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[2012年第21週]スマホの不満は? 増えるBYODを求める声、LTE-Advancedの実証実験

2012.05.28

Updated by Naohisa Iwamoto on May 28, 2012, 17:30 pm JST

2012年第21週は、金環日食の感動と、荒天のスカイツリー開業が印象に残った一週間だった。ワイヤレスジャパン2012の開催一週間前に当たった国内のモバイル業界では、日食やスカイツリーほどの重大ニュースはなく、落ち着いた一週間だった。

スマホはバッテリーに不満、BYODで遅れる日本

まず、この週に発表された興味深い調査結果から紹介していこう。MMD研究所(モバイルマーケティングデータ研究所)は、「スマートフォン端末・キャリアの満足度に関する調査」の結果を発表した。スマートフォンの端末に対しては3分の2近くが「満足」と回答したが、項目別で見るとバッテリーへの不満が突出しており、半数以上が「不満」「やや不満」と応える結果だった。キャリア別で見ると、電波状況はドコモとKDDI(au)が、料金プランはソフトバンクモバイルの満足度が高かった(関連記事:スマホ、電波状況はドコモ、au、料金プランはソフトバンクに「満足」--MMD研究所)。

ビジネスシーンでのスマートデバイス活用状況に関する調査もあった。ジュニパーネットワークスは、日・米・英・独・中の5カ国でモバイル端末ユーザーの動向を調べた結果を発表した。調査を行った5カ国のうち、日本が最も個人所有のモバイル端末の職場での業務利用が進んでいないことが明らかになった。また一方で、BYOD導入を求める従業員の声が日本企業の間で広がりつつあることも判明した(関連記事:「職場でタブレットの業務利用が認められている」のは23%-スマートデバイス利用が遅れる日本の実態が明らかに)。

LTE-Advancedの実験、LTE利用の割引サービス

高速データ通信が可能なLTEと、その後継となるLTE-Advancedのニュースを紹介する。ソフトバンクモバイルは、LTEの後継となる次世代通信システム「LTE-Advanced」に関する実証実験を開始した。実験内容は「複数基地局間協調伝送方式」(ECO-LTE:Enhanced Cooperative-LTE)と呼ぶもので、東京・お台場に3.3GHz帯の基地局を3局設置して行う。分散設置した基地局で複数基地局間の協調伝送の実験を行い、通信品質やスループットを評価する(関連記事:ソフトバンク、LTE-Advancedの基地局間協調伝送をお台場で実証実験)。

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LTEに関連したサービスの新設もあった。イー・アクセスは「EMOBILE LTE」利用者に向けた新しいオプションサービスを提供する。1つはNTT東日本/西日本の「フレッツ」向けインターネット接続サービス「EMOBILE」、もう1つは出会い系サイトなど青少年にとって不適切なWebサイトへのアクセスを制限する「Webアクセス制限」である。また、EMOBILE LTEとセットで固定のEMOBILE光またはADSLサービスを利用すると、月額料金が割引かれるサービスも開始する(報道発表資料:2012年6月よりEMOBILE LTEのサービス内容を拡充
)。

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グローバルからの歩み寄り、グローバルへの提案

グローバルベンダーと日本市場、日本ベンダーとグローバル市場の両面でニュースがあった。エリクソン・ジャパンは、横浜市西区の横浜オフィス内に「エリクソン・ジャパン・テスト・エンバイロンメント」を開設した。日本市場へのコミットメントを一層深めるための施策という。日本国内で顧客となる通信事業者に納入する前のシステムや納入後の設備について、評価用に構築したネットワークを使って各種の検証を行う(関連記事:エリクソン・ジャパン、横浜に日本市場向けの検証施設を開設)。

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一方、NECカシオモバイルコミュニケーションズは、メキシコの携帯電話最大手ブランドである「Telcel」にAndroidスマートフォン「MEDIAS NEC-101T」の納入を開始した。Telcel傘下の販売店などを通じて、2012年6月に販売を開始する予定である。Telcelはメキシコで市場シェア70%以上を占めるブランド。メキシコで今後スマートフォンを中心に携帯電話の成長が見込まれることから、中南米市場を見据えたグローバル展開の足がかりにする。NECカシオのグローバル展開はタイ市場に次ぐ第2弾となる(関連記事:NECカシオの「MEDIAS」、メキシコのTelcelで販売開始)。

タリーズでおくだけ充電、CGM提供会社に年齢情報

この週のこのほかのトピックを紹介していこう。まずはおくだけ充電がより便利になりそうだというニュース。パナソニックグループ エナジー社は、タリーズコーヒージャパンの店舗など約90カ所に、Qi(チー)規格の無接触充電パッドの導入を開始した。Qi規格に対応したスマートフォンやモバイル電源を置くだけで充電が可能になり、モバイル機器ユーザーの利便性が高まる。タリーズコーヒーの27店舗やファミリーマートの35店舗など7法人90カ所で、2012年5月から順次開始し、2013年3月まで設置する予定だ(関連記事:パナソニック、タリーズコーヒーなど90カ所にQiの無接点充電パッドを導入)。

未成年に安心なコンテンツを提供するための取り組みが進む。NTTドコモは2012年6月1日から、新規契約などの手続きや利用者からの申し出で、その携帯電話の主な利用者の氏名、生年月日の情報の取得を開始する。今後、CGMコンテンツ提供会社に利用者の同意のもとで年齢情報を提供することで、コンテンツ利用者の年齢情報を活用したサービス提供につなげる。未成年の利用者がより安心・安全にコンテンツをご利用できるようにする(報道発表資料:CGMコンテンツ提供会社への年齢情報の提供に向けた取り組みを開始)。

画像の認識で新サービスを提供。NECは、スマートフォンなどのモバイル端末のカメラで撮影した画像を活用し、食品・自動車・印刷物などの物体を高精度に認識し、端末の画面上に詳細情報を表示する画像認識サービス「GAZIRU(ガジル)」を提供する。NECが独自に開発した画像認識エンジンを利用し、スマートフォンなどの端末で撮影した画像と、クラウド上や端末内に登録した画像データを照合することで、画面上に物体の名称や詳細情報を表示する(報道発表資料:NEC、モバイル端末を利用した画像認識サービスを発売)。

トラブルもあった。ウィルコムの利用者からKDDIのau携帯電話に宛てた一部の E メールが届かなかったというもの。KDDIでは、障害原因をKDDIのメールフィルタ設備における設定誤りとしている。対象となったのは、「迷惑メールフィルタ」で「なりすまし規制」を有効にしているau携帯電話。2012年5月3日2時0分〜5月23日22時18分にわたって、全国で影響があった(報道発表資料:)。

昨年の第21週のできごと

・盛況だった「Wireless Japan 2011」
・震災時の状況分析、パソコン利用者の今後の対策
・増加する契約、トラフィックの様相
・SuicaのAndroid対応などスマホ向けサービスも進展
・端末購入のサポートや法人向けのサービスも続々

[2011年第21週]Wireless Japanで新技術や新サービスが続々、携帯番号に「070」を検討

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。