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夏至ーー空の色に思いを馳せる[二十四節気のあかり]

夏至ーー空の色に思いを馳せる[二十四節気のあかり]

2016.06.21

Updated by Akiko Imai on June 21, 2016, 16:49 pm UTC

さあ、一年で最も昼間の長い夏至がやってきました。北欧などの高緯度地帯では、この時期は白夜となり、夜でも闇になりません。この白夜のような空が、日本でも見られるということをご存知でしょうか。

1年で最も昼の長い夏至。2016年の夏至は6月21日です。この日、東京では日の出が4:25で日の入りが19:00となり、昼の長さは14時間35分となります。また、夏至の昼の長さは緯度が高くなれば高くなるほど長くなります。北欧諸国やグリーンランド、アラスカなどの高緯度地帯は、夜になっても太陽が沈まないか、沈んでも夜が明るい「白夜」と呼ばれる状態になります。

この、白夜の明るい夜空は、日本でも見ることができます。日の出や日の入りにまつわる、さまざまな空の表情について、今回も先輩気象予報士の岩槻秀明さんにお話を伺いました。

夕暮れ後の30分間の妖しい空の色

白夜のときの夜空は、深い藍色をしています。ちょうど、青空と夜の闇の中間のような色合いです。日本では、乾燥した冬場などの雲のないすっきりと晴れわたった日の日没後に、このような色の空が現れることがあります。日没の時には夕焼けがあり、日が沈むと地平線がオレンジ色になります。そして、さらに時間がたつと、空が深い藍色に変わるのです。このような色の空のことを「ブルーモーメント」と呼び、日本では日没後約30分間に見られる現象です。このとき、建物の白い壁も、ぼんやりとした青色に染まります。空の色が時間とともに深い闇に包まれていく様子は幻想的で、奇妙な胸騒ぎがします。この時間が「逢魔が時」と呼ばれるのも、なんとなくわかるものです。

ブルーモーメント(写真:岩槻秀明)

ブルーモーメント(写真:岩槻秀明)

なぜ、こんな色の空になるのでしょうか。実は、ブルーモーメントは青空と同じです。昼間の青空との違いは、昼間と比べて太陽の光が少ないということ。太陽が地平線の下に沈んでも、地平線近くにあるうちは、少量の太陽の光が空に入ります。これが、深い藍色を作り出すのです。要するに、ブルーモーメントの空の色は、昼間の青空と夜空の中間の色だといえます。

ちょっと変わった夕暮れの風景

さて、日の出や日没前後に、太陽と反対側の空を見ると、地平線が濃い青色からピンク色のグラデーションに染まることがあります。これは地球の影が空に投影された状態で、「地球影」または「ビーナスの帯」と呼ばれています。こちらも、見られるのは空気が乾燥した冬晴れの日。ちょうど、ブルーモーメントが見られそうな日でもあるので、日没時にビーナスの帯が観察できたら、ブルーモーメントも期待できそうだと覚えておくとよいでしょう。

地球影(写真:岩槻秀明)

地球影(写真:岩槻秀明)

ときには、夕暮れ時の空がさまざまな色の帯のようになり、放射状に広がっていることがあります。光のイリュージョンのようなこのような現象のことを、「薄明光線」といいます。これは、西の地平線近くに積乱雲があり、その影が光の筋となって見えています。薄明光線のなかには、光の帯が東の空まで伸びているものも。これは「反薄明光線」または「裏後光」と呼ばれています。大気中の水蒸気が多いときに起こり、特に沖縄では猛烈な台風が襲来する兆しとして恐れられてきました。台風の多くは西から接近しますし、台風が接近すれば大気中に水蒸気が増えるわけですから、確かに反薄明光線は嵐の兆しだといえます。

夕焼けや朝焼けはバラエティ豊か

普段なにげなく眺めている朝焼けや夕焼けも、よく見るといろいろな色があることがわかります。黄色やオレンジ色、赤紫色やピンク色などさまざまです。このような色のきめては、空気中のチリや水蒸気量、太陽と雲の位置関係などです。

空の色というのは、太陽の光が空気中の塵や水蒸気にぶつかり、あちこちに散らばる(散乱)ことで色として見えています。特に、波長の短い光ほど強く散らばりやすいため、晴れた昼間は空が青く見えます。これをレイリー散乱といいます。一方、日の出や日の入り付近は、太陽が斜めから差し込むため、空気中を通る距離が長くなります。すると、波長の短い青色は途中で弱くなり、波長の長い赤色の光が残って、空が赤く見えるのです。これが夕焼けや朝焼けのしくみです。空気中にある塵や水蒸気の量、雲の高さや量などで、太陽光の散乱のされ方が変わってくるため、さまざまな色の夕焼けや朝焼けが見えるというわけです。

早朝(写真:岩槻秀明)

早朝(写真:岩槻秀明)

そういえば、「朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」という天気についてのことわざがありますが、夕焼けがきれいだからといって、必ずしも次の日が晴れるとは限りません。夕焼けのあとに空が再び青くなり、ブルーモーメントが見られれば、次の日は晴れです。しかし、夕焼けの跡に空が不気味なほど赤くなり、ときにはどす黒く見えたり、東の空まで鮮やかな夕焼けが見えたりする場合は、台風接近や大雨のサインです。

同様に、朝焼けも、東の空だけが黄色く、すぐに色が白く変わる朝焼けのあった日は晴れます。一方、空全体が真っ赤に燃えるような朝焼けの場合は、雨の可能性大です。

朝焼けや夕焼けで天気を予想したい場合は、一歩踏み込んだ観察が必要なんですね。これで、空を見上げる楽しみがまたひとつ増えました。

夕焼け(写真:岩槻秀明)

夕焼け(写真:岩槻秀明)

取材協力先:
岩槻秀明
1982年宮城県生まれ。人間総合科学大学人間科学部卒。気象予報士。千葉県立関宿城博物館展示協力員。自然科学系ライターとして、気象学や植物、昆虫などの書籍の執筆を行う。また、学校や公民館で自然観察講座や気象講座の講師も勤める。「わぴちゃん」の愛称でテレビやラジオにも出演。『雲の図鑑』(ベスト新書)、『最新版 街でよく見かける 雑草や野草がよーくわかる本』(秀和システム)ほか、著書多数。

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今井 明子(いまい・あきこ)

サイエンスライター。気象予報士。2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けに分かりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。共著書に「気象の図鑑」(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。