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11周年に思うこと

2014.08.09

Updated by Ryo Shimizu on August 9, 2014, 09:26 am UTC

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 昨日は筆者の経営する会社、株式会社ユビキタスエンターテインメントの創立記念日で、ついに昨日で11周年となりました。

 それを記念して、お台場でバーベキューパーティを開催しました。

 会社が10年存続するのも大変だと思っていた頃から考えると、こうして無事11周年を迎えることが出来たということは、とても感慨深いものがあります。

 今年は売上高が初めて10億を超え、会社としても大きく成長した年だった反面、反省も多い年でした。

 しかし成果は細かなことの積み重ねから確実に出ており、それが結局、この会社の原動力になっているのだと改めて思い知ります。

 以前このコラムでも述べましたが、弊社の社章は赤い不死鳥です。

 不死鳥とは、灰になってもまた灰の中から蘇り、再び飛び立つ火の鳥です。

 創業時、会社とは結局なんであるか、ということを突き詰めて考えた時、決して滅ばないこと、というのがその答えでした。否、たとえ滅んでも、また灰の中から生まれ変わる、これが私の作るべき会社の姿なのだと。

 会社の財産は人である、と言われることがあります。特にIT企業の場合はそうです。
 たしかに、人である部分は大きいでしょう。

 優れたプログラマーと、凡庸なプログラマーではその生産性に100倍以上の差があります。
 ビジョナリーがいる会社と、いない会社では、その産み出す製品の生命力に圧倒的な差があります。
 コンピュータの業界でいえば、Appleと、それ以外です。

 たかが個人の能力が、その会社の産み出す製品の性質を数百倍も変えてしまうというのは、コンピュータならではです。特に道具となるようなソフトウェアを作る場合、その生産性は波及効果を含めれば人類全体に数万倍〜数千万倍の効果をもたらします。

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 しかし、人の命には限りがあります。
 誰でも永遠に生きることが出来るというわけではありません。

 ではなぜ人は集まり、会社を組織するのでしょうか。

 それは自分一人では決して実現し得ないことを、力をあわせて実行するためです。
 リーダーがたとえ途中で力つきたとしても、また新たな若いリーダーが立ち上がり、組織と目的を引き継いで前進を続けるためです。無数の先達の屍を乗り越えて、果てしないゴールを目指し続ける。これが会社組織が存在する意味です。

 ひとつの目標に向かい、一人一人はそれぞれ自分たちなりの事情ややりたいことがあったとしても、それらをひとつの目標のもとに束ね、時には別離し、時には再び合流して、まるで川が数千年の時を超えて姿形を変えながら、もちろんそこを流れる水は常に入れ替わりを繰り返しながらも、成長を続けるのです。

 そこに流れる水が多過ぎても少な過ぎても、川は枯れてしまいます。
 川を流れる水を人だとすれば、会社も長いスパンで見れば常に人は入れ替わっています。

 この11年の間にも数多くの出会いと別れがありました。

 他の川から合流した者、自ら川を創りだす者、そして一度川から別離し、再び戻って来る者、それぞれです。

 会社にとってのビジョンとは、この川が存在する理由そのものです。
 なぜこの会社なのか、なぜこの会社でなければならないのか。

 私の会社、UEIの理念の先ず第一は、情報技術によって人類の幸福を追求すること。
 その幸福のための手段のひとつが、一億総プログラマー国家化計画です。

 なぜなら、プログラミングできる人間と、そうでない人間では、生産性がまるで異なって来るからです。
 そしてまだまだ習得が難しいところのあるプログラミングそのものを簡単にすれば、より多くの人々が情報技術の恩恵を受け、活用し、正しく理想的な答えにより最適な道筋で辿りつくことができます。

 また、情報技術は人と人、人と機械のコミュニケーションを根底から変える力があります。

 テレビ会議やソーシャルネットなどは言うに及ばず、例えばビジュアル言語を使えば、母語が違う人同士がまるで母語で会話をするかのように自分の考えを相手に伝えることが出来ます。

 人類が自らの知性を最大限に活用し、叡智を結集するために不可欠なのが、情報技術なのです。

 
 そして第二の目標は、コンピュータを消滅させることです。
 コンピュータはまだ技術として発展の途上にあります。

 コンピュータのある場所とない場所に別れている限りは、コンピュータが充分成熟したとは言えません。
 パイプ椅子を指差して「あれはなんですか?」と聞いた時、みんなは「椅子です」と答えます。誰もそれが鉄とビニールによってできた製品であるとは考えません。

 しかし鉄、そして製鉄技術は、人類の生活にもはや欠かすことの出来ないものです。
 その鉄と同じレベルにまで、コンピュータを進化させ、コンピュータがあらゆる場面に文字通り溶け込むような世界を創りだすのが私達の第二の目標です。

 それが実現できるのは数百年、数千年先の未来かもしれません。

 しかし私達は、その未来の実現に向けて日々たゆまぬ努力を続け、決して滅ばぬ、何度でも蘇るという不滅の誓いをこの不死鳥の紋章に託しているのです。

 今、UEIは会社の歴史が始まって以来の大転機に差し掛かっています。
 しかしこの苦難を乗り越え、無事12周年を達成することができたら、来年は、今の社員だけでなく、希望する全ての社員、元社員、関係者を引き連れて、長岡の花火を見に行きたいと思います。毎年100万人近くの人間が参加する花火大会に全社員ででかけるというのは、想像するだけでもかなり大変だと思いますが、やる価値はあると思っています。

 そこにUEIという会社の根底に流れる不滅の精神の原点があるからです。

 自分たちが人生の大切な時間を何のために費やして来たのか、そして自分の人生の終わり頃に、自分が何をしたと振り返ることが出来るか。

 そして、だからこそ、会社と関わる自分の人生を十二分に楽しんで欲しいのです。

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 会社は所詮、場に過ぎません。
 先の例でいえば川です。

 人生の時間の多くは、会社の中で費やされます。
 一度しかない人生の一度しかない瞬間を、どのように過ごすのか。

 いつも本当に価値があると思えることに自分の人生を使って欲しいのです。
 

 仕事をすることが誇らしく、子供達に胸を張って、「お父さん、お母さんが勤める会社は、人類の未来に貢献している」と語って欲しいのです。

 ちょうどこれからカナダのバンクーバーで始まる、世界のトップカンファレンスの一つ、ACM SIGGRAPH(シーグラフ、と呼ばれる)では、設立後わずか一年ですが、UEIリサーチが1本の技術論文と、6本のポスター発表、また同じくバンクーバーで同時開催されるSAPでももう1本の論文発表を行います。

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 UEIリサーチ所長である西田友是東大名誉教授のもと、わずか1年で22編もの論文が世界中の学会に採択されたというのは、まさしく人類の未来に貢献する目覚ましい成果です。

 私はこのような人類の進化に直接貢献するような活動をUEIの、すなわち不死鳥の紋章のもとに行えたことを誇りに思います。同時に、これと直接、間接的に関わる全社員のたゆまぬ努力の成果であると全員が胸を張って良いことだと思います。

 我々が利益を出す目的は、次なる進化へ貢献することです。
 ずっとそう言い続けてきました。

 その具体的な形が、創業11年めにしてついに目を出し始めたのです。

 月曜日からはいよいよ12年めのUEIが始まります。
 しかし数百年、数千年の目標を考えたら、まだほんの序章に過ぎません。

 私は12年めも、いつかこの会社の舵をとる後進たちに恥じぬ経営をしていきたいと思います。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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