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Image by Mario MancusoCC BY

欧州における「忘れられる権利」の範囲は、狭義には検索エンジンに限っている──生貝氏(東京大学)と高崎氏(KDDI総研)の対談は、こんな話から始まりました。確かに、文献を丹念に読んでいけば分かる、当たり前のことかもしれません。しかし私たちは、しばしばこの「忘れられる権利」を拡大解釈しがちです。

その理由の一つは、「忘れられる権利」という言葉が、日本語と外国語の如何に関わらず、あまりにも現状に「ハマって」いるからでしょう。事業者はパーソナルデータを闇雲に収集し、私たちの日常はそれに振り回されているのではないか。こうした問題意識は、漠然とした疑念というレベルから、行動ターゲティング広告などの実体を得て、具体的なものとなりつつあります。

特にインターネットを使いこなしている利用者からすれば、事業者の情報システムはできるだけ私のことを忘れてほしいという思いを抱いても、不思議はありません。そうした問題意識を見事に射貫いたのが、この「忘れられる権利」という言葉だったのでしょう。

そして実際、議論の対象は少しずつ広がりを見せています。懸念の矛先は、プロファイリングです。

すでにマーケティング分野では、プロファイリングを使った広告サービスや販売促進プログラムが勃興しており、それに起因する様々な問題が多く指摘されています。2014年5月に米国ホワイトハウスのビッグデータ報告書(BIG DATA: SEIZING OPPORTUNITIES, PRESERVING VALUES)では、こうした「誤ったプロファイリングに起因した人種差別などの問題」がすでに生じつつあると警告されています。

また最近では、パーソナライズされた学習のための新しいデータ利用法が、生徒の機密情報の安全性とセキュリティに関する懸念のもとになっているとの声も、専門家から指摘されはじめました(Personalized Learning Pits Data Innovators Against Privacy Advocates)。

各国の規制当局も検討を進めています。2014年10月にモーリシャス開催された、「第36回データ保護およびプライバシーコミッショナー国際会議」で採択された決議のうち、「ビッグデータに関する決議」において、「データ収集を目的に必要なレベルに限定し、必要な場合、個人情報を分析とプロファイリングのために利用する有効な合意をとること」と指摘されており、目的の特定はもちろん、プロファイリング結果が公正かつ倫理的であることを求めています。

しかし、これらの検討は、まだ始まったばかりです。我が国における個人情報保護法の改正を見据えて発表された、日本の「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」においても、プロファイリングは今後の検討課題とされています。また「忘れられる権利」の本場ともいえる欧州においても、両者を結びつけた議論は、まだこれからといった状況です。

なにしろ問題は複雑です。狭義の「忘れられる権利」が示した、検索エンジンは当該ページへのリンクを落としておくといった、シンプルな決着にとどまらない複雑さを、プロファイリングは有しています。安易にデータを除外すると、データ欠損による不正確なプロファイリングが、私たちの社会生活に障害や損害をもたらすことが懸念されるからです。

狭義の「忘れられる権利」に関しては、日本でも司法判断が示され始めており、徐々に運用や執行体制が整理されていくでしょう。しかしもはや問題は先に進んでいます。おそらく今後日本で必要となる検討では、プロファイリングをどのように社会の中で位置づけていくのかという議論が、同時に進むことになるのではないでしょうか。

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特集:プライバシーとパーソナルデータ

情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)