テロ捜査に端を発したAppleと米政府との対立が、大きな騒動となっている。また、プライバシーシールドについても、まだ状況は揺れている。各ニュースの詳細については、原文のリンクを参照されたい。
法律・規制
Appleがプライバシーを尊重する姿勢を見せたのは2010年からで、それ以前はデータ利用について批判されることも少なくなかった。
Appleのプライバシー尊重は2010年のスティーブ・ジョブズの発言から始まった
Here’s What Steve Jobs Had to Say About Apple and Privacy in 2010
テロ事件の容疑者が保持していたiPhoneのロック解除を巡り、Appleは米政府と争っているが、この件はシリコンバレー全体に波及するかもしれない。アップルは、2014年に完全なデバイス暗号化を行ったが、さらにさかのぼる2010年に故スティーブ・ジョブズはイベントでiPhoneの位置情報利用について「オプトインした場合のみ作動する」ことを協調した。これはAndroidに対する優位性を示す発言だが、当時からAppleは「プライバシー」がブランド強化に繋がることを意識していたようだ。
多くのIT企業は、裁判所からの命令によって顧客情報を開示してきており、それはAppleも同様だ。
米政府に対立するApple、IT業界は1枚岩ではなく嵐を過ぎ去るのを待つものも多い
Apple Letter on iPhone Security Draws Muted Tech Industry Response
連邦裁判所によるiPhoneのロック解除命令をAppleが拒否したことに対して、GoogleやFacebook、ツイッターはAppleを支持するコメントを発表した。しかし、Appleを含む多くのIT企業はこれまでも政府に協力してきた経緯があり、それを踏まえて「Appleはやりすぎ」だと評する業界関係者もいる。いずれにしろAppleが消費者よりの姿勢を取れるのは、同社のビジネスが米政府から距離を取っており、またウェブ上でのデータ収集に依存しないためだ。
アンブレラ条約とプライバシーシールドの早期締結に向けて、「Judicial Redress Act(法的救済法)」は米議会において急ピッチで審議されていた。
EU米国間の犯罪捜査にまつわる協定を欧州議会議員が批判、不正利用への救済が不十分
Commission's `Umbrella Agreement` with US under fire from MEPs
犯罪捜査に関わるEU米国間のデータ移転を可能にする「アンブレラ条約」が、EU法に準拠していないとEUから批判が出ている。同条約では、EUが米と共有したデータを米政府が不正に利用した場合の救済措置が規定されていないため、米国内でのEU市民の権利保護を目的とした「Judicial Redress Act」を米議会が承認する成立を待って締結された。しかし、EU議会や議員は保護を国籍で限定すべきではないと主張している。
調査・レポート
政府が機密を盾に不当な行為をしていること、テロリストが市民的自由を悪用していることなど、事情は入り組んでいる。
米国市民はテロリストの脅威も、政府によるプライバシーの侵害を同時に懸念している
Public Split Between Concern Over Terrorism and Privacy
米政府とAppleの対立は、テロの恐怖と市民の自由とによる世論の分断だが、多くの人々はその間で揺れ動いている。世論調査では、政府のテロ対策が不十分だと考えながら、同時に市民の自由が制約されることを懸念する。また、ほとんどのアメリカ人は、政府による国民のデータ収集は制限されるべきだと考えている。今回の件でAppleへの好感度の変化は未調査だが、過去数年間は一貫して米議会や大統領よりも高い好感度を得ている。
企業向けの法律コンサルタントによる現状の解説。プライバシーシールドは、まだ完全にEUで承認されたわけではない。
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