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通信インフラに求められる非常時の電源供給と将来に向けた公平性──総務省・富岡課長補佐

2011.10.12

Updated by Naohisa Iwamoto on October 12, 2011, 15:00 pm UTC

緊急時や将来の日本を支えるインフラとしての通信ネットワークをどう構築するか。「CEATEC JAPAN 2011」のコンファレンスでは、総務省 総合通信基盤局電気通信事業部 事業政策課 課長補佐の富岡秀夫氏が登壇し、通信ネットワーク政策の最新動向を解説した。

▼通信ネットワーク政策のポイントを説明する総務省の富岡課長補佐
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講演の柱は基本的に2つ。1つは東日本大震災を受けて、災害など緊急事態において通信をどう確保していくか、もう1つはこれからブロードバンドの普及促進を図る上での通信市場の競争をどう促進させるか--である。富岡氏は、「この2つが、総務省の通信ネットワークにかかわる政策として重要な意味を持っている」と語る。

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通信の確保は電源の確保とパケット通信の活用

まず、1番目の大規模災害など緊急事態における通信確保のあり方について。富岡氏は、東日本大震災の後、通信の分野で何が起こっていたかをまとめた。

1つは、インフラの被災で、固定通信では最大で190万回線の通信インフラが被災、移動通信では全体で2万9000の基地局が停止した。これらは4月末までに復旧した。「1カ月半でほぼすべてのインフラの復旧をした。これは外からも驚異的との評価を得ている」(富岡氏)。

そこで、移動通信に絞って、停波した基地局の状況を見てみる。すると、大震災発生の3月11日当日よりも、停波した基地局の数のピークは少し後にずれている。例えばNTTドコモでは、3月12日〜13日あたりにピークがあることがわかってきた。今回の大震災のインフラ面での被災について、主な原因は何だったのか。「地震・津波で設備が壊れたこともあるが、それ以上に電源の問題が大きい。大規模な停電が起こって電源が行き渡らなくなった。震災より少し後になって基地局のバックアップの予備電源が切れ、その時に停波基地局のピークが来ている。蓄電池容量の枯渇、発電機燃料の枯渇が、移動通信のインフラに最も大きな影響を与えたのではないか」(富岡氏)と分析する。

▼基地局の停波は震災直後から少し後ろにずれ、停電の影響が大きいことがわかる
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2つ目は、通信の集中による輻輳(ふくそう)が起こったこと。安否の確認のためみんなが電話をかけ、ネットワークがパンクした。固定通信では、NTT東日本が90%の通信規制を行った。携帯電話でも輻輳が起こり、音声では最大70〜95%の通信規制がかけられた。一方、「パケット通信ではNTTドコモが30%の規制、他社は規制をしなかった。音声よりもパケット通信が比較的通信しやすかった」(富岡氏)という。実質的に使えなくなった音声通話のネットワークよりも、比較的状況が良好だったパケット通信をうまく活用することが求められている。

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アクションプランで4項目を検討中

総務省では、こうした状況を受けて4月に大規模災害等緊急事態における通信確保のあり方に関する検討会」を発足し、検討を進めている。検討会では8月2日に中間とりまとめを公表している。そこではアクションプランが構築され、大きく4つの論点で議論の整理が行われている。

●緊急時の輻輳状態への対応のあり方

まず、緊急時に通信の混雑を解消するための手法についての検討が行われている。音声のコミュニケーションをできるだけ確保していく方針である。「抜本的には、交換機などの設計容量の見直しがある。ただし緊急時を前提にインフラ作ると、普段は容量が無駄になる。この点については議論が続けられている」(富岡氏)。

また、緊急時に音声通話を確保する方法についても検討がなされている。「1人当たりの通話時間を制限する、また通話品質を低下させて電話サービスを提供する、といった制約を加えて通話の総量を確保する考え方も浮上しえいる。ただしこれはユーザーに不利益が生じる可能性もあるので、慎重な議論が必要だろう」(富岡氏)と指摘する。

音声の回線交換網を効率的に使うほか、比較的無事だったパケット通信網を使おうという考え方もある。「音声を使うのではなく、なるべくパケット通信を使ってもらう」(富岡氏)。例えば、災害伝言サービスを高度化し、電話をしなくておも安否の連絡が撮れるようにする。また音声を録音したファイルを作り、パケット網で送ることで通信を確保する考え方もある。

