グーグル（Google）の20番目の社員であり、経営役員の一人として検索やGmail、地図情報など主要なサービスを担当してきたマリッサ・メイヤー（Marissa Mayer）氏が、米国時間16日に同社を辞職し、翌17日よりヤフー（Yahoo）CEOに就任することが明らかになった。

メイヤー氏は、グーグル創業翌年の1999年に、初の女性エンジニアとして同社に入社。検索事業およびユーザー・エクスぺリエンス担当の副社長をつとめたあと、2010年よりローカル情報と地図担当の副社長をつとめていた。また、メディアや会議などへの公の場に姿をみせることも多く、グーグルの顔としても活躍してきていた。さらに今年4月には米小売最大手ウォールマート（Wal-Mart）の社外取締役にノミネートされるなど、社外からも高く評価されていたという。

しかし、グーグルでは2011年にラリー・ペイジ（Larry Page）氏がCEO就任、これに伴ってメイヤー氏の職責と重複するローカル情報と地図担当の上級副社長にジェフ・フーバー（Jeff Huber）氏が就任し、メイヤー氏の一段上のポジションに就いていた。今回の話をスクープしたNew York Times（NYTimes）では、メイヤー氏がこのような人事に満足しておらず、グーグルではさらなる昇進の道が見えづらかったのではと推測している。

メイヤー氏がヤフーCEO職の打診を受けたのは、6月半ばだという。受諾は「比較的簡単な決断であった」とNYTimesに同氏は語っている。

メイヤー氏はヤフーで、グーグルやフェイスブック（Facebook）といった競合他社に押され、1990年代後半の栄光を失いつつある同社の経営立て直しにあたることになる。いまだ7億人以上の利用者を擁するヤフーのサービスに対しては、「プロダクトの質の面でグーグルやフェイスブックに劣っている」（ReadWriteWeb）といった指摘もみられる。メイヤー氏はグーグルの副社長として主要製品のユーザー・エクスペリエンスに責任をもち、1000人以上のプロダクト・マネージャーを率いた経験をもつ。同氏の強みが生かせれば、同社復活の可能性があると同記事は指摘している。

ヤフーでは近年、CEOの交代劇が続いており、1995年の創業以来昨日までの間にCEOを務めた人物は7名にのぼる。

2001年、初代CEOのティム・クーグル（Tim Koogle）氏が辞任し、テリー・セメル（Terry Semel ）氏がその後任に就任した。その後2007年に共同創業者のジェリー・ヤン（Jerry Yang）氏がCEOに就任したものの、2009年に辞職している。同年その後を引き継いだキャロル・バーツ（Carol Bartz）氏は、経営陣の期待に沿う成果を出せずに2011年に解任され、CFOのティム・モース（Tim Morse）氏が暫定的にCEOを兼任していた。

最近では、今年1月にスコット・トンプソン（Scott Thompson）氏がCEOに就任したものの、5月に学歴詐称問題により解任され、その後ロス・レヴィンゾーン（Ross Levinsohn）氏が暫定CEOをつとめていた。

共同創業者のデビッド・ファイロ（David Filo）氏はNYTimesに対し、過去数年間の間、「ユーザー・エクスペリエンスに対して十分に注意を払うことができていなかった」と話している。同氏は「基本に立ち返る必要がある」と述べ、メイヤー氏の就任に期待をよせる。また現在は大手ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ（Andreessen Horowitz）のパートナーとして活躍するマーク・アンドリーセン（Marc Andreessen）も、「ヤフーが、メディア事業・広告セールスに重点をおく企業ではなく、製品中心主義を志向していることの表れ」としてメイヤー氏のCEO任命を前向きに評価。「これはシリコンバレー全体にとって、とてもわくわくすること」と述べたとFortuneは伝えている。

【参照情報】
・Google's Marissa Mayer Becomes Yahoo's Chief - NYTimes
・Great Hire: Marissa Mayer Is Just What Yahoo Needs - ReadWriteWeb
・Marc Andreessen on Yahoo's new CEO - Fortune
・Yahoo! Appoints Marissa Mayer Chief Executive Officer - Yahoo
・敵対から同盟へ - ヤフーとフェイスブック、特許問題を解決