WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

Firefox OSが拡げるオープンソースコミュニティの輪 〜Mozilla Open Web Day in Tokyo レポート〜(前編)

2014.10.08

Updated by Yuko Nonoshita on October 8, 2014, 12:30 pm JST

10月5日、東京のアーツ千代田3331にて、Mozilla に関連するコミュニティの取り組みや研究を紹介するイベント「Mozilla Open Web Day in Tokyo」が開催された。元中学校の校舎を改修した会場に、28もの展示コーナーが設けられ、メイン会場の体育館はさながらMozillaの文化祭という雰囲気であった。トークセッションでは、auが年度内の発売を予定したFirefox OS 端末がクリスマスを目処に発売されるとの発表もあり、会場は大勢の来場者でにぎわっていた。

201410081230-1.jpg

201410081230-2.jpg

MozillaといえばFirefoxブラウザの開発元であり、これまでコミュニティ参加の中心はWeb開発関係者が中心であった。それが、モバイルをはじめとした様々なデバイスのプラットフォームとなる Firefox OS のリリース以降、さらにコミュニティの枠はあらゆるジャンルを超え、組み込みやFab(ものづくり)、そしてモノとインターネットを結ぶIoT(Internet of Things)へも拡がっている。Mozilla Japanの瀧田佐登子代表理事は、「WebからモノへとつながるWoT(Web of Things)も始まっており、それがMoT=Mozilla of Thinkingへとつながるだろう」とコメントしている。会場ではそうしたつながりを具体的に感じられる興味深い展示がたくさんあり、Webのこれからやオープンソースの可能性を感じさせていた。

▼Mozilla Japanの瀧田佐登子代表理事は集まったコミュニティの人たちに向けて「Webのオープンさが様々な人たちをつなげ、世界が進化していくことに期待したい」とコメントした。
201410081230-3.jpg

===

例えばデバイス。Firefox OSの開発者向け端末の「Flame」は今年7月末より日本でも発売されているが、会場では、オリジナルのタブレットの試作品が展示されていた。10.1インチのWUXGAディスプレイでフロントとバックに2つのカメラ、Wi-FiとBloutooth、外部メモリにmicroSDという高い仕様であったが、開発元のシステナによると、残念ながら発売の予定は無いとのこと。今回の目的は、既存のタブレットが持つ機能はFirefox OSでも実用可能であることを証明するためで、開発そのものはその他のモバイル向けOSよりは比較的扱いやすかったという。

▼システナが開発したオリジナルのFirefox OS搭載タブレット。残念ながら発売の予定はないとのこと。
201410081230-4.jpg

IoTあるいはWoTの始まりを感じさせる展示もいくつかあった。明治大学とはこだて未来大学の学生がMozillaとコラボしたFabNaviプロジェクトからは、ものづくりの過程を記録し、その工程をプロジェクターで手元へ投影することで再現できるシステムが紹介されていた。会場では小さな子どもがアイロンビーズを使って作品づくりを楽しんでいたが、他にも、レゴや折り紙などに応用でき、立体物の再現にも取り組んでいるという。工程が標準化された形式で保存、共有されるのも特長で、データをダウンロードすればどこでもものづくりが再現できる、デジタル・ファブリケーション時代のシステムを目指している。

▼手元に投影された映像を元にものづくりができるFabNaviはレゴや折り紙にも応用でき、子どもでも簡単に扱える。
201410081230-5.jpg

201410081230-6.jpg

===

Mozillaと宇宙開発技術を学ぶ東海大学の学生たち、そして高校生が実現したfabsat プロジェクトは、3Dプリンターで出力した手のひらサイズの模擬人工衛星をWebでコントロールし、実際に打上げた衛星からTweetでメッセージを送ることに成功。展示会では実機とプロジェクトの模様が紹介された。5月のアイデアソンから8月には打上げが実現しており、現在も実験データの解析が続けられているという。

▼東海大学衛星プロジェクト(TSP)が高校生と一緒に実現した模擬人工衛星の実機とその打上げの模様が紹介されていた。
201410081230-7.jpg

201410081230-8.jpg

KDDIのブースでは、イベントの数日前に発表された(関連記事)Firefox OSをベースとした開発ボード Open Web Board をはじめ、その開発ツールである Gluin と、Fi refox OS のデバイス上で新しいユーザーインターフェイスを体験できるアプリ Framin が紹介され、クリスマスに発売すると発表された au 製の Firefox OS 搭載スマートフォンの情報と共に来場者の関心を集めていた。同社は、オープンソース開発者のすそ野を拡げる支援にも力を入れるとしており、その一つとして Firefox OS 開発者のためのポータルサイト au Fi refox OS Portal Siteをイベント当日に公開した。中でもGluinは、レシピと呼ばれるアイコンをつなげるようにプログラムをグラフィカルに組み上げられるツールで、経験者でなくて簡単に機能を実現できる。むしろ大事なのは新しい発想であり、そのために Open Web Board を使ったハッカソンも10月下旬から開催していくと発表している。

▼KDDIのブースでは開発用ボードOpen Web Boardと開発用ツールのGluin(画面)などが紹介されていた。
201410081230-9.jpg

201410081230-10.jpg

イベントでは展示会と合わせて開催された3つのトークセッションついては後編で紹介する。

【参照情報】
Mozilla Open Web Day in Tokyo

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。