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いかにして私はiPhoneの販売台数を読み間違ったか(パート2)- Asymco

2011.10.20

Updated by on October 20, 2011, 15:45 pm JST

前回のアップル(Apple)四半期決算(4-6月期)の時には、私は新型iPhoneの投入を控えたアップルが「iPhone 4」の生産台数を絞り込むと考えて、結局実際よりも少ない数を予想してしまった。あの時の記事には「アップルが新機種への切替のために、旧モデルの生産を減速させる -- オリジナルiPadからiPad 2への移行の際にも同じことが起こっていた。iPhoneの販売台数増加が控えめ(moderate)なものになると予想した理由はそれだ」と書かれてある。

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[注:デディウ氏の自己採点 - 予想("Mid")とアップル発表の実績("Actual")/ 誤差が9万台となったMacに「A+」を付けるいっぽう、大きく外したiPhoneについては落第の「F」が付いている]

その結果、私のiPhone販売予想台数は、のちにアップルが発表した実数を下回ってしまった。そしてこの失敗から、私は今回(7-9月期)の販売台数予想にあたって、これまで使ってきた自分のセオリーがいまでも有効かどうかについて改めて考えさせられることになった。そうして、いよいよ予測を発表するとなった時にも、まだ自信を持てずにいた。

今回の予想では、それまでのセオリーを応用し続けるか、それとも新たなやり方で予測するかの選択を迫られた。前者は季節変動の影響を加味したもの、それに対して後者は「すでにゲームのルールが変わっており、いまではiPhoneも販売台数が有機的に増加(自然増)する製品になっている」という前提だった。


前者では、iPhoneの販売台数の伸びを100%以上と仮定している。それに対して、後者ではこの増加率を60〜80%とした。とりあえずここでは90%として試算しているが、ただしこの前提でいいかどうかについてはあまり自信がない。

ふたを開けてみれば、この90%という増加率で導き出した数字が、逆に実際の販売台数を上回る結果になり、誤差も前回とほぼ同様だった。ほかの製品についてはそこそこ正確な予想ができたと思うが、iPhoneについての予想が業績全体の予想の精度を大きく左右した点はいつもと変わりがない。

今回の結果を踏まえて、これまで使ってきたセオリーの有効性について、いまは次のように考えている。iPhone販売台数の変化は、以前にも増して私のセオリーと合致するものになっている。具体的には、次のようなことが言えるだろう。

  1. 全体の生産キャパシティは年率約100%のペースで増加している
  2. iPhoneの新機種購入が1年に1度のサイクルで行われていることから、生産台数の増減にははっきりとした季節変動が見られる。アップルは米国のクリスマス商戦期に供給台数が最も多くなるように、生産台数をコントロールしている。
  3. iPhoneに対する需要は事実上青天井の状態であり、販売台数は生産スケジュールや流通に関する契約(=携帯通信事業者との取り扱い契約)の制約を受けている。

1番目の点については議論の余地もないかと思う。iPhone(の販売台数)は前年対比で3ケタ(%)の成長が続いている。今年の4-6月期は142%増、その前の1-3月期は113%増と、21%増にとどまった7-9月期の結果を補ってあまりあるものとなっている。10-12月期の販売台数は、アップルの経営陣も口にしていた通り、これまでにないほどすごいものになるだろう。

そこで問題になるのは2番目の点だ。ただし次のグラフをみると、前述のセオリーがいまでも有効であることがわかると思う。

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 [iPhone出荷=販売台数と、前期比の増減数/縦軸単位は1000台]

これまで、iPhoneの新機種が投入される前の四半期には、かならず出荷台数が減少してきている。iPadでも同様の変化があったことは前述したとおり。

最後の点については、先日分析したアップルの財務諸表に書かれているとおり、今年1-3月期には製造装置(製造プロセス管理機器)への投資額が減少している。減少額は4-6月期ほど大きくなく、7-9月期のそれとほぼ同程度となっている。「不動産、建物、設備」(Property, Plant and Equipment:PP&E)を予測に使う方法についてはまだ研究中だが、このセオリーの妥当性を支持するものがあるように思える。

ざんげ
今回の販売台数予想では、わたしは自分のセオリーを捨てるという過ちをおかした。これまでなかったようなことが起こっており、それで自分のセオリーの有効性が失われたと考えてそうしたのだった。しかし、この判断は間違っていた。私は増減のサイクルについて深読みしすぎた。iPhoneの流通チャネルの数が増え、品揃えも増えたことから、販売台数の変化に新しいパターンが生じているという考えを受け入れてしまった。それが私のおかした過ちだった。

注:
私たち(アナリスト)が無視していた情報がもうひとつあった。それは、iPhone 4S発表の際に、アップルのティム・クックCEOがある警告を口にしていた、ということだ。同CEOは4日の発表のなかで、iOS搭載端末の累計出荷台数について「ごく最近、2億5000万台に達した」("just been shipped")と言っていた。あの発表の後になって、もう少し正確な台数--2億5400万台が明らかになった。この点については、読者のコメントで知った。私はその返事のなかで、「もし2億5400万台という数字が正しいとすれば、私はiPhoneの累計出荷台数を1300万台減らさなくてはならない」と書いていた。さらに、自分のモデルまで持ち出して、その影響を試算することまでしていた。結局(先に出していた)自分の予想を「修正」することはなかったが、それは新たにもたらされたデータが偽装のためのもので、われわれに何かを伝えるシグナルの意味が込められていたとは思わなかったからだ。これも私の過ちだった。

(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋)

【原文】
How did I get the iPhone number so wrong (part II)

[訳者補足]
アップルの7-9月期業績に関するアナリスト予想の結果については、FortuneのApple 2.0ブログにその精度を比較したランキングがさっそく上がっている。

「過去3年間ではじめて、プロがアマチュアに勝った」("For the first time in more than 3 years, the pros out-analyzed the upstarts")と記事中にあるように、ここ数年は筆者デディウ氏のような独立系アナリストや純粋なアマチュアなど比較的自由に予想を出せる立ち場の人たちがぎりぎりまで強きの見通しを示して「好成績」を挙げる一方、機関投資家などを顧客とするプロのアナリストらはどうしても控えめな数字とならざるを得ず、グループとしてはアマチュアの後塵を拝するという状況が続いていた。

ところが今回は、アップルのiPhone販売が予想外に振るわず、この状況が逆転。もっとも控えめ(少ない)数字を出していた人ほど好結果となり、いっぽう最も強気な数字をあげていたデディウ氏は53人中、iPhoneで最下位、業績全体についても46位に終わった。また強気の予想を出した非プロ(1番目の表、緑の背景となっている部分)の人たちの名前が下位にならんでいる様も、この形勢逆転を見事に示すものと思える。

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