Android陣営のスマートフォンメーカー、HTCは米国時間7日、アップル（Apple）の特許侵害を主張する訴えをデラウェア州の裁判所に提出したとBloombergなどが報じている。HTCは1日にグーグル（Google）から9件の特許を譲り受けたばかりだが、今回のアップル提訴ではこれらの特許を理由にしているという。

これらの特許はいずれもグーグルが過去1年間に他者から獲得したもので、4件はモトローラ（Motorola）が、3件はオープンウェイブ（Openwave）が、そして2件はパーム（Palm）がそれぞれ取得していたものだという。

HTCはまた、米国際貿易委員会（U.S. International Trade Commission：ITC）に対し、アップルを相手取って起こしていた訴えに新たに5件の特許侵害を追加したが、このなかの3件はオープンウェイブからの特許、また2件はパームからの特許にそれぞれ関係するもの。

サムスンやモトローラなどAndroid陣営の端末メーカー各社を相手に特許訴訟を続けているアップルは、HTCに対しても、マルチメディア処理関連や電子メール関連の特許侵害を理由にした訴えをITCを提出し、7月にはこの訴えを部分的に認める判断がITCで下されていた。

いっぽう、HTCはアップルに対する特許面の防御強化を目的として、S3グラフィクス（S3 Graphics）などアップルに対抗し得る特許を持つ企業を買収してきている。

グーグルは8月中旬にモトローラの買収を発表した際、モトローラが持つ2万4000件あまりの特許を利用して、アップルやマイクロソフト（Microsoft）などの競合他社から、Android陣営の各社を守ることを主たる目的のひとつとして挙げていた。

特許管理・ライセンス会社のオープンウェイブは先週、アップルとリサーチ・イン・モーション（Research in Motion）を特許侵害で訴えていた。デラウェア州裁判所ならびにITCに提出された訴状によると、オープンウェイブは同社のもつウェブブラウザ、クラウドコンピューティング、無線通信などに関連する特許が、事実上すべてのiOS端末で侵害されていると主張しているとCNETは記している。

今回のHTCの動きについて、TNWでは、ITCが先に下していた仮判定に言及。この判定では、アップルが保有する2つの特許の侵害がHTC製品のなかに認められるとされていたが、TNWではその片方が関係する「realtime API」はAndroid OSの中核部分であるとし、ITCによる最終判定でもこの特許侵害が認められてしまうと、その影響はHTCだけでなく、Android端末メーカー全社に及びかねないと指摘、こうした事態の可能性を懸念してグーグルはHTCに特許を譲り渡したのではないかと推測している。

なお、この「realtime API」については、先ごろFOSS Patentsブログのフローリアン・ミューラー（Florian Mueller）氏が、「Android OS開発責任者のアンディ・ルービン（Andy Rubin）氏が、1990年代前半にアップルに在籍していた当時にrealtime APIの開発作業に関わっていた」ことなどを挙げ、「Androidの源がGeneral MagicでもDangerでもなく、アップルにあった」とするアップルのITCへの主張について採り上げていた。

そのミューラー氏は、HTCの今回の動きについて、「HTC対アップルの訴訟にグーグルが介入してきたことで、アップルとグーグルが法廷で直接対決する可能性が高まった」とCNETにコメントしている。

【参照情報】
・HTC Sues Apple Using Patents Obtained From Google Last Week - Bloomberg
・HTC sues Apple using Google patents, report says - CNET
・HTC is suing Apple with patents Google transferred to it on September 1st - TNW
・Google Transfers Mobile Patents To HTC, Who Then Sues Apple - mocoNews
・These are the patents Google gave to HTC to assert against Apple - FOSS Patents
・Apple to ITC: Andy Rubin got inspiration for Android framework while working at Apple, hence infringes an Apple API patent - FOSS Patents
・アップル対HTCの特許紛争 - 米ITC、タブレット端末についても調査へ
・アップル対HTCの特許訴訟 - ITCがアップルの訴えを認める判断

エリック・シュミット会長がアップルを「口撃」したという記事はこちら

法的手段に訴えるアップルの姿勢を非難するとともに、HTCを擁護する発言を行った。

グーグルのシュミット会長、アップルを「口撃」 - Android勢への訴訟は「嫉妬心」と「技術革新の欠如」から