イギリスのテック企業がEU離脱に反対する理由

Why UK tech companies against EU exit

2016.04.01

Updated by Mayumi Tanimoto on 4月 1, 2016, 09:30 am JST

イギリスで今最も注目を集めている話題は、EU離脱です。離脱賛成派にロンドン市長のボリス・ジョンソン氏やビジネス界の大物が参加したために、若年層や高所得層が離脱に投票するのではないかとの憶測があります。

テック業界企業の業界団体であるtechUKが実施たした調査によれば、イギリスのテック企業の70%が離脱には反対しています。76%はEUにとどまったほうが投資に有利であると応え、71%は世界的な競争力の維持に有利である、75%は加盟国との貿易に有利であると答えています

techUK CEOのJulian David氏は「イギリスのテックセクターは他の業界に比べ三倍の速さで職を生み出している。会員企業の多くはEUは成長を支援していると述べている。オープンな市場と協力はビジネスにとって良いことだ。5億人の市場は恐怖ではなく機会なんです」と述べています。

テック企業の多くが離脱に反対するのはよく分かります。現場的視点で考えると、EU加盟国であったほうがヨーロッパでの迅速なサービス展開が可能ですし投資にも有利です。そして最大の懸念はリクルーティングでしょう。

2015年のCIO紙の調査によれば、88% の CIOは採用が最も需要な経営課題の一つだとし、 58% は求める人材を採用できないため業務に支障があったと答えています。また47%は人材不足を埋めるためにEU加盟国から採用し、62% は社内で人材を育成するために社内でアプレンティスシップ制度(給料を払いながら研修生に技術を身につけてもらう制度)を設けたと答えています。

イギリスのテック業界は日本とは異なり、基本的にサービス残業やデスマーチはありませんので、就労環境は悪くはありません。職能型雇用ですので、報酬はスキルに沿います。需要のあるスキルがあれば高い報酬を得られますので、賃金が安いから人がいない、というわけではありません。技能のある人材が足りないのです。

日本だとちょっと想像しにくいのですが、イギリスの場合、テック関連の職場は要員の半分以上とか8割が外国人ということが珍しくありません。スキルがマッチするのが外国人だったので単にそうなっているだけです。

その少なからずがEUからやって来たヨーロッパの人々で、フランス、イタリア、オランダ、ギリシャ、ブルガリアなど顔ぶれは様々です。

EU国籍の場合は就労許可も永住権もいりませんし、イギリスにやって来たその日から働けるので企業側にはありがたい存在です。英語ができるのも当たり前ですし、大陸ヨーロッパの大学や企業なら、大方のスキルレベルや教育レベルも分かりますので、経歴のスクリーニングも楽です。

反対に、イギリスに拠点のある企業が大陸ヨーロッパに進出する場合、イギリス国籍者やその企業に雇用されているEU 国籍の人に赴任や転籍してもらうのも楽です。労働許可の取得も居住許可も不要ですので時間が無駄になりません。

イギリス議会の調査によれば、テックセクターで働く人の約6%はEU出身の外国人です。9%の飲食およびサービス業に比べれば少ないのですが、他の業界に比べると高い割合です。

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the House of Commons Library Leaving UK

イギリスがEUを離脱した場合、EUの雇用と居住の自由も適用されなくなるので、EU国籍者の雇用が面倒になる可能性がありますが、インドやロシア、北米、東アジアなど出身の非EU国籍者の就労許可は緩和される可能性がありますし、EU国籍者には何らかの配慮がある可能性があるので、離脱の影響は思ったほど大きくないのではないでしょうか。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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