タイの通信事業者Trueが4G(LTE)への加入が順調なようである。2014年4月時点で25万人の加入者を獲得している。2013年5月からLTEを提供しており、2014年中には100万加入を目指している。LTE普及の背景として同社では2.1GHzの周波数帯を3Gとして利用しないで、4G(LTE)に用いたことがあげられる。
日本に比べるとまだまだLTEの加入者数は少ないが、それでもバンコクを中心にあらゆるところで同社の4G(LTE)のキャンペーンを見かける。「The first 4G LTE network in Thailand(タイで初の4G LTEネットワーク)」が謳い文句である。
人口約6,600万のタイで携帯電話の加入者数は約9,000万で人口普及率は140%と高い。そして2Gの利用者がまだ非常に多い。バンコクではスマートフォンが急速に拡大し、多くの人が利用している。スマートフォンで利用するのはLINEやTwitter、FacebookなどのコミュニケーションやSNS、ゲームや動画などで3Gでも十分である。またバンコクではWi-Fiもあらゆるところに敷設されている。
Trueの利用者のうち約300万人がすでにLTE対応のスマートフォンを保有していると同社では推測している。つまり端末はLTE対応していても、実際に挿入しているSIMカードは2Gまたは3Gである。
そのような中で高速回線LTEの魅力をアピールして加入者を獲得するのは容易なことではない。それでも一度LTEの高速回線に慣れたユーザーはそのスピードを享受している。現在はTrueのみがLTEを提供し、それを差別化としてアピールしているが、今後はAISやDTACの他事業者もLTEで攻勢を仕掛けてくるであろう。
タイのような成熟市場である中進国において、Wi-Fiもある程度整備された国でLTEはどのように普及し利用されていくのか注目である。
▼タイの主要携帯電話事業者
(公開情報を元に筆者作成)
【参考動画】TrueのLTE広告。高速化支援のスピードをアピールしている。
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【参照情報】
・Thiland's True Move Targets 1 Million 4G Subscribers
・True
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。