米国のスタートアップ、Mobisante社(ワシントン州Redmond)が東芝のスマートフォンを超音波検査器にする仕掛けが10月中に市場投入されることになった。
このMobiUSというシステムは、Windows Mobile6.5ベースの東芝TG01に超音波プローブ(測定する部位に接触させる機器)をUSB接続し、専用のアプリケーションをインストールすると持ち運び可能なエコー検査装置になるというもの。上位機種となると10万ドル(1ドル=76.6円換算だと約76万6,000円)する超音波検査器が7,495ドル(約57万4,000円)で入手できる。FDA(アメリカ食品医薬品局)の審査を通った携帯電話ベースの診療機器の市販開始は史上初とのこと。
腹部、心臓、骨盤、小児科、末梢血管、胎児などの超音波画像をスマートフォン画面で確認できるほか、診断やセカンドオピニオンを得るために送信、または、PACS(画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication Systems))にアーカイブを保存することもできる。スマートフォン利用なので、医師の機動力が飛躍的に向上することが期待されている。
FDAの審査(501(k)という市販前許可)を通過したのは2011年2月だが、その後もFDAの各種条件--製品のトラッキング、リコールへの対応方針、ソフトウェアのアップグレード方法などなど--をクリアするのに8ヶ月を要してしまった。そもそも501(k)自体は、既存の医療機器が存在する場合、同じ構造と機能を持つ後発の機器の審査期間を短くするための制度。MobisanteのMobiUS以降、血圧測定器、CTスキャンのビューワなどスマートフォン利用の「医療ガジェット」が続々とFDAの審査を通過しているという。
ドイツのコンサルティング会社research2guidanceは現在、世界のスマートフォンの5%が何らかのヘルスケア用途に使われているが、2015年には30%まで成長すると予測している。アプリケーションの場合、プロトタイプ開発は数日で完了してもFDAの審査には数ヶ月を要し、コストも15万ドル(約1,150万円)かかった例もある。
2012年にはFDAがモバイル・ヘルスケア機器とアプリケーションの規制に関する詳細なガイドラインを発表することが予定されているという。これにより大幅な期間短縮とコスト減が期待され、血糖値、心電図などさまざまな診療機器がスマートフォンとの組み合せで実現されるようになる。
iPhoneやAndroidのスマートフォンの方が普及しているのだが、MobiUSの超音波プローブを接続するにはUSBポートが必要。このため東芝が選ばれた訳だが、Mobisante社によると欧州版でUSBが実装されていても米国版ではほとんどの機種で外されてしまい、大変不満を持っているとのこと。ちなみにMobiUSは2月にバルセロナで開催されたMWC2011でベスト・モバイルヘルス・イノベーション賞(Best M-Health Innovation)を受賞している。
【参照情報】
・Mobile Health Apps Arrive
・The Extravagant Promise of Mobile Health Apps
・Smartphone ultrasound device launches commercially
・The GSMA Announces Winners of the Annual Global Mobile Awards