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社会のイノベーションに不可欠な女性とICTの存在とは

2014.03.31

Updated by Yuko Nonoshita on March 31, 2014, 01:00 am JST

日本におけるICTを活用したイノベーションの推進を目的に、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)とグーグルが2013年7月に立ち上げた共同プロジェクト「Innovation Nippon」では、新たに女性の活躍をテーマにした「Wing (Women & Innovation Networking:ウィング)」を発足。その活動開始を記念するイベントが、3月14日にイトーキ東京イノベーションセンター SYNQAで開催された。

ウィングでは、女性たちこそが21世紀のイノベーションをリードする存在であるとし、活躍するための環境整備や、問題意識を共有するネットワークを構築するとしている。課題の提議と解決に向けた議論によって、具体的な政策提言を行い、その活動基盤にあるのがICTだとしている。本イベントでは、ICTを活用してさまざまなシーンで活躍する女性たちから、さまざまな活動事例が紹介された。

イベントの冒頭では、GLOCOMの渡辺智暁氏、グーグルの山口琢也氏、イトーキの谷口政秀氏、経済産業省経済産業政策局の小林佳菜氏らがあいさつを行い、「テクノロジーの進化はドラスティックだが、女性の活用についてはまだ心もとなく、そのための研究を進めて行くプロジェクトになってほしい」とのコメントが寄せられた。

制度とテクノロジーによる女性月用支援を

基調講演「21世紀日本の女性とICT & イノベーション」では、衆議院議員の野田聖子氏が、女性の活用を成長戦略に掲げる政府の方針について、「2020年に30%という高いゴールを設定しながら、現時点で達成のための行程表がまったく出されていないのが現実」とコメント。「相当なショック療法が必要で、今から始めなければ100年後の未来はない。女性側も覚悟を持って参加してほしい」と述べた。男女間格差を是正するクォータ制や優遇措置も必要であり、合わせて待機児童ゼロより保育全入が望ましいとも。国際男女格差レポートが世界105位と先進国最下位という状況も法律が変われば一気に改善されるとしている。野田氏は17年前に郵政大臣に就任した際に、インターネットの定額制を導入させた人物でもある。一方でテレワークの導入では、男性主導の発想で失敗に終わらせてしまった反省もあり、「働く女性が増えた今こそICTは有用に活用でき、イノベーションにもつなげていけるのではないか」と語った。

企業事例報告では、グーグルのマーケティング本部長を務める岩村水樹氏が、同社の女性支援プログラムなどについて紹介した。Women in leadership at Googleという、出産後の職場復帰のアドバイスなどを行う、社員同士のサポートグループがあり、元社員で現在Facebook COOを務めるシェリル・サンドバーグ氏も参加していたという。活動は幅広く、インドでは女性のインターネット利用率が低いことから、電話サポートを行ったり、起業をめざす女性が赤ちゃん連れで参加できる勉強会 Baby friendly start-up school なども実施。理工学部系のカリキュラムが男性中心であることを改善するために、女子高校生に早くからコンピュータサイエンスに触れてもらえるプロジェクトなども開催しているそうだ。岩村氏は「結婚、出産、介護、パートナーの転勤など、辞めるイベントが多い女性が働く環境を、テクノロジーで解決し、力を10倍以上に引き出すことができるはず」とコメントした。

簡単には変わらない状況を変える鍵は「多様性」

後半のパネルディスカッションは、Wingプロジェクトのリーダーを務めるGLOCOMの砂田薫氏をモデレーターに、4人の女性が参加した。FabLabKamakuraの渡辺ゆうか氏は、世界に拡がる市民工房のFabLabでの活動について紹介。21世紀先進国のための新しいエンジニアが求められており、WEB、FAB、プレゼンテーションが必要な3つのスキルになると提言。FabLabに参加する女性も多く、実際に手を動かす経験が大事だとコメントしている。同じく、FabLabを関内で運営し、ヨコハマ経済新聞などを運営する横浜コミュニティデザイン・ラボの理事である宮島真希子氏も、女性こそICTをより有効に活用できるとコメント。女性は傷つきやすいが、それゆえにさまざまなニーズに気づき、作る主体へと転換することでイノベーションを起こせるのではないかと語った。

コペンハーゲンIT大学からGLOCOM客員研究員として参加した安岡美佳氏は、北欧型のICTが注目されているが、中でもデンマークは、参加型デザインと女性の活用が大きな特徴になっていると説明。前提として、オープンディスカッションやコミットメントなどのキーワードで合意性が生まれやすい環境が築かれており、創造性やイノベーションとの親和性が高いこと。男性にとっても性に偏りがない職場環境が、結果的にバランスの良さと多様性をもたらしているのではないかとコメントしている。経済産業省の小林佳菜氏からも、女性採用の経済効果は日本でも数字で証明されており、女性を採用後に数字が伸び、特に育児介護支援に取り組む企業の生産性は2.2~2.5倍の開きがあると説明した。女性の起業は女性の雇用にダイレクトにつながることから、来年度からの支援を予定していることも紹介された。

▼後半のパネルディスカッションでは、(写真左から)Wingプロジェクトの砂田薫氏をモデレーターに、FabLabKamakuraの渡辺ゆうか氏、横浜コミュニティデザイン・ラボの宮島真希子氏、コペンハーゲンIT大学の安岡美佳氏、経済産業省の小林佳菜氏が、それぞれ今後の課題と提言を述べた。
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今後の解決すべき課題としては、既存の価値観を変える必要があり、就業時間を短くして社会に参加する時間を増やす、テレワークなどをもっと活用する、といった意見が出された。改善ではなく革新を生みだすにはダイバーシティは不可欠であり、女性の採用はその第一歩として、好循環を生み出すきっかけになるとしている。ただし、急に意識を変えるのは難しく、「北欧では60~70年代から始めたから今の姿があり、年配の世代は日本と同じような価値観も少なくない」と安岡氏が説明。「地域活動でも熱意があるからこそ意見のぶつかりあいは大きい」という宮島氏は、「暗黙の了解にたよらず、相手に好奇心や関心を持つところから始めるのが大事」とコメントした。

政府への提言としては、渡辺氏が「ICTにかかわらず国の予算はハードウェアに偏りがち。海外でも状況は同じで、高価で使われない機材が山のように埃をかぶっており、壊れるモノより、ずっと続く人の育成をもっと支援すべき」とコメント。そうした視点を変えるためには、他でどのような活動をしているかを知ることが必要であり、「セクター間の交流を勧めるような施策が必要では」と宮島氏が意見を述べた。安岡氏からも、「女性の働く環境を変えたいならば、時間の経過、女性の強い主張、政治的強制力という3つが必要」とし、そう簡単に状況は変わらない、だからこそ中長期的な視野が必要だという点で、参加者の意見が一致した。最後に、行政が企業の女性の登用度合いを見える化し、なでしこ銘柄を扱う企業を発表するなど、情報公開を積極的に行っていくと小林氏が発表したところで、シンポジウムはしめくくられた。

【参照情報】
女性が21世紀のイノベーションをリードするWingシンポジウム ~女性、デザイン、ICT & イノベーション~ イベント公式ページ
Innovation Nippon 公式ページ
Women in leadership at Google 紹介ページ

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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