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●基地局や中継局が被災した場合などにおける通信手段確保のあり方

インフラへのダメージに一番影響が大きかったのは、前述したように電源の問題だった。復活させるには燃料を現地に輸送する必要がある。そのほかの資材や人を現地に送ることも含めて、なかなかスムーズにいかなかった。道路の途絶、交通規制、それに対する情報の不足。さらに燃料を運ぶための人材やタンクローリーなどの車両の手配にも手間取った。富岡氏は、「今後は燃料の輸送手段として国、自治体、インフラ機関が連携していく必要性を感じた」と語った。

1つの考え方として富岡氏が紹介したのは、ネットワークのローミングだ。事業者Aのネットワークがダメになったときに、事業者Bのネットワークを利用する。こうすることで、通信の確保につなげようという考え方である。ただし、これにも難しい問題がある、「ローミングすることで、無事だったネットワークに過剰な負荷がかかり、共倒れする懸念がある」というのだ。

●今後のネットワークインフラのあり方

インフラのあり方も抜本的に変える必要がある。基地局や局舎は、「非常時にバッテリーや予備電源で動かせるようにとは定めているが、原状では稼働時間までは決めていない」(富岡氏)。バックアップの時間を定めるような制度面の整備が必要になる。また、電線類の地中化、ネットワーク多重化も進める。

●今後のインターネットインフラのあり方

一方、今回の大震災でインターネットが役に立つことが実証された。今後、「首都直下地震が想定されるなかで、首都圏にあるインターネット相互接続ポイントやデータセンターの地域分散をどう進めていくか」が1つの課題の課題だという。また、インターネットを効果的に利用できていない。情報共有しようとしても自治体で得ている情報がばらばらだったりする。項目や様式を共通化することでより利用しやすくする。

クラウドサービスの活用についても、「自治体でも住民の基本的データが失われたことがあった。クラウドを使ってデータを遠く安全なところに保管することの有用性が認識された」(富岡氏)と新しいネットワークの力に期待を寄せる。

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ブロードバンドをインフラとして普及整備

2番目の話題は、ブロードバンドの普及促進に向けた競争政策のあり方の検討について。富岡氏はまず現状認識として「日本ではFTTHが過半数を占めている。しかし世界でもこうした普及は日韓ぐらい、米国などではFTTHはまだほとんど使われていない」と、日本の先進性を示した。

しかし、その日本でもブロードバンド化への課題がある。「日本93%の地域ではブロードバンドを使えるが、残りの7%は使えない。そこへのアプローチをどうするか」(富岡氏)だ。また、NTT東日本とNTT西日本が全国では3/4のシェアを持っているため、もっと市場の競争を強化させなければならないと説く。

そこで、2010年12月14日に、当時は「光の道構想」などと呼ばれた、「ブロードバンドの普及促進に向けた「基本方針」」が決まった。その1つとして、「NTT東西のアクセス系のネットワークを他の事業者が借りてサービスを提供する必要が出てくる。その時に、NTT東西と他社のサービスで条件の差がでないようにしなければならない」ことを挙げた(富岡氏)。公正に競争できるためのルール作りが必要だという。

また、ブロードバンド実現の手法にはワイヤレスを活用することも考えられる。そのための周波数確保が重要で、「円滑に新しい周波数体系に移行するためにオークションの考え方を取り入れた制度を導入した」(富岡氏)。700M/900MHz帯の事業者選定では、そのような考え方を導入して実施する計画である。

また制度面でのサポートも必要だと説く。現在、「光ファイバーを引くのはやっかい」(富岡氏)なのだ。手続きが膨大なだけでなく、窓口が国や自治体に分散しており、書類の様式も統一化されていない。手続きの電子化、申請窓口の一元化、様式の統一化などにより、手続きが迅速にできるようにすることも大きな要件と言う。

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富岡氏は、2つの話題について、「いずれも年内にいったん話をまとめて進めることになっている。平常時と緊急時にまたがる通信インフラの構築という意味で、今の議論が将来の通信ネットワークのあり方に大きな影響を及ぼす。将来を見据えて、国力を生かせる通信ネットワークの再構築に尽力したい」と語った。

CEATEC JAPAN 2011

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。