フェイスブック（Facebook）は米国時間9日、スマートフォン向けのカメラアプリ・写真共有サービスを提供するインスタグラム（Instagram）を10億ドルで買収すると発表した。

インスタグラムは、アップル（Apple）のiPhone向けの写真アプリで人気を博し、すでに3000万人以上のユーザーを誇る。また先週にはAndroid OS版の提供を開始し、リリース初日から100万件以上のダウンロードを記録していた。

インスタグラムは先週完了した直近の資金調達で、あわせて5000万ドルをセコイア・キャピタル（Sequoia Capital）やロシアのデジタルスカイ・テクノロジーズ（DST Global）など複数のVCなどから確保していたが、この際の評価額は5億ドルに達していたとWSJなどが伝えており、今回のフェイスブックによる買収額はこの倍にも相当する。

2010年秋に当時スタンフォード大学院の学生だった2人ーーベヴィン・シストロム（Kevin Systrom）氏とマイク・クリーガー氏が立ち上げたインスタグラムには、アンドリーセン・ホロウィッツ（Andreessen Horowitz）などが50万ドルのシードマネーを出資。また2011年前半に実施した最初の資金調達ではベンチマーク・キャピタル（Benchmark Capital）や、ツイッター（Twitter）ならびにスクエア（Square）の創業者であるジャック・ドーシー（Jack Dorsey）氏などから700万ドルを調達、この時の評価額は2500万ドルだったという。

フェイスブックではインスタグラムの買収後も、当面は現状のまま独立した形で運営するとの意向を示している。同社のマーク・ザッカーバーグ（Mark Zuckerberg）CEOは「インスタグラムをフェイスブックに統合するよりはむしろ、その強みと機能を維持し、伸ばしていくことを意識していく必要がある」と述べている。

今回の買収は、インスタグラム側が資金調達を完了した直後ということもあり、フェイスブック側からのオファーという見方が強い。CNN Moneyでは事情を知る関係者の情報として、これが事実とあるとしている。

フェイスブックによる買収は、これまではサービス自体よりも人材の確保を主な目的とした1億ドル以下の規模のものがもっぱらだった。そのため、同社にとって初めてとなるこの大型買収については、急速なユーザー拡大を遂げるインスタグラムの潜在的な脅威を懸念したフェイスブックによる防衛策とする見方も上がっている。

たとえば、CNN Moneyでは、インスタグラムがリリースしたAndroid版アプリが急速にユーザーベースを拡大し、さらに同社が潤沢な資金を手にしたことに対し、フェイスブックが神経をとがらせた結果、買収に踏み切ったとする可能性を指摘。またGigaOMでは、特にモバイル分野でフェイスブックに比べて強みをもつインスタグラムが、フェイスブックにとっては強力な競合相手になる可能性があったとし、同社の台頭をフェイスブックが恐れたためではないかと記している。

ユーザーの急激な増加がつづくインスタグラムだが、具体的なマネタイズの方法についてはこれからといった状況。いっぽうフェイスブックでは、5月以降に予定する株式公開で少なくとも50億ドルを調達すると見られている。

なお、フェイスブックの登録ユーザー数は現在約8億5000万人とされており、そのうちの約半数が携帯電話端末などからの利用者といわれている。

【参照情報】
・Facebook to Buy Instagram For $1 Billion - WSJ
・Facebook to Buy Instagram Photo App for $1 Billion - BusinessWeek
・Facebook Buys Instagram for $1 Billion - NYTimes
・Here is why Facebook bought Instagram - GigaOM
・http://finance.fortune.cnn.com/2012/04/09/did-facebook-panic/ - CNN Money
・写真共有アプリ「Instagram」、Android向けベータ版の登録受付開始
・今度はフェイスブックがヤフーを提訴 - 10件の特許権侵害で
・フェイスブック、MWCで存在感アピール - モバイルウェブの取り組みなどを発表
・フェイスブック、独自のAndroidスマートフォン開発 - HTCをパートナーに（AllThingsD報道）

人気のiPhone向け写真共有アプリ「Instagram」のAndroid版がいよいよリリースされることになったときの記事はこちら

すでに2700万人の登録ユーザーがおり、昨年の暮れにはアップル（Apple）が選ぶ「iPhone app of the year」にも選出されていた。

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