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高齢者の脳を若返らせる運転ゲーム

2013.09.25

Updated by Kenji Nobukuni on September 25, 2013, 17:00 pm JST

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日本では75歳以上で運転免許証の高齢者講習を受けるに当たって、講習予備検査というテストを受けなければならない。記憶力や判断力が衰えていないか確認するためのテストで、当日の日付や時間を質問されたり、見せられたイラストを記憶して質問に答えたり、時計の文字盤に時刻を示す針を描かされたりするらしい。検査結果が悪くて、記憶力や判断力が低くなっていると判定されても、警察は医療機関ではないから免許の更新だけはできる。ただし、信号無視など特定の違反を行っていたり、更新後に行ったりすると、医者に行って認知症かどうか診断してもらい、診断書を警察に提出しなければならない。認知症と診断されれば免許取り消しだ。

脳は、年齢に伴って衰える一方で、若返ることはないというのが一般的な考えだが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者グループは、高齢者の認知制御を再活性化させるテレビゲームを開発した。

ニューロレーサー(NeuroRacer)と名づけられたゲームは、画面上の自動車を運転しながら、ときどき表示される標識に対応しなければならない。特定の標識にはボタン操作が必要で、それ以外はボタンを押してはならない。運転のタスクとボタン操作のタスクを同時に行うマルチタスクをこなすためには、脳のワーキングメモリー(作業記録)を活性化しなければならない。実験ではまず60歳から85歳の180名の高齢者にニューロレーサーで遊んでもらい、年齢によりマルチタスク実行能力の低下が見られることを確認した。次にグループを3つに分けて、1グループはニューロレーサーのマルチタスク版(トレーニングモード)で、1グループはシングルタスク(運転のみ、あるいは、標識のみ)版で4週間、延べ12時間プレーしてもらい、1グループは何もしなかった。運転と標識を同時にやらされた高齢者グループのみ、認知制御の向上が見られたという。正確な表現ではないかも知れないが、部分的に脳が若返ったと言えそうだ。

どんなゲームでもよいということではなく、マルチタスクを脳に強いるよう設計されたゲームでなければならない。ニューロレーサーはある種の脳機能に障碍を持つ患者のトレーニングのため1年以上の時間をかけて設計、開発されたらしい。

松嶋菜々子がCMに登場した人気ソフト「脳をきたえる大人のDSトレーニング」はニンテンドーDSを成人が購入するのを促した2005年のヒット作だったが、超高齢社会を迎えた日本では、楽しみながら脳の老化を防ぐことができるゲームに対する需要がこれからますます高まるものと思われる。

【参照情報】
NeuroRacerの研究プロジェクト
Can this driving video game rejuvenate your brain?
Brainpower of elderly is boosted by video games: Just 12 hours playing dramatically improved multi-tasking ability, memory and attention span

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信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。 訳書:「Asterisk:テレフォニーの未来