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AndroidとLTEを駆使してスマホ時代にもドコモの世界観を貫く──NTTドコモ岩崎取締役

2011.10.12

Updated by Naohisa Iwamoto on October 12, 2011, 14:30 pm JST

「iモードのサービスをスマートフォンでも使えるようにする。それをオープンなAndroid OSが後押しする」。NTTドコモ 取締役常務執行役員の岩崎文夫氏は、「CEATEC JAPAN 2011」の基調講演で、Android OSを採用したスマートフォンへのシフトの意味合いをこう語った。国内の大手3キャリアーの中で、唯一アップルのiOSを持たないキャリアーになったNTTドコモは、逆にAndroidの力強い旗振り役に専念できるのだ。

モバイルブロードバンドはグローバルのトレンド

「スマートイノベーションを支えるドコモのネットワーク」と題した基調講演で、岩崎氏はまず電話の国際状況を説明した。「固定電話と携帯電話は2002年に契約数が逆転した。現在は大きく差が開き、世界で53億の携帯電話に対して、固定電話は12億。携帯電話は特に新興国での伸びが著しい」。

岩崎氏は携帯電話のブロードバンド化についても言及した。3Gでほぼ100%のモバイルブロードバンド化を達成している日本が世界をリードし、欧米がそれに追随してきている。東南アジアなどでも今後は3G化が進展すると見ている。ブロードバンドでも固定とモバイルは2010年に逆転が起こり、固定ブロードバンドが5億に対して、モバイルブロードバンドが5.6億になった。

「モバイルの接続速度でも、日本が世界をリードしている。2009年には平均1Mbpsを超え、さらに高速化が進んでいる。各国でも3Gの導入が進むと平均速度が上がってくる。世界全体では、今後5年間でモバイルブロードバンドの速度は約10倍になると見ている」(岩崎氏)。

ブロードバンドの進展に伴い、収益構造にも変化が訪れている。ARPUの変化を見ると、1999年にiモードが始まったときにはNTTドコモのデータARPUはたかだか10%程度だった。それが現在ではデータARPUは52.8%となって、音声の料金を追い越した。世界的にも同じような状況で、データAPRUは30〜40%に迫ろうとしているという。

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著しいAndroid OSの成長

こうした中で、さらに変化を加速させているのがスマートフォンへのシフトだ。岩崎氏は「世界のスマートフォン市場ではAndroid OSが大きく成長している。2010年第1四半期は0.6億台だったのが、2011年第1四半期には1.1億台と約2倍の成長を見せている。Androidの端末のシェアはこの1年で大きく伸び、43.4%を占めるに至った」とAndroidの伸びを協調した。

▼Androidの成長とドコモの取り組みを説明するNTTドコモの岩崎取締役
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その理由として、グーグルのOSの特徴を挙げる。オープンなOSで非常に自由度が高いことから、世界でも採用するメーカーが増え、ラインアップが広がっているというのだ。そして、それこそがドコモの戦略とマッチする。「Androidの機能の拡張性は、iモードで培ってきた総合力をスマートフォン上でも提供し、サービスを広げていくことに役立つ。そのために、スマートフォンのOSとしてAndroidをメインとして選択している」(岩崎氏)。これまでのフィーチャーフォンで提供してきたサービスをAndroid OSの自由度の中で展開しているとの説明だ。

実際、ドコモの戦略として、フィーチャーフォンで提供してきた各種のサービスを、スマートフォンでも同様に利用できるような取り組みを続けている。キャリアメールが利用できるspモード、おサイフケータイやワンセグなどの機能、この春にはiチャネルのスマートフォン対応も実施した。今後、iコンシェルのスマートフォン対応や、コンテンツ課金・認証、マイメニューのフィーチャーフォンからの引継ぎなど、続々とドコモの世界のサービス拡充を図る。コンテンツ課金・認証をスマートフォンでも引き継いで利用できることになると、ユーザーがこれまでに購入したコンテンツをスマートフォンに引き継げるだけでなく、コンテンツプロバイダーもこれまで通りビジネスモデルでスマートフォン向けのビジネスができるメリットが生じる。

