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CODE:『私たちの時代の言語』展トークショウ:人とプログラムの関係を再認識する

2014.11.19

Updated by Yuko Nonoshita on November 19, 2014, 10:00 am JST

グランフロント大阪を拠点とする知的創造拠点のナレッジキャピタルと、オーストリアのリンツに拠点を置くクリエイティブ・文化機関「アルスエレクトロニカ」とのコラボレーションによる展示会、CODE:『私たちの時代の言語』展に合わせて、作品を提供するゲストクリエイターらによるトークショウとワークショップが11月7、8日にナレッジサロンのプレゼンラウンジで実施された。ここでは7日に開催されたトークショウを紹介する。

トークショウでは、ゴラン・レヴィン氏とアートユニット、エキソニモの千房けん輔氏と赤岩やえ氏が、これまでのクリエイティブ活動について紹介。両者はアルスエレクトロニカが開催するメディアアートの最先端コンペティション「プリ・アルスエレクトロニカ」で、作品が評価されているほか、世界を舞台に様々な活動を行っている。

レヴィン氏はアーティストとして20年以上活動を続けるほか、MITメディアラボやアルスエレクトロニカのR&D機関である「フューチャーラボ」に在籍し、インタラクティブ表現の新たな流れを探求するほか、教育者として、カーネギーメロン大学で准教授としてエレクトロニック・アートの分野において、新しいプログラムの概念を考えるカリキュラムを指導している。無機質なプログラム言語にモダンでアーティスティックな要素を組み合わせ、シンプルながら深い意味を持たせる手法を探求しており、新しく創設されたニューヨークのSchool for Poetic Computationという学校では、まるでポエムを作るように削ぎ落とされたプログラミングにより、アートやコンピュータといったこれまでの学問とは異なる新たな領域を開拓しようとしている。

アーティストとしては、少ない人数と資金、オープンソースツールの利用、詩的なコードで社会を再批評する仕組みをテーマに活動。プロジェクトとして参加したドキュメンタリームービー「CLUDS」では、マイクロソフトのキネクトを使ってアーティストのインタビューを撮影し、デジタル化された人物を構成するドットをクリックするとインタビューが再生する仕組みをプログラミングした。オープンソースで構築され、ユニークなアーカイブツールとしていろいろな人たちにも使われている。また、展示会の作品のように視覚もテーマの一つにしており、「Double-Taker」という作品は、建物の上に800キロもある巨大なロボットアーム型監視カメラを設置した結果、そのカメラを人がまじまじと見つめるという逆転のシチュエーションが生まれる様をユーモアに表現している。

他にも多くの作品が紹介されたが、いずれも見る側が参加や経験ができるようなスタイルで、そこには独特のユーモアも感じられる。レヴィン氏は「作品で重要なのは人がそれぞれ自分たちで意味を発見できること。そのために経験を開放し、ポジティブで自由な発想で自分を再発見できるような方法を目指している」と語り、彼のそうしたオープンな発想が、シュールな一方で親近感がある不思議な味わいをもたらしているのだろう。

▼ゴラン・レヴィン氏
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▼人々の声をアーカイブするツール「CLOUDS」はオープンソースで公開されている
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▼思わず二度見してしまう巨大なカメラで観察する側とされる側の関係を考える作品「Double-Taker」
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▼Messa di Voceはコリオグラファーの声や動きをリアルタイムに捉えて映像化するというインタラクティブ作品
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▼レヴィン氏は別のコラボレーション企画として月に探索機で文字を描くプロジェクトにも参加している
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CODEやプログラミング、インターネットの要素を本来の意味からずらしながら、新しい可能性を探る作品づくりをしているエキソニモ。現在の活動スタイルをはじめるきっかけとなった「DISCODER」という作品は、ウェブデザインの仕事をしている時に生まれた作品で、サイトを構成するソースコードが1文字間違うだけでデザインが崩れることに着目し、キーボード入力した文字でサイトを崩せるプログラムを公開。2000年にアルスエレクトロニカで展示された時には、それぞれのキーにマウスをつないで、文字を探しながら入力するインスタレーション作品として発表している。2010年に発表した「Desktop」は、音源や映像のファイルを順番にカーソルでクリックして再生する動きをプログラミングし、アナログな操作をあえてコンピュータで自動化して演奏してみせるというものだ。

2012年から別ユニットのIDPW(通称:アイパス)で主催しているインターネットヤミ市は、「インターネットに関するものを現実空間で売買する」ことをテーマとしたフリーマーケット型イベントで、東京や札幌、ベルリンなどで開催されてきた。参加者のアイデアはユニークなものばかりで、オンラインのカレーレシピを平均化して作ったカレーや、有名美術館のウェブサイトのスペルミスを指摘したメールのコピー、無修整画像のバイナリーコードを額縁に入れて売られたりする。中でも人気のインターネットおじさんは、リツィートを購入すると大声でツィートを読み上げたり、フォローを購入すると相手の後を付いていくといったインパクトのあるパフォーマンスを展開。海外のテレビ局にも紹介されている。

▼世界で活動するアートユニットエキソニモからはコードに関する作品が紹介された
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▼エキソニモの作品「DISCODER」は現在もオンラインからアクセスできる形で公開されている
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▼アルスエレクトロニカで展示された大量のマウスで操作する「Desktop」
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▼インターネットヤミ市で大人気のインターネットおじさん。アイデアのユニークさとパフォーマンスのインパクトで世界からも注目?!
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後半のパネルディスカッションでは、アルスエレクトロニカのディレクターを務めるゲルフリート・ストッカー氏とフューチャーラボに在籍する小川秀明氏も参加し、現代のプログラミングやコード、デジタルやインターネットに対する変化について意見が交わされた。

レヴィン氏は、10年前からSNSやスマートフォンが登場し、プログラムは初期設定と元々あるものの組合せで再構築されるようになり、「教育のあり方も5年前ぐらいから大きく変換している」と言う。エキソニモの赤岩氏も同じような流れを感じており、「コンピュータの中のコードをいじるのではなく、規範や現実をいじることへ作品づくりが変化してきた」と語る。プログラムを現実化したものとしてはロボットがあるが、ネットワークの中で動くbotもロボットのようになりつつあり、MITのbotサミットでは動画を自動で生成するbotなども作られており、「コードもこれから変化や新しい方向へ向かうのではないか」とレヴィン氏はコメントしている。

アルスエレクトロニカでは、アートとコードの定点観測からの変化を見つめてきたが、ストッカー氏は挑戦的な意見として、今はその両者はまだ何も変わっていないとし、「昔はコンピュータが何かわからないから怖がられていたが、今はわかるようになって怖がられている」と言う。botが人に見える時があり、ネットワークではそれが頻繁におこるので恐れる要因にもなっているのかもしれない。千房氏は「botと人をどう区別するかに興味があり、それができるのは人間だけ」とコメントしている。レヴィン氏も創造者としてはコードをどう作るかよりも、何をやらせて、何をやらせないかを考える時代にになってきているとしている。

技術の進化でコンピュータやプログラムが万能であるかのように感じるが、創造しているのは人間であり、使い方を間違ってはいけない。ワークショップでは、だからこそ人はコードについて理解し、考え、批評していくことが必要ではないかといった意見もあり、プログラムだけではなく規範としてのコードについてもあらためて考える内容であった。

▼ワークショップのイメージ
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【展示会情報】
CODE:『私たちの時代の言語』展
会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル 2F The Lab.内
会期:2014年11月6日〜2015年1月25日 10:00〜21:00 入場無料
イベント公式サイト

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。