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記録(アーカイブ)媒体としての書籍の行く先

2014.06.30

Updated by Satoshi Watanabe on June 30, 2014, 17:42 pm JST

書籍、特にハードカバーものの文芸じゃないジャンルは、記録保存媒体としての(社会)機能がパッケージに期待されている主機能である、と考えられる。
どのような位置づけのコンテンツが本とそもそも論として相性がいいか、との議論を折々のビジネス状況を見ながら編集者の片と議論することがあるが、起点のひとつとして理解しやすいのは、まとまった論考を世の中に提示するもの、専門向けに閉じない研究成果発表のツールであるというものである。
(むろん、部分定義なので外れるものもあるが、書籍機能全体の定義論については本稿では余談になるので割愛する)
というものにどんぴしゃ該当するのが、文字通り学術書であり、実用書についても専門研究職の方の手によるものではなくても、ある程度ひとかたまりに取りまとめた知見やメソッド集などが書籍の形として流通することになる。
■ という構造がそろそろしんどい
書籍市場がしんどい話は今に始まったテーマではないが、明示的に現行の仕組みの限界が来ているのではと思われるケースが出てきている。八重洲ブックセンターのアウトレット本コーナーである。
新本を半額以下で!
本店8階にアウトレットブックコーナーができました!
「アウトレットブック」とは、発売から一定期間が経過した新刊本の中から、
出版社が再販指定(店頭販売価格を決める権利)を解いた商品です。
どきっとすることがさらっとあれこれ書かれているが、ラインナップが「歴史書、 人文科学書 、文学、美術書を中心」とあり、実際他店も含めて足を運んだ方からすると、結構"しっかりとした"ものも棚に加えられているとのこと。
細かい話を略して解すると、要すれば、人文学術書を現行の流通形態で書籍の形を維持しつつ出していくのはもう無理であろう、ということになる。少なくとも、数なりが絞られていくのは避けられない。
このあたりの問題については、公共ニーズ、学術ニーズについては図書館機能(国会図書館から大学図書館からその他諸々)までで吸収することは出来ないものか、するとしたらお金をフェアに配分してコスト配分するにはどのようにすればいいのか、との議論もなくは無い。新本に限らず、過去本についてもデジタイズされずに権利の散逸が始まっているものも珍しくない。
しかし、(現状の出版点数が妥当かの議論はまたさておき)仕組みを維持するに有効な手はまだ見出されていないように思える。書籍の情報パッケージングとアーカイブ機能というのは、社会機能としては成立しなくなってきている。
■ もはやAmazonに預けた方が。。。
との動きを眺めていると、反対側で、Amazonが紙在庫が無い際のオンデマンド印刷を拡張しているとの記事が出ていた。
電子化したものをKindleなどで届けてアーカイブ機能を果たしましょうとの議論はもちろんあるとして、(製本品質がどうなるかはともかく)紙版も、出版社在庫が無い場合にはオンデマンドでの出力をAmazonが請け負いましょうとの話となる。
そもそも作っても出る部数が足りないのでもう商売にならない、との問題については本施策でクリア出来ないものの、アーカイブ在庫の問題については半ばこれでクリア出来てしまう。
本件ひとつから特定の知見なりを引き出したりはしないものの、左右の動きはあまりに対象的に見え、印象的である。

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渡辺 聡(わたなべ・さとし)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。

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