写真:岩槻秀明
写真:岩槻秀明
ぐんぐんと気温が上がり、初夏と呼ぶのにふさわしい季節。雨が降った後の青空には、虹が見られることも。虹ってさまざまな色や形があるってご存知ですか?
2016年5月20日は、二十四節気の「小満」。気温が上がり、まるで夏のように暑くなる日もあります。草木の成長も著しく、緑は日ごとに色濃くなっていきます。
この時期、雨上がりに鮮やかな虹を見つけると、ついテンションが上がってしまいます。虹についても詳しい先輩気象予報士の岩槻秀明さんにお話を伺いました。
虹をよく見てみよう
虹というのは、太陽と反対方向の空にたくさんの水滴が含まれるときに出現します。太陽の光が、水滴の中を通るときに水滴の内側で反射し、外に出るときに光は屈折することで、白い光が赤から紫まで分かれるのです。雨上がりの空のほか、滝や噴水の近くにも、虹が現れます。太陽ではなく、月の光によっても虹ができることがあります。こちらは「月虹」といい、月明かりの夜、滝壺の近くに行くと見えるかもしれません。
虹によって、たくさんの色が見える場合もあれば、あまり色が見えない場合もあります。ときには白い虹が現れることも。虹の色数は、水滴の大きさが決め手です。大きな雨粒の中を通るときは、より多くの光に分かれます。一方、霧などの細かい水滴の中を通るときは、白っぽくなります。
虹は「赤」「橙」「黄」「緑」「青」「藍」「紫」の七色だといわれています。しかし、空を見上げて本当に7色全部見たことのある人はどれほどいるでしょうか。たいていは3色、どんなに多くてもせいぜい5色です。実は、虹を7色だと定義づけたのは、科学者ニュートン。虹の色を音楽の音階と結びつけたかったからなのだそうです。日本の学校教育でニュートンの定義が採用されたため、現在の日本では虹は七色とされていますが、ほかの国の多くは、虹は5色または6色としています。なので、7色見えなくても決して落胆することはないのです。
しかし、ときには、「7色以上あるんじゃないか?」と感じる虹を発見するかもしれません。これは「過剰虹」といって、主虹の内側に、緑と紫の帯が繰り返されるように出現する虹です。霧雨が降っているときなど、雨粒が揃っているとはっきり見えます。
2本虹が現れることがあります。内側の濃い虹は主虹、外側の薄い虹は副虹と呼ばれ、色の並び方が主虹と副虹では逆になります。もし、二重の虹が出ている場合は、虹と虹との間に注目です。この部分は周囲よりも暗くなっており、「アレキサンダーの暗帯」と呼ばれています。
空を彩る鮮やかな現象
虹といえば、太陽と反対側に大きな円弧を描くものが一般的ですが、ときには普段とはちょっと違った場所に、虹のようなものが現れることがあります。たとえば、真上の空に現れ、虹と逆さの向きをしている「環天頂アーク」や、地平線近くに現れてまっすぐに近い形をしている「環水平アーク」など。これらはハロの一種ですが、まるで虹のように色鮮やかです。
ただ虹が見えるだけでも珍しいのですが、こんな珍しい虹が見られたら、ちょっと幸せな気分になりますね。
大粒の雨はなんだか怖いものですが、雨上がりに虹が見られるかもしれないと考えると、なんとかやり過ごそうという気になります。これから本州は梅雨の便りもそろそろ聞かれる時期。雨の季節を楽しく過ごすために、虹探しをしてみましょう!
取材協力先:
岩槻秀明
1982年宮城県生まれ。人間総合科学大学人間科学部卒。気象予報士。千葉県立関宿城博物館展示協力員。自然科学系ライターとして、気象学や植物、昆虫などの書籍の執筆を行う。また、学校や公民館で自然観察講座や気象講座の講師も勤める。「わぴちゃん」の愛称でテレビやラジオにも出演。『雲の図鑑』(ベスト新書)、『最新版 街でよく見かける 雑草や野草がよーくわかる本』(秀和システム)ほか、著書多数。
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登録はこちらサイエンスライター。気象予報士。2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けに分かりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。共著書に「気象の図鑑」(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。