[2013年第5週]キャリアーの3Q決算出そろう、障がい児支援や起業支援の試み
2013.02.04
Updated by Naohisa Iwamoto on February 4, 2013, 12:00 pm JST
2013.02.04
Updated by Naohisa Iwamoto on February 4, 2013, 12:00 pm JST
この週には、大手3キャリアーの2012年度第3四半期(2012年4月〜12月)の決算がそろって発表された。3社とも増収を確保し、それぞれの成長戦略を描く。ソフトバンクモバイルの障がい児支援、KDDIの新サービス起業支援など、社会へのフィードバックを目指したプロジェクトについての発表も相次いだ。
▼2012年度第3四半期の3社の決算概要
NTTドコモの第3四半期決算は、営業収益が3兆3708億円で、前年同期比6.2%の増収となった。パケット収入が前年同期比で7.7%増に、総販売数も前年同期比14.0%となり機器販売収入も増加し、収入を押し上げた。一方で、営業利益は7022億円と前年同期比5.6%の減少となり、増収減益の決算となった。機器販売費用の増加や子会社関連費用の増加が影響し、収益を圧迫することになった。iPhone 5の影響による不調からは、物量を投入うした冬モデルの発売で立ち直る兆しが見えているとして、今後の成長を描く。LTEサービス「Xi」では、下り最大112.5Mbpsのサービスを2013年6月に50都市で利用できるようにするほか、2013年度には150Mbpsのサービスを提供することを明らかにした(発表資料:NTTドコモ 2012年度第3四半期決算)
KDDIは、増収増益の決算。10月〜12月の第3四半期だけを見ると、前年同期比で40%の大幅増益を確保したほか、パーソナルのモバイル通信量収入も増収に転換した。こうした好調ぶりから、4月〜12月の通期でも業績は好転している。営業収益は2兆7106億円で前年同期比2.5%増、営業利益は3956億円で前年同期比3.0%増となった。周波数再編コストが解消したことも増益の要因となっている。auスマートバリューによる固定・モバイルの連鎖拡大、auスマートパスによるARPU拡大の効果も明らかで、15カ月連続のMNP純増という数の効果と併せて成長ぶりをアピールした(発表資料:KDDI 2013年3月期第3四半期決算)。
ソフトバンクは営業利益が前年同期比12.6%増の6001億円へとなり、8期連続の最高益を叩きだした。営業利益の額ではKDDIの3956億円を大きく引き離し、NTTドコモの7022億円に迫る勢い。営業収益は2兆5097億円で前年同期比4.7%の増収だった。こうした好調の背景として、イー・アクセスの子会社化により国内で4000万回線の目標を達成したことや、純増数で国内トップを走ること、iPhone 5の好調ぶりなどを挙げる。さらに、データ収入の大幅増加や、ARPUが増加に転じたことなどが収益構造の下支えになっている(発表資料:ソフトバンク 2013年3月期 第3四半期決算説明会)。
===
キャリアーによる第三者の支援プロジェクトについての発表も相次いだ。1つはソフトバンクグループが東京大学先端科学技術研究センターと行っている「魔法のじゅうたんプロジェクト」。携帯電話、スマートフォン等の情報端末活用が障がいを持つ子供たちの生活や学習支援に役立つことを目指したものだ。東京大学先端科学技術研究センターENOSホールで成果報告会が開催された。基調講演に立った東京大学先端科学技術研究センターの中邑 賢龍教授は、タブレットを使った教育について、「使い方を教えるのではなく、子供の能力の一部として組み込むこと」「必要な子供に与えること」が大切だと述べた(関連記事:障がいを持つ子供たちの生活の中にモバイル端末を〜「魔法のじゅうたんプロジェクト」成果報告会)
KDDIは、グローバルに通用するインターネットサービスを作り出す起業家・エンジニアを支援するインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」を実施している。2011年6月からスタートしており、このたび第4期のキックオフミーティングにあたる「KDDI ∞ Labo 4th MEETing」が開催された。現在までに参加した3期14チームは、すべて期間内にサービスを完成し、au Market、auスマートパスでサービスを提供している。KDDIの田中 孝司代表取締役社長は、KDDI ∞ Laboは赤字だが志の高い若いエンジニアを応援するために「もっとお金を使います」と宣言し、会場からは拍手が上がった(関連記事:「もっとお金を使います!」宣言も飛び出した、KDDI ∞ Labo 4th MEETing)。
災害時の情報確保に向けた取り組みも発表された。京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、災害時にケーブルテレビを応急復旧するためのシステムの実証実験を実施する。ケーブルテレビの幹線伝送路設備が被災したときに、無線で応急復旧するためのシステムで、2013年2月から宮城県気仙沼市で実証実験を始める。この実証実験は、KCCSが総務省の研究開発を受託して行なっており、無線による応急復旧システムの有効性の検証と実用化を目指す(関連記事:KCCS、災害時に無線でケーブルテレビを応急復旧する実証実験を気仙沼で実施)。
===
その他、この週のトピックを見ていく。NTTドコモは、コマース事業でのファッション分野への事業拡大を目的として、ファッションサイト「MAGASEEK」などを運営するマガシークの株式公開買付けを実施すると発表した。マガシークは、伊藤忠商事の子会社で、運営するMAGASEEKはファッション分野では有数のECサイト。マガシークを子会社化することで、ドコモは「dショッピング」のファッション分野での事業を拡大する(関連記事:NTTドコモがファッションECに事業拡大、伊藤忠子会社を子会社化)。
ソフトバンクテレコムと西菱電機は、全国のタクシー、トラックなどの商用車に向けた車載用のIP無線サービスの提供を始めた。ソフトバンクモバイルの通信サービスを利用し、全国をエリアとしてIP方式による無線通信・通話が可能になる。利用するには、ソフトバンクモバイルの車載無線機「SoftBank 201SJ」(西菱電機製)を利用する。通信インフラとしては、ソフトバンクモバイルの3Gデータ通信サービス(W-CDMA、2.1GHz帯)を使うため、これまでの業務用無線で必要とされた無線免許申請や無線資格従事者による工事が不要で利用できる(関連記事:ソフトバンクテレコム、車載用のIP無線サービスを提供開始、動態管理も)。
富士通がバッテリーの持ちを高めたタブレット端末を発売する。10.1インチのフルHD液晶を搭載したWi-Fiタブレット端末「ARROWS Tab Wi-Fi FAR70B」で、超急速充電と大容量バッテリーの採用で、電池の持ちの心配することなく利用できる。超急速充電は、同社の従来型タブレット端末の約2.5倍の容量を充電できる。バッテリーも、新機種では10080mAhと従来機比約1.5倍に強化した。ディスプレイには1920×1200ドットとフルHDを超える解像度の高精細液晶を、CPUには1.7GHzクアッドコアの「NVIDIA Tegra 3」を搭載した(関連記事:富士通、超急速充電と大容量バッテリー搭載のフルHDタブレット)。
最後に、キャンペーンの延長の話題。ソフトバンクモバイルは、「スマホタダ割」や「テザリングオプション」など、提供中のキャンペーンやオプションサービスの申し込み受付期間を延長すると発表した。また、期限付きで提供していた「スマホ下取り割」は、今後は申し込み受付期間を設けずに継続的に実施していくという(関連記事:ソフトバンク、提供中のキャンペーンなどの申し込み受付期間を延長)。
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。