テスラ車Autopilot関連の死亡事故、発生当時の状況の一部が明らかに

2016.07.04

Updated by WirelessWire News編集部 on July 4, 2016, 12:51 pm JST

先週明らかになったテスラ（Tesla）「Model S」関連の死亡事故についてさまざま米媒体が続報を伝えているが、米NHTSAならびに事故のあったフロリダ州警察当局の調査結果が発表されていない現段階で、たとえばテスラによるベータ版ソフトウェアの配布の是非に焦点を当てたり、あるいは米NHTSAの規制の不備に言及したものなど、なかには過剰反応と思えるような論調（話題の採り上げ方）の記事も交じっており、「いったい何が原因で事故が起こったのか」「どういう手段が講じられていれば事故発生を回避できていたか」といった部分が余計に見えづらくなっている印象も受ける。そこで、ここでは発生当時の状況で明らかになっている部分といまだに不明な部分に絞って、話を進めることとしたい。

事故発生現場の状況

現場の状況については、Electrekが解説入りの航空写真（警察が発表したもの）で、またNYTimesが図解を引用する形でそれぞれ伝えている。

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（Electrek）

2016041244
（NYTimes）

航空写真中にある大きな黒の長方形が衝突されたトレーラー車、そして小さな黒い長方形が事故にあったModel Sをそれぞれ指している。脇道から大きな道路---USルート27というハイウェイに入ってきたトレーラーの側部にModel Sが衝突、ただしトレーラーの荷台部分の車高が高かったため、Model Sは車体上部を吹き飛ばされたまま数百ヤード先まで走行を続け、ふたつのフェンスに衝突した後、電柱（ポール）にぶつかってようやく停車、といった経過がこの写真からは読み取れる。またふたつの道が交差する部分は、「Lil Food Ranch」というコンビニ兼ガソリンスタンドの敷地こそあるものの、周囲に森などもあり、どちらの車輌からも見通しがあまりよくない場所であることも読み取れる。

下記はGoogle Street Viewに出ているこの交差点の写真。上が高速側（Model Sドライバー側）から、下が脇道（トレーラーのドライバー）からみた交差点の様子。

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Model S搭載のカメラセンサーやソフトウェア類を供給するモバイルアイ（Mobile Eye）から、「横からの飛び出しは現時点で想定外（2018年に対応予定）」などといったコメントも発表され、またテスラのイーロン・マスク（Elon Musk）CEOも「Autopilotがトレーラーの荷台部分を交通標識と誤認し、ブレーキをかけずに下を通過しようとした」などとtweetしていた。

@artem_zin @theaweary Radar tunes out what looks like an overhead road sign to avoid false braking events

— Elon Musk (@elonmusk) 2016年6月30日

ただし、現場が上記のように見通しのあまりよくない場所であることを考えると、トレーラー側が一時停止せずに交差点に進入してきた可能性や、死亡したドライバーが、テスラ側の呼びかけ通り、運転に充分な注意を払い、トレーラーの存在を認識していたとしても、ブレーキをかけたり、ハンドルを切ったりするのが間に合わなかったという可能性も考えられる。いずれにしても、それぞれの車輌の巡航速度やブレーキングの有無など、調査当局の発表を待つ必要がある。

そのほか、事故で死亡したドライバー（エンジニアの教育を受け、海軍在籍時代にはイラクで爆弾除去などに従事した経歴の持ち主）が概して技術全般に明るい人物で、Autopilot機能についても何度も実験を繰り返し、その限界を比較的詳しく把握していた可能性が高いことなども報告されている。また、Model SのなかからDVDプレーヤーが回収されたことも報じられているが、事故当時にそれが動作していたか（ドライバーがそれに気をとられていたか）どうかは今のところ不明だという。

既報の通り、米運輸省では自動運転車の運用に関するガイドラインを今月中にも明らかにする見通しだが、今回の事故を受けてこの発表時期に遅れが生じるのかどうか、予定通り発表された場合技術の「ベータ版リリース」が禁じられるかどうかなどがまず今後の注目点となる。また自動運転技術の実装に関して以前から指摘されているいわゆる「ハンドオフ」（人間の介入の是非をめぐる見解の相違）の問題に関する議論がさらに活発化する可能性も考えられる。