他社に先駈けてAndroid OSに命運を託した賭けが奏功し、わずか数年間で世界第4位（出荷台数）のスマートフォンメーカーの地位に上り詰めた台湾HTC。最新の市場調査データでは、米国市場で7-9月期にサムスン（Samsung）、アップル（Apple）を抑えて販売台数首位に立ったと伝えられたが、これまで続いてきたこの急成長に「黄信号」が点ったと一部のブログなどで指摘されている。

HTCが31日（現地時間）に発表した第3四半期（7-9月期）の業績は、売上が45.4億ドルで前年同期比79%増加。スマートフォンの出荷台数は前年同期比93%増の1320万台となり、とくに中国市場では同9倍の大幅な増加を記録したという。こうした結果を受け、調査会社カナリス（Canalys）では、HTCがリサーチ・イン・モーション（Research In Motion：RIM/同期の出荷台数1180万台）を抜いて、サムスン（Samsung/同2730万台）、アップル（Apple：同1707万台）、ノキア（Nokia：同1680万台）に次ぐ第4位になったとするレポートを発表している。

Computerworldでは、カナリスのアナリスト、ピート・カニングハム（Pete Cunningham）氏のコメントとして、「HTCの競争力はさらに強まるだろう。HTCから短期的にもっとも脅かされやすいのはノキアで、Symbian端末の売上が減少する中、同社の成功はどれほど迅速にWindows Phone OS搭載端末を量産できるかにかかっている」と記している。

また、HTCが現在中国に建設中の工場が来年前半に操業を開始すると、同社の年間生産能力は4000万台に達することから、さらなる販売台数の増加が見込めるとしている。

これに対しGigaOMでは、HTCが決算発表のなかで、第3四半期の売上の伸びが前四半期比で9%増にとどまったことや、端末の平均販売価格が2010年第4四半期の362ドルをピークに、今年入って低下を続けていること--第3四半期は344ドル--、さらに今四半期の業績について、売上が37億ドル〜40億ドルと前四半期（4-6月期）の水準まで低下し、スマートフォンの出荷台数も1200万〜1300万台にとどまるとの見通しを明らかにしたことなどから、「これまでの彗星のような急成長はもはや期待できない」との考えを記している。

同ブログでは、HTCの潜在的な不安材料として、サムスンの「Galaxy S II」やアップル「iPhone」のような大ヒット商品の不在のほか、独自の「Sense」UI以外にはAndroid陣営内での差別化要因が見あたらない点、さらにWindow Phone OS搭載製品についても先週待望の「Lumia」シリーズを発表したノキア（Nokia）との競争激化が予想されることなどを挙げている。

とくに他のAndroid端末メーカーとの競争については、サムスン以外に、LG電子、ソニーエリクソン（Sony Ericsson）、モトローラ（Motorola）、ZTE、ファーウェイ（Huawei）などのライバルが存在すると同ブログは指摘。さらに、とりわけ中国の2社については、スマートフォンユーザーが急増する中国市場などで中〜低価格帯の製品を中心に出荷台数を大幅に伸ばしてきていることから、今年だけで新たに1000店以上の販売拠点を儲けるなど中国市場での事業拡大に力を入れるHTCにとって、大きな脅威になり得るとしている。

なおTNWでは、先ごろHTCのシェール・ワン（Cher Wang）会長が、市場シェア拡大を目的とした100ドル以下のスマートフォン投入の可能性を示唆したとする新聞報道に関し、同社のウィンストン・ユン（Winston Yung）CFOが決算発表のなかで、この可能性を否定したと伝えている。同CFOは、HTCが今後フィーチャーフォンからの買い換えユーザー獲得を視野に、マス市場向けに200〜250ドルの製品を投入していくと述べたいう。

【参照情報】
・HTC sees Q4 revenue and shipments lower qoq - Reuters
・HTC reports record numbers, sells more phones than RIM - Computerworld
・HTC's meteoric rise is starting to fizzle - GigaOM
・HTC: No low-cost smartphones, we don't want to make "low-quality products" - TNW
・中国のスマートフォン市場、出荷台数で米国に肉薄 - 米ではHTCが首位に（カナリス調べ）