ツイッター（Twitter）は米国時間17日、特許の取り扱いに関して同社がまとめた新たな取り決めを発表。同社が取得した（またはこれから取得する）すべての特許について、「防衛目的以外では利用しない」との考えを示した。

この新たな取り決めは、同社が「イノベーターズ・パテント・アグリーメント」（Innovator's Patent Agreement、IPA）と呼ぶもので、特許の使用に関する決定権を発案者自身に与え、特許が他社への攻撃目的で利用されることを防ごうとする内容となっている。ツイッターは、この取り決めが特許自体に付加され、特許が他人の手に渡った後も、決定権は発案者が残るとしている。これによって、たとえば特許の保有者が発案者の許可なくこれを他社（者）の攻撃に利用した場合には、攻撃の対象となった会社や個人に発案者がライセンスを供与することも可能になるとしている。

同社はこの案を発表したブログ記事の中で、「特許がイノベーションを妨げるために利用されている可能性があるに懸念を抱いている」とし、その懸念払拭のために「IPA」を考案したと説明している。

IPAは、今年中にツイッターが過去に取得したすべての特許に適用される見込み。また、同社はIPAの全文をプロジェクトホスティングサービスのギットハブ（「Github」）に公開しており、他社にもこれを採用するよう呼びかけるいっぽう、ツイッターユーザーからもフィードバックを求めていくという。

特許をめぐるテクノロジー企業間の争いは近年ますます激化しており、グーグルのAndroid OSをめぐる同社とオラクルとの訴訟や、Android陣営の端末メーカー各社とアップル（Apple）との争いなど、多数の企業間で特許訴訟が行われている。

そのほか、特許ポートフォリオ充実のために、各社が大規模な買収を行う例も目立っている。昨年前半には、破産したノーテルネットワークス（Nortel Networks）の知的財産を処分するオークションで、アップル（Apple）やマイクロソフト（Microsoft）、リサーチ・イン・モーション（Research In Motion）などの6社が、ノーテルの保有する6000件を超える特許を落札したが、この際には競合したグーグル（Google）-インテル（Intel）のグループとの入札合戦がエスカレートし、事前の予想を大きく上回る総額45億ドルの金額が付いていた。

また昨年夏には、ノーテルのオークションで敗れたグーグルがモトローラ（Motorola Mobility）を125億ドルで買収する計画を発表したが、この主な狙いはモトローラが保有する携帯通信関連などの大量の特許の取得にあるとされていた。

さらに今年に入っては、経営立て直しに向けた動きを進める米ヤフー（Yahoo!）が、株式公開を控えたフェイスブック（Facebook)を特許権侵害で提訴。それまでシリコンバレーのウェブ企業間で共有されていたといわれる「特許権は主に自己防衛に使用する」との不文律をヤフーが破ったとして一部で話題を呼んでいた。

今回のツイッターの取り決め発表は、こうした一連の流れに一石を投じたものとみられるが、「これが実現・普及されれば、いわゆるパテント・トロールから訴えられるリスクを回避できることなる」との見方（Techdirt）もあるいっぽう、「マイクロソフト、IBM、アップル、オラクル、インテル、アマゾン、グーグルといった大手各社が、これまで自社の事業目標達成の手段として特許を利用してきていることを考えると、ツイッターの提案と呼びかけは絵に描いた餅に終わるのではないか」という懐疑的な声（Forbes）もみられる。

【参照情報】
・Introducing the Innovator's Patent Agreement - Twitter
・Twitter's Revolutionary Agreement Lets Original Inventors Stop Patent Trolls - Techdirt
・Twitter's Patently Absurd Patent Policy - Forbes
・Twitter's new patent pledge: First, do no evil - CNET
・Twitter Pledges More Employee Control Over Patent Litigation - Digits (WSJ)
・アップルらの「包囲網」にグーグルが根負けか - ノーテル知財オークションの真相（編集担当メモ）
・グーグル、モトローラを125億ドルで買収へ - 特許関連強化はプラス、ハードウェアベンダーとの関係は微妙に
・ヤフー、フェイスブックを提訴 - ウェブサービス分野でも特許権訴訟

一方、米ヤフーが所有する10件の特許権がフェイスブックに侵害されているとして、同社を相手取った訴訟を起こしたという記事はこちら

ユーザーがプロフィールを作成する方法や、友人や企業とリンクする方法、ニュースフィード、広告、プライバシー設定、メッセージ送受信など、フェイスブックの「SNSモデル全体」が特許権の侵害にあたると主張しているという。

ヤフー、フェイスブックを提訴 - ウェブサービス分野でも特許権訴訟