オープンデータを活用した持続可能・社会性のある事業プランを表彰 オープンデータ・ビジネス・コンペティション
2015.03.12
Updated by Yoshiko Kano on March 12, 2015, 14:00 pm JST
2015.03.12
Updated by Yoshiko Kano on March 12, 2015, 14:00 pm JST
オープンデータを活用した新たな事業領域の取り組みを対象として、事業内容及び事業プランを募集、優秀な作品を選出し表彰する「オープンデータ・ビジネス・コンペティション」(主催:経済産業省)が、東京・有楽町の東京国際フォーラムで3月3日に開催された。
本イベントは、オープンデータを活用したアプリや具体的なアイディア等をすでに有しており、事業展開しているものや、今後の事業化を目指すものを対象としたコンペティション。応募者はオープンデータを活用したサービス概要とともに、事業プラン(3年後の実現に向けたアクションプラン)を提出し、審査員と会場の来場者によって優秀作品が選ばれた。本年1月7日より応募を開始し、わずか1ヶ月間の応募期間で33作品の応募があったという。
複数の組織のコンソーシアムからの応募が目立つ従来のアプリコンテストやハッカソンに比べ、ビジネスコンペティションということで民間事業者からの応募が増えたことが特徴だと事務局は分析。テーマとしては、地理情報・自治体支援・観光・福祉など一般的なテーマが多くを占める一方、プラットフォームツールの提案、またデータに付加価値をつけて二次販売するサービスなど、今まで少数派だった提案が少なからず見られたという。
応募者プレゼンテーションに先立つ基調講演では、大阪市経済戦略局立地推進部イノベーション企画担当課長代理、角勝氏が「大阪市におけるイノベーション創出の取り組み」と題し、大阪市梅北での取り組みについて紹介。大阪在住・所在に限らず、日本のみならず世界中と提携し、年間200回ものイベントを行っている『大阪イノベーションハブ』で開催された「ものアプリハッカソン」をきっかけに産まれた電子玩具「Moff」やシャープと共同開催したイベントをきっかけに商品化されたツンデレ家電「プレミアムなココロボ」などの例を紹介。最後に平成27年4月の適用に向け全国に先駆けて取り組んでいる「BID(Business Improvement District)制度」の進捗について発表。その意気込みを語った。
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審査では、事業性(ビジネス化をどの程度進めているのか)、そして社会性(課題解決や社会貢献を目的としているか)、という2点を着眼点とした上で、最優秀賞1件、社会課題解決賞2件、ビジネス賞2件を選出。表彰式は、応募者33作品の中から、受賞対象となった10作品が、応募者によるプレゼンテーションで紹介され、その後、約15分のミニセッションを会場内で分かれて開催。その後、会場の来場者による投票と審査員による選出により、各賞が発表された。
社会課題解決賞には、心停止発生現場へのAED運搬を要請することができるアプリ「AED SOS」と、車椅子利用者向けに目的地までの写真付き経路案内図を提供する「UniversalDesignMap.jp」が選ばれた。
▼日本で心臓が突然止まってしまい亡くなる方は1日平均195人。1人でも多くの心停止者の命を救うため、位置情報を起点にSOSを受発信してAEDを届ける仕組みをつくるアプリ「AED SOS」。SOS発信者の半径600m内のSOS受信登録者にプッシュ通知を一斉送信する。
▼車いすを利用する人ができるだけ自分の意思と力で外出できるよう手助けを目的としたアプリ「UniversalDesignMap.jp」。何より優先される「スムーズに移動できて時間の計算が確実にできること」に注力した作りは、提案者の家族が車いす利用者という切実さを感じさせる。
ビジネス賞には、主に観光をテーマにした自治体のオープンデータ利用の地域アプリコンテスト開催支援をする「地域アプリコンテスト開催支援プラットフォーム」と、電通とゼンリンデータコムが協業し位置の正確性を確保した全国約12万件の避難所情報を提供した「全国避難所データベース」が選ばれた。
