米国第3位の携帯通信事業者であるスプリント・ネクステル（Sprint Nextel：以下、スプリント）は米国時間7日、ニューヨークで「ストラテジー・アップデート」イベントを開催し、同社のLTE網展開に関する計画を正式に発表した。

この計画によると、同社は2012年半ばにLTE網のサービス展開を開始し、同年末までに120都市で、さらに2013年末までにはこれを260以上の市場に拡げることで、あわせて2億5000万人以上をカバーしていくという。このために利用する周波数帯については、同社が所有する1900MHz帯のほか、2013年にサービス停止予定のiDENサービスに使われている800Mhz帯を転用、さらに同社との提携を発表したライトスクェアード（LightSquared）の持つ1600MHz帯に関しても、米連邦通信委員会（FCC）の承認が下り次第利用する意向だという。

スプリントでは「Network Vision Plan」という計画を掲げ、これにもとづいてCDMA、WiMAX、LTEの各方式を利用できるマルチモード対応の基地局を展開していく。またLTE対応端末の投入については、2012年中に12〜15機種をリリースする予定だという。

いっぽう、現在利用中のWiMAXネットワークに関しては少なくとも2012年まで利用を続けるとしたものの、出資先でもあるClearwire（クリアワイヤ）との今後の関係については明確にせず、さらにアップル「iPhone」の取り扱いに関して確約したとされる「今後4年で3000万台以上」という端末購入やそのために必要となる販売奨励金についての事柄には触れなかったという。

いっぽう、この計画発表に伴ってスプリントの財務悪化の懸念が新たに表面化したことを受け、同社の株価は2日間で約25%も下落。Bloombergでは、スプリントの資金繰りに関して、サンフォード・バーンスタイン（Sanford Bernstein）のアナリスト、クレイグ・モフェット（Craig Moffett）氏の「今後2年半で49億ドルの資金を調達する必要がある」との見方を引用し、「同社が今後新たな株式発行を行う結果、株価が下がるのは避けられないだろう」とする野村證券のアナリスト、マイク・マコーマック（Mike McCormack）氏のコメントも紹介している。

Financial Times（FT）によると、スプリントには2012年3月に償還期限を迎える社債が22億5000万ドルあるほか、2013年に18億ドル、2014年にも13億5000万ドルの社債を償還する予定になっているという。これについてアナリストのクレイグ・モフェット氏はFTに対し、「（これまで6〜8.4%程度だった）債権利回りが発表を受けて11%まで上昇している。この利回りで借り換えのための社債を新たに発行すれば、じきに支払い能力への懸念が生じ、利率はさらに上昇する可能性があることから、全額を債権の新規発行でまかなえる可能性は少ない」としつつ、新株発行についても、株主価値の希釈が株価のさらなる低下につながる悪循環への懸念があるため、「スプリントにはよい選択肢がない」としている。

この社債による借り入れを含め、スプリントにはあわせて198億ドルの負債があるいっぽう、同社の手元現金と与信枠はあわせて53億ドル程度とBloombergは記している。

【参照情報】
・Sprint dials up LTE for its 4G future but leaves Clearwire hanging
・Sprint goes LTE: 120 cities with new 4G by end of 2012
・Sprint Nextel tumbles on dilution fears
・Sprint Falls After Saying It Needs Capital
・Sprint seeks to raise capital; investors flee
・スプリントの株価が荒れ模様 - 「iPhone取り扱い」が引き金に
・スプリント、来年前半にLTEネットワークのサービス開始へ（CNET報道）
・スプリント、10月7日に「戦略発表イベント」の予告 - 発表内容をめぐって飛び交う憶測