アップル（Apple）とサムスン（Samsung）との特許をめぐる法廷での争いがついに日本国内でも本格化してきた。

さまざまなニュース媒体などを通じて報じられているとおり、アップルがサムスン「Galaxy」シリーズの製品の販売差し止めを求める訴えを東京地裁に提出、この訴訟の第1回目の審理が7日に同地裁で開かれた。

アップルによる日本で訴えはサムスン傘下の日本サムスンならびにサムスンテレコムジャパンを相手としたもので、差し止め要求の対象となっているのはスマートフォンの「Galaxy S」「同S II」そしてタブレット端末の「Galaxy Tab 7」。ドイツやオーストラリアでの訴訟では争点のひとつとなっている「Galaxy Tab 10.1」は含まれていないという。

この件について、アップル（日本）で広報部長を務める竹林賢氏に問い合わせたところ、同社による下記の声明が得られた。

「サムスンの最新製品がハードウェアの形状計上からユーザーインターフェイス、さらにはパッケージに至るまで、iPhoeとiPadに酷似しているのは偶然とは思えません。このような目に余る模倣を行うことは誤りであり、他社がアップルのアイデアを盗用した時は、自社の知的所有権を守る必要があります」

なお、この声明は先行する米や独での訴訟に関して発表されたものと同内容だという。

竹林氏によれば「本件は米本社（法務部門）の直轄取り扱い事項であるため、詳細については（日本側では）把握していない事柄もある」とのこと。また、世界各地で続けられている両社の特許侵害をめぐる争いのなかで、今回初めて「1億円の損害賠償」という具体的な数字が出ている点については、「具体的な算定の方法などについては不明だが、差し止めを求める訴えを起こす際には、その前提として被害額を具体的に示す必要があると聞いている」（竹林氏）という。

4月半ばに始まったアップルとサムスンの特許侵害をめぐる争いは、本サイトでも再三にわたってお伝えしてきている通り、現在米国や欧州各国、オーストラリア、韓国など合わせて19カ所の法廷で続いているが、このうち欧州では、8月上旬に独デュッセルドルフ法廷で「Galaxy Tab 10.1」を対象とした販売仮差し止め命令が出され、またオランダのハーグ法廷では「Galaxy S」「同S II」「同Ace」の3機種についての販売仮差し止めを命じる判定が下されていた。いっぽう、オーストラリアでは両社の紛争が解決するまで「Galaxy Tab 10.1」の投入を見送ることで両社が合意していた。

独法廷では、現地時間9日にこの訴訟の審理が開かれる予定だが、ここで販売差し止め命令が正式に出された場合には、サムスンは同社にとって欧州最大の市場であるドイツ国内で複数のGalaxyTabを販売できなくなる可能性もあるとWall Street Journalは記している。

なお、本サイトでも度々コメントを紹介している特許分野の専門家、フローリアン・ミューラー（Florian Mueller）氏に、独法廷で下された判断が他の地域の法廷での審理に及ぼす影響について問い合わせたところ、「日本で起こされた訴えの争点が、技術に関わる特許だけで、デザインに関するものは対象外だとすると、独の訴訟と日本の訴訟とはまったく関連しない別物ということになる」とのコメントが得られた。

いまのところ、日本の法廷で争点となっている具体的な特許については不明だが、仮にそれがドイツなど他の法廷での争点と重なり合うものであった場合、先行する判断が日本での審理に影響を及ぼす可能性も完全には排除できないことになる。

【参照情報】
・Samsung Moves to Expand Tablet Business With Microsoft - WSJ.com
・米アップルが日本でもサムスン提訴、1億円の損害賠償求める - ロイター
・日本でもサムスン提訴＝スマホなどで特許侵害と主張－アップル - 時事ドットコム
・NTTドコモ、Xi対応のタブレット「GALAXY Tab 10.1 LTE」「ARROWS Tab LTE」を発表
・「アップルはなぜデュッセルドルフへ向かったか」- 特許訴訟の「ファーストフード店」と化す独法廷（編集担当メモ）
・映画『2001年宇宙の旅』まで持ち出してきたサムスン -対アップル特許訴訟で