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「5G」の技術開発をフルラインアップで紹介、ドコモの「5G Tokyo Bay Summit」

5G Tokyo Bay Summit 2015

2015.07.24

Updated by Naohisa Iwamoto on 7月 24, 2015, 18:48 pm JST

NTTドコモは2015年7月22日~23日、神奈川県横須賀市のドコモR&Dセンタ(YRP)において、次世代通信システム「5G」推進のイベント「5G Tokyo Bay Summit 2015」を開催した。ドコモと5G技術の開発で協力関係にある世界のベンダーが集まり、講演と技術のデモ展示を行った。ドコモの独自展示と、ドコモと共同実験を行うベンダーの展示に分かれたデモ展示からトピックを紹介する。

ドコモの独自展示ゾーンでは、まずは2015年に標準化作業が始まる次世代通信システムで、2020年の商用化を目指しているといった5Gについての基本説明があった。ドコモが考える5Gの目標としては、「大容量化」「高速化」に加えて、IoTなどの「大量のデバイスの接続性」こと、「低遅延」「低コスト」といった要件を満たすことを挙げた。その上で、ドコモでは、低い周波数帯と高い周波数帯を組み合わせて効率よく無線レイヤーを使うことで、5Gの要件を実現するアプローチを採ることを改めて説明した。

ドコモでは、2020年の5G商用開始のタイミングでは、5GHz以下といった低い周波数帯を利用した技術が使われると想定している。その後の拡張のイメージとしては、「5G+」といった位置づけで、数十GHzといった高い周波数帯を利用した新しい技術を採用していく。5Gには現行のLTEを拡張する技術も含まれ、5G、5G+と合わせて複数のフェーズで5Gの要件を満たすネットワークを整備していくことになるというのが、ドコモの考える5G拡張のイメージだ。

デモ展示では、低い周波数帯の容量を拡大するための技術として「NOMA」(非直行多元接続)のデモを行った。NOMAでは、電力の領域を使ってユーザーの多元接続を実現する。デモで示したのは2つの端末を使った例で、基地局から近い端末との間は弱い電力で通信をし、基地局から遠い端末との間では強い電力で通信をする。基地局から遠い端末では、基地局に近い端末の弱い電力の通信は減衰するため、強い電力の自分宛ての通信だけを受信できる。一方、基地局から近い端末では双方の通信が干渉するため、シリアル干渉キャンセラ(SIC)を導入して自分宛てではない通信の電力を打ち消して、自分宛ての通信だけを受信する。会場には基地局と、近くの端末、廊下の奥に設置した遠い端末を用意し、NOMAによる多元接続が可能なことを示した。2つの送信アンテナでMIMOと組み合わせることで4ビームの多重が行えるという。

▼NOMAのデモ。奥が基地局装置とアンテナで、写真の手前側に遠近の2台の端末装置を設置した。画面上に上下(電力軸)に「オレンジ」と「グリーン」で表示されているのが、NOMAの多元接続の様子20150724_docomo001

また、低遅延を実現するためのコアネットワークの将来像の展示もあった。5Gでは大容量、高速、低遅延など同時に満たすことが難しい複数の要件が挙げられている。そこで、5Gの無線レイヤーを支えるコアネットワークも、1つの技術ですべてを満足するのではなく、要件が異なるサービスごとに仮想化したコアネットワークを割り当てるという考え方だ。デモでは、最適ルーティングの機能を搭載したネットワークと通常のネットワークの間での遅延の差を実演。遅延パターンを5ミリ秒、50ミリ秒、200ミリ秒と変化させて、ヘッドマウントディスプレイで写した映像をネットワーク経由でアプリケーション処理して際の映像の遅れ具合を示した。200ミリ秒では手の握り開きが完全にずれて表示されるのに対して、5ミリ秒ではほとんど遅れが目立たなかった。

▼将来のコアネットワークの要件を資格でアピール。200ミリ秒の遅延では、ネットワークを介した映像は大きくずれて、遠隔操作などには適さないことがわかる20150724_docomo002

ベンダーとの共同実験のデモ展示もあった。その1つがノキアとの共同実験のデモ。73.5GHz帯というミリ波帯の高い周波数の1GHz幅を使い、実際に会場の人混みの中で約20mの距離で電波を飛ばして、端末機器が移動しながらの条件でも約2Gbpsの高速通信が安定して実現できることを示した。ビームフォーミングにより、端末の動きに追従して指向性の高い電波を飛ばして実現する。具体的には基地局が3度のビーム幅で64のビームを用意し、その中から端末のある方向のビームを選択して電波を照射する仕組みだ。今回のデモで興味深かったのは、ビームフォーミングの様子をAR(拡張現実)で可視化した点だ。ヘッドマウントディスプレイで基地局と端末の間の空間を見ると、ビームが選択されて指向性の高い電波が照射されていることが目で見える。その様子はデモのディスプレイにも表示され、移動する端末をビームフォーミングによって追従することが示されていた。

▼ノキアとの共同実験では、ヘッドマウントディスプレイを使ったビームフォーミングの可視化の様子を示した。画面に赤く示されているのがビーム。約20m離れた基地局と端末の間で、2Gbpsのスループットが得られていることが、画面右上の表示でわかる20150724_docomo003

エリクソンとの共同実験のデモ展示では、15GHz帯の周波数を使い、400MHz幅で約5Gbpsのスループットが得られることを示した。OFDMの技術を使いながら、パラメーターを高い周波数帯に適合するように調整し、高速通信を実現した。デモでは4K動画を8ストリーム同時に伝送しても、スムーズに映像が再生されることを示した。基地局からの距離を離すように端末装置を動かすと、基地局から約10mで3Gbps程度までスループットが下がる様子で、実際に無線で通信していることを体感できるデモだった。

▼エリクソンとの共同実験では、5Gbpsのスループットが得られることを示した。奥が基地局、手前のディスプレイがついた装置が端末20150724_docomo004

このほかにも、ファーウェイとの共同実験では、LTEを免許不要帯域(アンライセンスバンド)で利用するLAA(Licensed-Assisted Access)のデモがあった。これは、低い周波数帯の有効利用の技術で、5Gよりも早い導入が見込まれるものだ。無線LANで利用するアンライセンスバンドでLTEを使うと、無線LANに影響が起こる可能性がある。これを防ぐため、周波数の利用状況を事前に確認してから送信する「Listen-Before-Talk」(LBT)という技術を導入する。まだLAAの技術として詳細が標準化されていないが、デモではLTEと無線LANがアンライセンスバンドで共存できることを技術的に示していた。

▼ファーウェイとのLAAの実験。青と赤がWi-Fi、緑がLAAで、青のWi-Fiを緑のLAAに置き換えてもLBTの効果でスループットが下がらないことを示した20150724_docomo005

また、ドコモが新しく5Gの実験を共同で行うことを発表したばかりのインテル、クアルコム、キーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツ、パナソニックの5社も講演や展示で参加した。パナソニックは、ドコモと共同開発した5Gのマルチドメインシミュレーターを出展した。低周波数帯と高周波数帯のシステムが混在するマルチドメインにおいて、システムの選択の仕方のアルゴリズムを変えることで、全体のスループットが変化する様をシミュレーションできることを示した。

▼高い周波数に割り当てを多くしたアルゴリズム「PRM1」では、3種類の周波数帯に均等に割り付けた「PRM2」よりもトータルのスループットが高くなることがシミュレーションで示された20150724_docomo006

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。