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イギリスでAmazonのドローン配送テストが行われる理由

Why Amazon Prime Air test conducted in UK

2016.08.01

Updated by Mayumi Tanimoto on August 1, 2016, 11:51 am JST

Amazon Prime Airのテストがアメリカではなくイギリスで実施されることになったのが話題になっていますが、一見なんでも規制が厳しそうなイギリスで何で?と思った方多いのではないでしょうか。

アメリカに比べると規制が厳しい部分もありますが、ドローンに関してはイギリスと欧州大陸は、アメリカに比べるとかなり 緩いアプローチをとっています。

イギリスではドローンの規制を担当するのはthe Civil Aviation Authority (CAA)ですが、イギリスのユーザーは一部の例外を除きドローンを政府に登録する必要がありません。

CCAが定めたThe Dronecodeでは

ドローンが飛行できるのは400フィート以下

常に飛行機、ヘリコプター、空港、離着陸場を避けること

常識を持つこと、そして安全に飛行すること。そうしないと訴えられる可能性があります

カメラ付きのドローンは、人間、車両、建物もしくは骨組みの50メートル以内、混雑した場所や大規模な集会、例えばコンサートやスポーツイベントの上を飛んではいけません。

というかなり大雑把な取り決めしかありません。「常識を持つこと」というのがイギリス的な感じでありますが、その後ろに「訴えられる可能性がありますよ」というのがポイントで、既存の法律で損害賠償を請求することが可能なので、ドローンに特化した法律をチマチマ決めませんよ、というメッセージでしょう。ここは訴訟国家なので、例えばドローンを家の上で飛ばされて睡眠を害されたから損害賠償を請求する、ドローンで取られた写真がプライバシーの侵害だから訴えるという事例が目に浮かぶようです。

しかしながら、このように規制をあえてゆるくしておくのには、技術面ではアメリカに追いつけないので、規制を緩くしておくことで、市場を活性化したいという意図が見えます。

2015年にはイギリス貴族院のEuropean Union Committeeが、Civilian Use of Drones in the EU という報告書を発表していますが、欧州域内でのドローン市場の活性化を目標とし、 the European Aviation Safety Agency (EASA) とthe Joint Authorities for Rulemaking on Unmanned Systems (JARUS)が中心となって域内全体に適用されるルール作りを実施し、なおかつNASAと協力するべきだとしています。しかしこの報告書の提案でも厳しい規制を推奨しているわけではなく、あくまで市場の活性化に重きを置くという方向性です。

一方アメリカの場合はイギリスよりも規制を厳しくしており、the Part 107 ruleはかなり細かいルールが決められています。

 

  • 商用利用の場合は16歳以上

  • 連邦航空局の実施する試験に合格しなければならない

  • 交通安全局のバックグラウンドチェックを通過しなければならない

  • ドローンは55 lbs(約24キロ)以下

  • 運転者は政府に登録する必要

  • Class G airspaceを飛ばなければならない

  • 常に目で見えなければならない

  • 400フィート以下を飛行

  • 飛べるのは日中

  • 100 mph以下のスピード

  • 飛行機に空路をゆずならければならない

  • 人の上、動いている車両の上を飛んではならない

趣味で飛ばす場合はここまで厳しくありませんが、模型飛行機の規制に沿う必要があります。ドローンが24キロ以上の場合は政府に登録しなければなりません。

日本の場合は、国土交通省が規制を定めていますが

 

(2) 無人航空機の飛行の方法

飛行させる場所に関わらず、無人航空機を飛行させる場合には、

[1] 日中(日出から日没まで)に飛行させること

[2] 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること

[3] 人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること

[4] 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと

[5] 爆発物など危険物を輸送しないこと

[6] 無人航空機から物を投下しないこと

といったルールを守っていただく必要があります。上記のルールによらずに無人航空機を飛行させようとする場合には、あらかじめ、国土交通大臣の承認を受ける必要があります。

日本の場合は大枠ではイギリスとアメリカのルールに沿っていますが、

[6] 無人航空機から物を投下しないこと

のために、ドローンの商用利用が進みそうにありませんが、日本の場合は、アメリカやイギリスに比べて遥かに犯罪率が低く、機器のメンテナンスなども几帳面なので事故が起きそうにない上、都内は渋滞がひどいので、思い切って規制を緩くしてしまってもいいような気がしますが。物理的セキュリティがユルユルの原発があるのでダメなのでしょうかね。

あえて規制を緩くしてあるイギリスと欧州大陸のやり方は、規制を利用して他国との競争優位性を確保するという良い例のように思います。日本の場合も技術的にはアメリカに追いつけない部分もあるので、規制を緩くして海外からの投資を呼びこむ分野を作ってもいいでしょうね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。