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電力供給や高速通信もケーブルレスで、非接触のソリューションの広がり──ワイヤレスジャパン2014

2014.06.05

Updated by Naohisa Iwamoto on June 5, 2014, 12:00 pm UTC

5月28日〜30日に開催された「ワイヤレスジャパン2014」「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2014」では、非接触の電力供給や通信のソリューションについての展示も数多くあった。スマートフォンの「おくだけ充電」など、非接触のソリューションは一部で実用化されているが、一層の広がりを感じさせる展示や講演があった。

情報通信研究機構(NICT)のブースでは、シート媒体を使って通信と給電の双方を同時にこなす技術が展示されていた。マイクロ波をシート内に閉じ込め、シートに触れたカプラーに対して通信と電力供給ができる技術で、シートの上ならば位置合わせが不要で給電できる。デモではタブレットや照明機器にシートから給電する様子を示しており、「タブレットならば充電しながら通信もできて利便性が高まる」(説明員)という。現在の技術で通信は500Mbps程度まで、電力供給は10W程度まで対応する。給電の効率を向上させることや、大きな電力に対応できるようにすることが今後の課題という。将来的には電気自動車への給電も視野に入れて研究をしている。

▼シートからタブレットに給電(左)、湾曲させたシートの上にカプラーを少し離して設置して、照明器具に給電しているデモ(右)
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東芝のブースでは、近接無線技術の「TransferJet」をスマートフォンに実装した端末で、非接触の高速通信のデモを行っていた。TransferJetは最大560Mbpsという高速通信が可能な近接無線技術で、これまでにもデジタルカメラなどに搭載されてきた。東芝ではTransferJet規格に対応した5mm角程度の小型のモジュールを開発しており、これをスマートフォンに実装してTransferJet対応のデモを行った。高速性を活かし、動画ファイルでも瞬時に転送できるほか、ごく接近した端末間で通信する近接無線技術の特性から安全性が保たれることをアピールしていた。デジタルサイネージやデジタルキオスクなどで採用されれば、大容量のコンテンツを安全に短時間でダウンロードできるソリューションの提供が可能になる。

▼TransferJet対応のスマートフォン間で動画を転送。写真を撮影するのが大変なぐらい瞬時にデータ転送が終わる
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非接触の給電システムで面白かったのが、村田製作所が展示していた「直流共鳴方式ワイヤレス給電システム」。直流の電気エネルギーを電磁界エネルギーに変換し、電磁界共有フィールドと呼ぶ「場」の中に設置した他のコイルに電力を供給する技術だという。電磁界共有フィールドを作るコイルと、給電されるコイルを近接させると、直流のままで電力が伝えられる。デモではファンを回したり、スマートフォンに充電したりといった「給電」を実際に見せていた。共鳴コイルを上手に設置することで、給電できる電磁界共有フィールドを拡大させることも可能で、非接触給電システムの新しい1つの形を見たように感じた。

▼リング状のコイルが電磁界共有フィールドを作り、近接させたコイルに給電が可能な様子をデモ
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クアルコムは、非接触給電技術を推進する業界団体の1つ「Alliance for Wireless Power」(A4WP)の技術を使った給電装置のデモを行った。A4WPでは、磁界共鳴方式を使った非接触給電技術を開発し、相互接続性を確認するブランドとして「Rezence」を策定している。Rezenceでは、給電パッドと端末の位置合わせが不要で、1つのパッドの上に複数の端末を置いて同時に充電することが可能といったメリットがある。クアルコムのデモでは、給電パッドの上にスマートフォンと電球を乗せて、自由な位置で複数の機器に充電できる様子を示していた。「10cmといった距離があっても給電が可能なので、一般のテーブルの天板下に給電パッドを取り付けることで、テーブルの上の機器に給電が可能」(説明員)と、応用範囲の広さをアピールした。

▼Gill ElectronicsのRezence対応の試作スマートフォンケースを付けたスマートフォンと、電球に同時に給電するデモ
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ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2014では、A4WPのプレジデント兼ボードチェアマンであるカミール A.グライスキ博士による講演も行われた。グライスキ博士は、「A4WPは、位置合わせの自由度が高い第2世代のワイヤレス充電のエコシステムを作るのが目的で、技術としては近距離の磁界共鳴方式を使う。A4WPは2012年に設立、ブロードコム、インテル、クアルコム、サムスンなどがボードメンバーとなり、現時点で100社を超える会員企業が名を連ねる」と概要を説明した。

▼講演するA4WPのグライスキ博士
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A4WPのトピックとしてグライスキ博士は、「2013年後半に"Rezence"と名づけた消費者向けブランドを作った。利用者に、このロゴでA4WPの非接触給電の相互接続性を確認してもらえることが大きなトピック」と、実際の利用環境が整ってきたことをアピールした。さらに「A4WPではRezenceの認証プログラムも作った。現時点で完成しているものは、スマートフォン、携帯電話に向けた「BSS(Baseline System Specification)1.2」で、2014年にはタブレットやラップトップをカバーするBSS 1.3を作成する。これによりRezenceで相互接続性が確認できる端末の範囲が大きく広がる」と語る。

さらに「Rezenceが提案する磁界共鳴方式の技術は、複数の端末に同時に電力供給できる技術として現在確立している唯一のものだ。非接触で電力を供給する部分は6.78MHz、制御するマネジメントプロトコルは2.4GHzのBluetooth Smart(Bluetooth Low Energy)を使う。Bluetooth Smartを使うことで低コスト化が可能になる。今後のロードマップとしては、BSS 1.2では3.5〜6.5Wとなっている受電側の給電能力を、BSS 1.3で30W以上に高めて大容量の電力が必要な端末に対応する。さらにBSS 1.4では1Wといった小容量のウエアラブル端末などにも対応を拡大する。A4WPは、磁界共鳴方式を使って、非常に幅広い機器、幅広い電力に対応できる非接触給電のスペックを持っている」と語った。

▼A4WPの技術仕様である「BSS」のロードマップ
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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。