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セーフハーバー無効判決の続報のほか、フランスの社会学者による「デジタル労働」についての提言記事が掲載されている。各ニュースの詳細については、原文のリンクを参照されたい。

法律・規制

EU司法裁判所がセーフハーバー無効判決を下すに至った、そもそもの背景についてまとめられた記事。

セーフハーバー無効判決を受け、アイルランドのデータ保護コミッショナーは迅速な調査を約束
Data chief promises 'speedy' investigation of Facebook case
EU司法裁判所のセーフハーバー無効判決を受けて、アイルランドのデータ保護コミッショナーは、Facebookが米当局に個人情報を提供しているかどうか迅速に調査すると述べた。この判決は、Schrems氏が2013年にアイルランドのコミッショナーに対して、Facebookのプライバシー保護を調査するよう申し立てたことに端を発するもの。申し立てが却下されたためSchrems氏は告訴を行い、それを受けたアイルランドの裁判所はEU司法裁判所に判断を求めていた。

これまでIT企業はプライバシー保護を理由に、ユーザー情報の開示を拒否することがあったが、セーフハーバー無効判決以後、その対応に変化があるかもしれない。

オランダ法廷がGoogleにユーザー情報開示を命令、EUプライバシー保護とセーフハーバーの議論にも影響か
Safe Harbor was for EU privacy: But how safe is US data in Europe?
セーフハーバー無効判決の1日前、オランダの裁判所がGoogleに対し、Google Playでオランダ語の電子書籍を権利者に無断で販売していたアカウントに関する情報を、権利者側に引き渡すよう命令した。Googleは判決内容を検証しているという。該当アカウントが個人か法人か、またEUか米国居住か現時点で不明だが、米国居住の個人だとしたらセーフハーバー協定およびEUプライバシー保護基準との整合性について議論となる可能性がある。

米国下院のプライバシー保護法の改正案の可決についての、下院法務委員会からのプレスリリース。

在米外国人のプライバシー保護を強化する法案が下院を通過、セーフハーバーの改訂作業に好影響が期待
GOODLATTE, SENSENBRENNER AND CONYERS PRAISE HOUSE PASSAGE OF LEGISLATION TO STRENGTHEN PRIVACY PROTECTIONS FOR INDIVIDUALS
10月20日に米下院で「Judicial Redress Act of 2015 (H.R. 1428)」が可決された。これによって、米国内において外国人に対してプライバシー保護を受けられるようになる。また、下院法務委員会委員長などからは、この法案が現在作業が進められているEU米国間のセーフハーバー協定の改定作業に対してよい影響を与えると、賞賛する声明が発表されている。同法案はこれから上院での審議が控えている。

ビジネス

IoT専門媒体による、コンシューマー向けのIoTビジネスの解説記事。プライバシーとセキュリティへの配慮は、競合優位になるという。

拡大するIoTビジネスにおいて競争に勝つためには、消費者がデータ活用と保護を両立できる技術の採用が必要
When Identity Management and the Internet of Things Collide, New Opportunities Emerge
IoTの市場規模は大きな成長が見込め、ウェアラブルやモバイル端末による個人向けのサービスにはビジネスチャンスがある。しかし、プライバシーとセキュリティへの配慮がサービスの成否を左右するため、プライバシー・バイ・デザインは必須要素。消費者の利便性と安全性を両立するために、アイデンティティ・マネジメント技術を用いて、消費者自ら情報を管理できる必要がある。

オピニオン

クラウドビジネスに軸足を移しているMicrosofftは、セーフハーバー無効判決に前後して活発に情報発信を行っている。

Microsoftの最高峰無責任車が国と企業間での個人データの扱いに関する提言
Microsoft’s plan to avoid a ‘return to the digital dark ages’ in wake of Safe Harbor decision
Microsoftのブラッド・スミス最高法務責任者はブログにて、今後のプライバシー保護に向けた法と国と企業の取り組みについて提言をしている。そのうちのひとつは、国は企業が持つ個人データにアクセスする場合は、正当な手続きにもとづいて企業を通してのみ行うべきというもので、国による企業への不当なアクセスを拒否するもの。スミス氏はこうした取り組みがなされなければ「デジタル暗黒時代への回帰」すると強く警告している。

仏のオピニオン誌「ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」に掲載された社会学者へのインタビュー。

ソーシャルメディアの利用は新たな「労働」、企業はその報酬をなんらかの形で人々に支払うべき
Facebook, Twitter : et si nous etions payes pour notre activite sur les reseaux sociaux ?
社会学者のAntonio Cassilliが、人々がソーシャルサービスを利用することは企業にとって価値を生産する「デジタル労働」にあたるとの学説を発表した。投稿やシェア、「いいね!」といったアクションが生み出す価値は、無料でサービスを利用できるという報酬よりも大きく、企業はその余剰価値をかすめ取っている。労働ならば報酬を支払う必要があるが、個人ごとに労働量を算出できないため、国ごとに新たな税を課すなどして市民への還元が必要だと提言している。

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