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新型iPadのLTE対応 - 米携帯通信キャリアへの影響は?(編集担当メモ)

2012.03.08

Updated by WirelessWire News編集部 on March 8, 2012, 13:35 pm JST

アップル(Apple)が米国時間7日に発表した「新しいiPad」は、同社製品として初めてLTE網接続に対応したことでも注目を集めている。Android陣営の端末メーカーなどが続々とLTE対応製品を投入するなかで、これまでLTE対応を見送ってきたアップル。そのアップルがようやく重い腰を上げたことで、米携帯通信業界にどんな影響がありそうかといった点に触れた記事をいくつか紹介してみる。

まずNew York Times "Bits"ブログのBrian X. Chen氏は、新型iPadの登場が、LTE網の展開でリードするベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless)に有利に働くとする市場調査会社Ovumのアナリスト、ジャン・ドーソン(Jan Dawson)氏の見方を紹介。その上で、アップルが次に出してくるiPhoneでLTE対応してくることがこれでほぼ間違いなくなったとし、LTE網の展開で出遅れているスプリント・ネクステル(Sprint Nextel)がいまよりもさらに不利な立ち場に立たされる、との考えを記している。

いっぽう、WSJではこれでLTEサービスの普及に弾みが付く可能性が高まったとし、なかでも一番の恩恵を受けそうなのはやはりベライゾンだろうと述べている。現在LTE網のカバー人口がすでに2億人というベライゾンだが、同社のデータ通信サービス利用者(長期契約者)約8700万人のうち、LTEへの切替を済ませているのは「まだ5%程度」。したがって、ベライゾンには、これら既存ユーザーのLTEへの乗り換え、他社ユーザーの新規獲得、さらにいまのところタブレットユーザーの大半を占める「Wi-Fi接続のみ」の利用者が端末買い換えを通じて、携帯通信サービスにも加入するなど、大きな成長の余地が生まれるとしている。

それに対し、GigaOMで通信分野をカバーするKevin Fitchard氏は、「LTEは3Gよりも効率のよいネットワーク」という前提で、当面はLTE加入者が増えるほど通信キャリア側には助かるが、いずれはそれが価格競争につながる可能性もあると指摘。米市場では大手2社ーーベライゾンとAT&T(昨年末のカバー人口、約7000万人)のほか、メトロPCS(MetroPCS:同9500万人)、リープ・ワイアレス(Leap Wireless:同500万人)--データはいずれもWSJが引用したクレディスイスによるものーーもすでにサービスインしており、さらにスプリントやT-モバイル(T-Mobile USA)も展開計画を発表している。このため、いずれは他社より実質的に安い料金設定で差別化を図ろうとする事業者がでてきても不思議はないとしている。

なお、新型iPadに対応するLTEサービスの料金設定については、AT&T、ベライゾンとも従来のデータ通信量と変わらず、AT&Tが月14.99ドル(上限250MB)、30ドル(3GB)、50ドル(5GB)の3本立て、ベライゾンでも30ドル(2GB)、50ドル(5GB)、80ドル(10GB)とやはり3段階になっている。

アップルのフィル・シラー(Phil Schiller)氏はこの日の発表の中で、iPadのLTE通信速度について理論値73Mbpsという数字を挙げていた。実用の場でそれだけの速度が出ることはほとんどないにしても、高速なLTEでは瞬く間にデータ利用量が上限に達してしまう可能性は高く、この点がiPadユーザーに嫌気されるようだと、Wi-Fiのみのモデルを選ぶユーザーの取り込みは難しくなる可能性についての指摘もある。

【参照情報】
What LTE Means for Apple and the Wireless Industry - Bits (NYTimes)
Apple's New iPad a Boon for Verizon? - WSJ
How Apple could screw the U.S. wireless industry - GigaOM
Apple enters the 4G age; will carriers return the favor? - GigaOM
Apple's iPad 4G LTE plan pricing detailed: Watch your speeds! - GigaOM
アップル、「新しいiPad」を発表 - iOS端末で初めてのLTE対応に
新しいiPadは「4G」対応、日本発売は3/16

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