされる18件の特許のなかには、モバイル端末の分野で必要不可欠とみられる位置情報サービスやアンテナの設計、電子メールの送受信、タッチスクリーンの動作、ソフトウェア・アプリケーションの管理、3Gの無線通信などの各技術に関連するものが含まれているという。

また実際に、昨年10月にモトローラがアップルを相手に、iPhone 4、iPad、AppleTV、MacBook Airを対象とする3件の特許訴訟ならびにITCへの申し立てを行った際には、この18件のなかの一部が使われたという。

さらにモトローラは昨年、リサーチ・イン・モーション（Research In Motion：RIM）と特許訴訟を争い、両社間のクロスライセンス契約やRIMからモトローラへのロイヤリティ支払いを条件として和解していたが、このときにも18件のうちの4件が使われていたという。

AndroidOSを採用するハードウェアメーカー各社と、アップル、マイクロソフトなどの競合各社との訴訟合戦が激化するなか、グーグルがモトローラから手に入れることになるこれらの特許が今後どのような影響をもたらすかについて、アナリストの間からはさまざま予想が出ている。

たとえば、エピセンターIPグループ（Epicenter IP Group）という特許仲介企業のロン・エプスタイン（Ron Epstein）CEOは、これらの重要な特許は「氷山の一角」であるとした上で、関連各社間のパワーバランスがモトローラの特許を入手したグーグルの側へシフトすることから、アップルが訴訟中のサムスンやHTC、モトローラなどとの間で、和解やクロスライセンス契約の締結を迫られる確率も高まると述べている。

いっぽう、ジェフリーズ＆カンパニー（Jefferies & Co）のアナリストであるピーター・ミセク（Peter Misek）氏は、グーグル側の特許が充実してきたとしても、アップルはHTCやサムスン（Samsung）などに対する訴訟を続けていくだろうとの見通しを示している。

【参照情報】
・Motorola's Value to Google Found in 18 Patents - Bloomberg
・Motorola might only be worthy to Google for 18 patents - ZDNet
・The 18 most important patents Google takes home with Motorola - Digital Trends
・グーグルのモトローラ買収 - 「グーグルは押し売りを断れなかった」説について（編集担当メモ）
・グーグルのモトローラ買収 - 「特許取得によるAndroid防衛が最大の理由」との見方について
・グーグル、モトローラを125億ドルで買収へ - 特許関連強化はプラス、ハードウェアベンダーとの関係は微妙に
・グーグル、特許紛争関連でマイクロソフト、オラクル、アップルを名指しで批判 - Android防衛で「徹底抗戦」