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[先週の動き]決算ではソフトバンクが独り勝ち、Kindleには日本語対応の最新版が登場

2010.08.02

Updated by WirelessWire News編集部 on August 2, 2010, 10:20 am JST

8月を目前に控えた先週、猛暑の中でもワイヤレス業界のニュースは目白押しだった。一つは、携帯電話事業者大手3社の四半期決算が発表になったこと。現状の各事業者の勢いの差が、決算の数値にも跳ね返っているようだ。アップルのiPhoneは、電波感度問題の対策として国内でもケースを無償配布するプログラムを開始した。一方、Amazon.comは新型のKindleを発表、日本語も表示できるようになったことで国内でも利用が増えそうだ。

iPad/iPhone 4効果! ソフトバンクだけが増収増益

携帯電話事業者大手3社の2011年3月期第1四半期の決算が出揃った。数字は単純に明暗を描き出している。ソフトバンクは大幅な増収増益で、売上で勝るKDDIに対して営業利益では大差を付けた。NTTドコモとKDDIは増収ながら減益の決算になった。

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前年同期比で3年ぶりの増収--NTTドコモ

NTTドコモの営業収益は、前年同期比45億円の増収となる1兆892億円。これは音声収入の414億円の減少を、パケット収入の237億円の増加とその他収入の198億円の増加が補った結果だ。前年同期比の収益では3年ぶりの増収になり、復活の緒が見えてきた。営業利益は前年同期比4.5%の減少となる2405億円だった。

Xperiaに代表されるスマートフォンの新規投入や、PCデータ端末、デジタルフォトフレームなどの新市場の開拓により、純増数は前年同期比で64%の増加。総販売数も2年ぶりに増加した。パケット定額サービスの契約数は2570万、全契約の56%を占めるにいたった。定額サービスへの移行促進の結果、2%前後だったパケットARPUの対前年比較の伸び率が今期は3%を超え、順調な推移を見せている。BeeTVは125万契約、iコンシェルは478万契約などと、契約数は右肩上がりで伸びており今後のパケットARPUの増加に期待を持たせる状況だ。

【発表資料】
2010年度(2011年3月期)
NTTドコモのLTEサービスのブランドは「Xi(クロッシィ)」

今後の施策として、スマートフォンの積極投入や、Xi(クロッシィ)と名付けたLTEサービスの展開などを挙げる。NTTドコモは2020年ビジョンとして新しく「スマートイノベーションへの挑戦"HEART"」を掲げることも発表。普及拡大期から多様な価値を提供する時期に移り変わったことを示した。

移動体通信事業で10%以上の減益--KDDI

KDDIは、営業収益が8660億円と、前年同期比1.4%の増加になった。一方で、営業利益は前年同期比で8.8%の減少となる1293億円となった。この中で移動通信事業だけを見ていると、営業収益は前年同期比で0.1%の増収ながら、営業利益は12.6%の減少と大きく落ち込んだ。

KDDIは明らかにスマートフォンへの流れに乗り遅れた。iPhoneやiPadをラインアップするソフトバンクモバイルはもちろん、NTTドコモもXperiaなどのヒット商品を持つ今、ようやく2機種の個人向け端末を出荷したばかりのKDDIの遅れは目立つ。通常端末でも商品およびサービスで際立ったヒットがなかった。ARPUは前年同期比で7.9%減の5160円。音声ARPUの14.6%の減少を、データARPUの2.2%の増加では穴埋めできなかった。

サービス面では、「au Smart Sports」が7月5日に累計会員数200万を突破し、新しい価値を提供していることをアピール。エリア/通信品質の改善として、商業施設向けの取り組みだけでなく、フェムトセルなどを利用した自宅内の電波改善にも取り組んでいることを示した。

【発表資料】
IRライブラリ

独り勝ちの増収増益--ソフトバンク

ソフトバンクは営業収益が7008億円となり、前年同期比5.2%の増加と大きく躍進した。営業利益は、前年同期比44.6%の大幅増加で1566億円に達した。営業収益は2期連続、営業利益は5期連続の過去最高を記録するように、好調を維持している。連結経常利益ではKDDIの1292億円を大きく上回った。当期の純利益は194億円と前年同期の273億円から大きく減少した。これはヤフーの法人税などの更正・決定による納付による影響が大きい。

iPadやiPhone 4というヒット商品があるソフトバンクは、移動通信事業が好調。純増契約数は3カ月で70万契約にも上り、NTTドコモの43万、KDDIの22万を大きく引き離す。他社の総合ARPUが減少する中で、ソフトバンクだけは前年同期比260円のプラスとなっている。その中でもデータARPUは370円の増加と、数十円の増加にとどまる他社との差は大きい。

基地局を2010年3月末の6万局から2011年3月末に12万局へと倍増させる計画は、6月末時点で6000局増の6万6000局というのが進ちょく状況だ。ソフトバンクでは、9万4000局に相当する分まで場所の確保または設計が済んでいるとして順調な推移を強調する。とはいえ、ソフトバンクが「繋がらない」という声は相変わらず根強く、目に見える改善がないと中長期での顧客満足度に影響を及ぼしかねない。Wi-Fiスポットの提供では逃げ切れない部分もあるだろう。

【発表資料】
平成23年3月期 第1四半期決算短信
決算説明会資料

iPhone 4は国内でも「ケース提供」開始、Kindleには新端末

このほか、先週のトピックをおさらいしておこう。

iPhone 4の感度低下改善に効果があるとされる、ケースを無償で配布するプログラムが、国内でも始まった。純正の「Bumper」または特定の他社製のケースを無償で提供する。App Storeから対象のアプリをダウンロードして申込むことになる(関連記事:アップル、iPhone 4の「ケースプログラム」を国内でも開始、白モデルは年内後半に延期)。

ワイヤレスで利用する端末で大きな話題になりそうなのがAmazon.comのKindleの新モデル。日本語の表示に対応したことが国内では大きな意味を持つ。それだけでなく、小型軽量化し、3GだけでなくWi-Fiにも対応するなど使い勝手が大きく向上していそうだからだ。Wi-Fi専用モデルが139ドルという低価格も魅力で、これなら1台買ってみてもいいかと思わせるプライシングだ(関連記事:Amazon.comが日本語対応の新Kindleを発売、Wi-Fi専用モデルは139ドルから)。

グローバルな動きの1つに、NTTドコモが台湾ベンダーと提携したニュースがあった。NTTドコモはLTEに対応した通信プラットフォーム「LTE-PF」のライセンス契約を、台湾のMediaTekと締結した。MediaTekはLTE-PFを組み込んだ携帯電話を提供できるようになり、NTTドコモはMediaTekからライセンス収入を得ることができるという(関連記事:NTTドコモ、台湾のチップセット企業とLTEプラットフォームのライセンス契約)。

もう1つ紹介したいのが、iPadの関連動向。発売から2カ月が経過したiPadに、コンシューマ向けのサービスや企業利用のニュースが続々とあったのも先週の特徴だろう(関連記事:楽天はアプリ公開、テレビ東京は写真集発売など、iPad活用の動きが続々)。一時期ほどには騒がれなくなったiPadとはいえ、着々と地歩を固めている印象を受けた。

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