そうした目論見は当たり、NTTドコモのスマートフォンは大きく成長している。2010年はドコモのスマートフォンが年間で252万台だったが、2011年は第1四半期だけで130万台に達している。7月末で213万台、8月末までで300万台に迫る勢い。「2011年度のスマートフォンは600万台と計画しているが、上方修正する可能性は十分にある」(岩崎氏)と自信の程を伺わせた。

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トラフィック増大にLTEや動的コントロールで対処

一方で、スマートフォンで発生するパケットトラフィックの増大は大きな問題となる。岩崎氏は「トラフィックへの対応をどうするかは、世界中のキャリアがさまざまな知恵を出して取り組んでいるところだ。2010年は前年比1.7倍、2011年は前年比2倍のトラフィックが発生すると見ている」と言う。

そうした中で最も重要な対処方針が、有限のリソースである周波数の有効利用である。「これから力を入れていくのが、3Gの3倍と周波数利用効率が高いLTEだ。エリアを広げていくことが第一の課題で、現在30万(編集部注:8月末時点、9月末では38万超)の契約を、年度に100万契約へ、2014年度には1500万契約まで増やすことを目標にしている」(岩崎氏)。端末もデータ通信専用タイプからモバイルWi-Fiルーター、タブレットと発売し、「この秋冬モデルでは4機種のXiスマートフォンを発売する。CEATEC会場でも先行展示しているので見て欲しい」とアピールした。

▼4機種のXiスマートフォンを発表する予定
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その他のトラフィック増対策としては、「NTTドコモでも5%のユーザーが全体のトラフィックの半分ぐらいを使っている。公平性の観点から、ダイナミックQoS制御を導入している」(岩崎氏)。これは、300万パケットを3日で通信したユーザーに対して、"混雑時に限り"帯域制限をするというもの。岩崎氏は、「いつでも制限するのではなく、空いている時は普通に使えて、混雑しているときや場所だけで制限する。一律に制限するのではなく、きめ細かな制御ができていると考えている」と理解を求めた。

また、Wi-Fiやフェムトセルにを使ったデータオフロードにも力を入れている。公衆無線LANサービスの「Mzone」は、これまで7000アクセスポイントぐらいだったが、1年で3万アクセスポイントにまで増やす計画だ。将来的にはニーズを見ながら10万といった規模も検討しているという。315円の公衆無線LAN接続オプションを無料化するキャンペーンも実施し、データのオフロードへの本格的な取り組みが始まった。

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4つのレイヤーでネットワークを進化

根本的なネットワークの進化も検討課題だ。4つのレイヤーに分けて、進化させていく考えだという。それはレイヤーの低い側から、「無線アクセス」「モバイルバックホール」「コアネットワーク」「ドコモネットワーククラウド」の4階層だ。

無線アクセスは、「FOMAからHSPAで度を高めた。今後は、LTEの3波(15MHz幅)で100Mbpsが現実のものになってきている。その先は、4GのLTE-Advancedが控えていて、100MHz幅で1Gbpsの通信速度を目指している。実際にまとまって100MHz幅は取れないため、複数の周波数帯を束ねてつかう"キャリアアグリゲーション"の技術を開発している」(岩崎氏)。LTE-Advancedについては、2015年に開発を終了したいという。

無線アクセスとコアネットワークを結ぶモバイルバックホールは、大容量化と効率化を進める。コアネットワークは音声も含めたIP化を目指す。音声もIP化できれば、さらに2〜3倍のユーザーを収容できるようになるという。

最上位のレイヤーが、ネットワーククラウドだ。「これまで、新しいサービスを提供するには、それごとに新しい部品を作ってきた。今後はネットワーククラウドに"ドコモサービスイネーブラ群"を用意し、新しいサービスを作る時はそれらを組み合わせる形に変える。この仕組で実現しようとしているのが、11月に試験サービスを開始する予定の通訳電話サービスだ」(岩崎氏)。

端末としてのスマートフォンの進展、サービスインフラとしての高速大容量化とクラウドの利用。NTTドコモは、iモードから引き継ぐ"ドコモの世界"を維持しながら、さらなる進化を遂げる道を歩み出している。

CEATEC JAPAN 2011

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。