今月はじめに一般広告主向けに公開されたフェイスブック（Facebook）のモバイル向け広告について、デスクトップ版に比べてクリックされる確率が高いとする複数の調査結果が報告されている。

フェイスブックは今月5日、友人らの近況と並んでニュースフィードに表示される広告「スポンサー記事」（「Sponsored Stories」）のモバイル版を一般広告主向けにリリースした。

これを受け、複数の広告代理店が過去2週間ほどの広告掲載結果を分析したところ、モバイル版「スポンサー記事」のクリック率はPC版「スポンサー記事」と比較して2倍弱、またフェイスブックのPC広告全体に比べると13倍以上に達することが明らかになった。また、表示回数1000回あたりの価格（CPM）を比較すると、モバイル版「スポンサー記事」はPC版「スポンサー記事」の2倍以上、フェイスブックのPC広告全体の11倍という結果となったという。

また、フェイスブック広告を扱う広告代理店TBG Digitalが3億回近い広告表示回数を分析したところ、PC版「スポンサー広告」のクリック率が0.59%であったのに対し、モバイル版は1.14%であったという。さらに1回のクリックあたりの単価も、デスクトップPCが0.63ドルに対し、モバイルの場合は0.86ドルであったという。

同様に、6月8日から18日にかけて発生した計700万回の表示回数データを分析した広告代理店のSocialCodeによると、PC版「スポンサー広告」のクリック率が0.33%であるのに対し、モバイル版は0.79%だったという。また、表示回数1000回あたりの価格についても、モバイル版は7.51ドルで、フェイスブック広告全体の平均である1.62ドルを大幅に上回った。

このほか、AdParlor、Spruce Mediaといった広告代理店のデータからも、同様の傾向がみてとれる。

ただし、モバイル広告の場合、広告をクリックした後にその記事やファンページの「いいね！」ボタンを押す割合が低いことから、SocialCodeのアディ・コナー（Addie Conner ）氏は「別のキーを押すつもりで誤って広告をクリックしたユーザーが一定数いる可能性も考えられる」と指摘している。

なお、デスクトップ広告に比べてモバイル広告のクリック率が高いという傾向は、Twitterをはじめ他の様々な媒体でもみられるものだという。ただし、クリック率が高くても、それが実際に広告主が販売する商品の売り上げにつながらなければ意味がないとする指摘もある。

また、こうした単価とクリック率の高さは、フェイスブックにとってもモバイル広告が収入源として成長する可能性を示唆するものだが、同時に十分な売り上げを確保するにはかなり多くの広告表示回数が必要となる。一方、広告表示量や回数が多すぎるとユーザー離れが起こるおそれもあり、適切な掲載量の見極めが重要となる。

eMarketerの試算によると、米国のモバイル広告の市場規模は昨年から今年にかけ80%成長し、26億1000万ドルに達するが、そのうち半分はグーグル（Google）の懐に入る見込みだという。一方、フェイスブックのモバイル広告への取り組みは比較的遅く、投資家の間ではフェイスブックの今後を不安視する声もきかれた。モバイル端末からのアクセスが増加する中。同社の株価は先月のIPO公開時の38ドルから一時25ドルにまで値下がりしたが、モバイル版「スポンサー記事」のリリース以来持ち直し、現在の31.5ドルにまで回復している。

【参照情報】
・Study: Facebook Mobile Ads Have Higher Click-Through Rates Than Those on PCs - AdAge
・They Work! Facebook Mobile Ads Are Clicked 13X More, Earn 11X More Money Than Its Desktop Ads - TechCrunch
・Facebook ads are clicked more on mobile than on the web - The Verge
・フェイスブック、位置情報を使ったモバイル広告技術を開発（Bloomberg報道）
・フェイスブック、広告効果への疑問の声に反撃開始
・フェイスブックに「ビッグナンバーの壁」- 米では利用者数・利用時間とも伸び鈍化