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次世代技術「LTE-Advanced」が1人1日1GB時代を救う--ノキア シーメンスが説明会開催

2012.11.13

Updated by Naohisa Iwamoto on November 13, 2012, 19:05 pm JST

ノキア シーメンス ネットワークス(以下、ノキア シーメンス)は2012年11月13日、LTEの次世代の通信技術である「LTE-Advanced」の技術動向などを解説する記者説明会を開催した。モバイルブロードバンドのトラフィック増加への対応に、LTE-Advancedが有効な技術であること説明した。

▼ノキア シーメンス日本法人のJP・タカラ社長
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記者説明会は、「eXperience Day 2012」と題した同社の顧客向けイベントに併せて開催した。まずノキア シーメンス日本法人の代表取締役社長に10月に就任したばかりのJP・タカラ氏が最初に登壇し、「モバイルのデータ通信量はどんどん増加している。現在は1人のエンドユーザーが1カ月かけて1GBのデータを消費しているが、その1GBを1人が1日で使うような時が来る。そうした時代に対応できるよう、モバイルブロードバンドのスペシャリストとしてノキア シーメンスは必要なソリューションを提供していきたい」と挨拶した。タカラ社長は、LTE時代の重要ターゲット市場として、日本、韓国、米国の3カ国を挙げ、「日本では、品質に対する要求が非常に高い。ノキア シーメンスは今後ともネットワークが提供する品質でもリーダーでありたいと考えている」と語った。

引き続き、ノキア シーメンス ネットワークス研究所 無線システムパフォーマンス特別研究員のハリー・ホルマ氏がLTE-Advanced(参照情報)の動向を解説した。まず世界で導入が進むLTEについての現状を「全世界で、加入者は2011年からの1年間で400%と急増している。加入者数も5000万人を突破した。LTEは、導入期からマスマーケットへと移行してきている」と説明した。LTEの主要マーケットの1つである韓国ではすでに20%程度の端末浸透率があり、それに次ぐ米国や日本でも5%程度にまで普及が進んでいることを示し、「魅力的なデバイスやVoLTEなどの新しいサービスが市場を牽引していく」との見方を示した。

ビデオなどのデータ量の多いコンテンツの普及に加え、スマートフォンやタブレットなど複数の端末を1人が複合的に使うようになると、モバイルのデータ通信量は飛躍的に増える。ホルマ氏は、2020年までに現在の40倍にも上る1人が1日当たり1GBのデータ通信を行うようになるとの数字を示しながら、LTEよりも大容量の通信が可能なLTE-Advancedへのスムーズな移行を考える必要があると説く。LTE-Advancedは、LTEとの下位互換性を備える次世代の技術で、1Gbps以上のデータ通信速度を実現できる。

▼1Gbps以上のデータ通信速度をLTE-Advancedが実現することを説明するハリー・ホルマ特別研究員
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ホルマ氏は、LTE-Advancedのキーとなる技術として、「キャリアアグリゲーション(参考情報)」「MIMO(参考情報)」「システム連携」「HetNet」を挙げた。キャリアアグリゲーションは、複数の周波数帯域を束ねて使えるようにする技術で、連続しない周波数帯域を使って大容量のデータ通信を実現できるもの。「キャリアアグリゲーションを使うことで、最大100MHzといった広い帯域を使って高いピークレートのサービスを提供できる」(ホルマ氏)。複数のアンテナを使って通信速度を高められるMIMOや、無線LANやWiMAXなど他のシステムとのシステム連携、マクロセルからピコセルやフェムトセルまでを協調させてサービスを提供するHetNet(ヘテロジーニアス・ネットワーク)(参照情報)と併せて、LTE-Advancedにより大きな通信容量を得られると説明した。

ホルマ氏は、スマートフォンなどの端末側のカテゴリーについても言及した。「現在は20MHz帯域で下り最大100Mbps〜150Mbpsのスループットをサポートしているが、LTE-Advancedでは20MHz帯域を2つ束ねたキャリアアグリゲーションや4×4 MIMOを利用することで300Mbpsの実現が可能。理論的には100MHz帯域で8×8 MIMOを使うと、3Gbpsという超高速通信も可能になる」と語る。

実際、ノキア シーメンスでは商用の基地局装置である「Flexi Multiradio 10 BTS」を使って、キャリアアグリゲーションのテストを行なっているという。「FDDで100MHz帯域と4×4 MIMOを採用した場合には1.4Gbps、TDDで60MHz帯域と8×8 MIMOを採用した場合には1.6Gbpsのスループットが得られた」(ホルマ氏)。

LTE-Advancedは、LTEの標準である「Release 8」「Release 9」に続く「Release 10」「Release 11」として標準化が進められている。ホルマ氏は、「Release 10は2011年6月に標準化が完了、Release 11が2013年3月に固まる予定。実際には、スペックが固まってから商用化まで2年ほどの時間が必要になる。Release 10に準拠したLTE Advancedの最初の商用サービスは2013年の中盤ぐらいには提供できるのではないかと考えている」と説明し、1人が1日に1GBといった大量のデータ通信を行う時代への対応が進んでいることを示した。

【報道発表資料】
2020年に1人当たり1GB per Dayと予測されるモバイルデータの急増に対応するLTE-Advanced、VoLTE、スモールセルなど最新ソリューションを発表

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。