米国家安全保障局（NSA）が米国民の通話記録に関する大量のメタデータを無差別に収集していたとして問題になっていた件で、米連邦控訴裁が現地時間7日、NSAのこの行為が違法であるとする判断を下したと複数の媒体が報じている。

米国自由人権協会（American Civil Liberties Union、ACLU）が起こしたこの裁判では、NSAの無差別データ収集活動が「米国愛国者法（Patriot Act）」の第215項（Section 215）で認められた範囲に含まれるかどうかが争われていた。NSAや米政府側では、この条項を法的根拠として、テロなどの犯罪防止には特定の容疑に関連しない通話メタデータの収集も合法と主張。それに対し、ACLUや米電子フロンティア財団（Electronic Frontier Foundation、EFF）などの反対派は、NSAの行為が一般市民のプライバシー侵害にあたり、「不合理な捜索、逮捕、押収の禁止」を定めた憲法修正第4条に違反するなどと主張し、ACLUではNSAによるデータ収集の停止を求めて裁判を起こしていた。ただし第一審ではNSAの大量データ収集は合法とする判断が下されていたという。

WSJによると、今回の控訴審判決では、第215項に基づいて無差別のメタデータ収集を行うことは違法とされたものの、それが米国市民の人権侵害にあたるかどうかまでは踏み込まれておらず、また情報収集の停止を求める命令も下されてはいないという。さらに、この訴訟が最高裁までもつれ込む可能性も高いと記している。そのほか、第215項自体が5月末に期限切れとなることから、米連邦議会ではその延長や代替案の成立に向けた議論が活発化しているとの指摘もある。

【参照情報】
・NSA Phone Program Is Illegal, Appeals Court Rules - WSJ
・N.S.A. Phone Data Collection Is Illegal, Appeals Court Rules - NYTimes
・Federal appeals court says NSA phone program is illegal - The Verge
・Section 215 of the Patriot Act Expires in June. Is Congress Ready? - EFF