▼自治体によるオープンデータの公開方法、アプリコンテストの開催方法に関するコンサルテーションと、そのための統合的な情報基盤をセットで提供。費用は企業スポンサーからの収益で賄うビジネスモデルの「地域アプリコンテスト開催支援プラットフォーム」。
▼電通と日本最大のデジタル地図情報提供事業社であるゼンリンデータコムによる全国約12万件の避難所情報の正確性と網羅性を確保した「全国避難所データベース」。地図情報作成で培われた細かな独自補正、年に複数回の独自調査による情報更新、災害時に避難所情報として求められる12項目の情報を網羅している。
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そして最優秀賞には「いつ、どのゴミが収集されているか」が一目で分かるアプリ「"5374(ゴミナシ).jp" for Professional サービス」が選ばれた。
▼いつ、どのゴミが収集されているのか? ということが簡単に知りたい、という問題を解決するシンプルな無料アプリ「5374(ゴミナシ).jp」。オープンソースで提供しており、北海道から沖縄まで65都市以上が既に利用している実績を持つ。これにプッシュ通知、多言語対応(英語、中国語など)、不必要なものが利用者同士で分かり捨てる前に受け渡しが出来るサービス、そして保守と、4つの追加サービスをつけ「"5374(ゴミナシ).jp" for Professional サービス」として自治体向けに有料提供するビジネスプラン。今後このアプリを使うことで、実際にゴミの量が減る、またリサイクルが増えるといったことを目的としたいとしている。
▼受賞者の集合写真。
審査員全員による総評では、「提案者、開発者による身近な問題をどうにか解決したいという情熱に感動した」「ハッカソン・アイディアソンは、いくつものアプリケーションを繰り返し作れるエコシステムを作ることに意義がある。このような活動を是非広めていって欲しい」「本当に真価が問われるのはこれから。継続、投資、それが大事。その為にエネルギー、情熱を投じて欲しい」「既にオープンデータを使ってビジネスをしているという事例の応募があったことは素晴らしい。本当に必要があって産まれて来た、地に足が着いたものが多かった」といった今後の事業発展への期待が語られた。
また、審査員各々の多彩なバックグラウンドによる評価点の違いから、応募作品に対する忌憚ない見解も述べられた。NPO法人の視点からは「地域の問題解決について市民参加を実現するのがオープンデータ活用の肝なのではないかと感じた」、イノベーションや新規事業創出の投資活動を行う事業者視点では「新しい付加価値をデータにもたせ、変化させるイノベーションを起こすようなプロジェクトに期待してきた。残念ながら賞には至らなかったが財務を人口というデータに変化させた『ザイムjp』、位置情報を観光データに変化させた『It's a Star Bus World.』を個人的には評価したい」、金融機関からは「私の審査の目線は『どのプロジェクトであればお金を貸せるかな』。受賞したものでも難しいものもあり、受賞しなかったものの中でもイケると思うものもあった」と、本イベントでの応募作品の層の厚さを感じられるものとなった。
ビジネスモデルとして成長の途上にあるオープンデータ活用について、今後も継続して取材を続けていきたい。
【参照情報】
・オープンデータ・ビジネス・コンペティション
・Osaka Innovation Hub
・大阪版BID制度検討会
・最優秀賞:"5374(ゴミナシ).jp" for Professional サービス
・社会課題解決賞:AED SOS
・社会課題解決賞:UniversalDesignMap.jp
・ビジネス賞:地域アプリコンテスト開催支援プラットフォーム
・ビジネス賞:全国避難所データベース
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青山学院大学史学科、東京藝術大学声楽科、京都造形芸術大学ランドスケープデザインコースを卒業。京都造形芸術大学大学院芸術環境専攻(日本庭園分野)修士課程修了。通信キャリアにてカスタマサービス対応並びにコンテンツ企画等の業務に従事、音楽業界にてウェブメディア立ち上げやバックヤードシステム開発、コンサート制作会社での勤務を経て、現在はフリーのヴォーカリスト、ヴォイストレーナー、エディター、ライター。
http://kanoppi.jp