ライドシェアリング・サービス最大手の米ウーバー（Uber）が、自動運転関連の技術開発を手がける米ベンチャー企業、オットー（Otto）を買収することで同社と先月合意に達していたことが、米国時間19日に明らかになった。

ウーバーが買収を決めたオットー（Otto）は、元グーグル（Google）のアンソニー・レバンドウスキィ（Anthony Levandowski）氏とリオール・ロン（Lior Ron）氏が中心となって今年初めに立ち上げたベンチャー企業で、既存の長距離用大型トラックに後付けする自動運転用キットを開発していることが伝えられていた。また5月なかばには同キットを装備したトラックのデモ走行の様子を撮した動画を公開して一部で注目を集めていた。

自動運転関連のベンチャー企業買収の前例としては、今年3月に米クルーズオートメーション（Cruise Automation）を推定10億ドルで買収していた米ゼネラルモーターズ（GM）の例などがある。

ウーバーによるオットーの買収は、人材や知財の獲得を主な目的としたいわゆる「アクィハイアー（acqui-hire）」とみられるが、従業員数100人に満たないオットーに推定6億8000万ドルの評価（買収額）がついたことは、GMの買収例とともに、同分野で続く人材獲得競争の激化を物語るもの。また、ウーバーと競合する米リフト（Lyft）にGMが資本参加（最大5億ドルの出資をコミット）し、リフトの力を借りながら自動運転車開発を進める考えであることなども考えあわせると、自動運転車の実現・普及を目指す自動車メーカー各社にとっては有力なライドシェアリング・サービス事業者との協力が不可欠な要素となってきているとの可能性も考えられる。

なお、米国時間16日には米フォード（Ford Motor Co.）がライドシェアリング・サービス向けの全自動運転車を2021年までに投入する計画を発表していたが、車輌の提供先となる具体的なサービス事業者は明らかにされていない。いっぽう、グーグルの場合も、フィアット・クライスラーと共同で100台の実験用車輌を開発することは発表したものの、開発した車輌をどう運用していくかなどはまだ明らかにしていない。

また5月下旬には、トヨタ自動車（以下、トヨタ）がウーバーに戦略的投資を行ったことも報じられていたが、ウーバーは今回ボルボ（Volvo、中国吉利汽車傘下）と提携し、総額3億ドルを投じて自動運転関連の技術開発を行う計画も明らかにしていることから、現状で特定のパートナーを持たないトヨタの今後の出方にも注目が集まる可能性が高い。

なお同日には、ウーバーが今月中にピッツバーグで自動運転車を利用したライドシェアリング・サービスを開始する計画であることも報じられている。このサービスにはボルボ（Volvo）の車輌をベースにした自動運転車が使われる予定だという。

ウーバーは2014年後半に自動運転車開発に乗り出す考えを明らかにし、このための研究開発拠点をピッツバーグ（米ペンシルベニア州）に開設、さらにカーメギーメロン大学（CMU）などから複数のロボット工学研究者などを引き抜いたことなども一時は広く報じられていた。また今年5月には、ピッツバーグ（米ペンシルベニア州）で自動運転車の公道走行実験を開始したことも報じられていた。ただし、公道走行実験で先行するグーグル（Google）や、今年に入って同分野での動きを活発化させている大手自動車メーカー各社などに比べると、ウーバーの自動運転車開発に関する動きが公にされることはこれまで比較的少なかった。

ウーバーは今月はじめに、中国子会社の事業をライバルのディディ・チューシン（Didi Chuxing）に売却することを発表し、同市場からの事実上の撤退を決めていた。またこの動きにともない、同社がこれまでに調達した多額の資金の新たな行き先に注目が集まっていた。ここにきてウーバーが自動運転車開発で攻勢に転じた背景には、この中国からの撤退があったとの可能性も考えられる。

【参照情報】
・Uber’s First Self-Driving Fleet Arrives in Pittsburgh This Month - Bloomberg Businessweek
・Uber to Buy Self-Driving-Truck Startup Ottomotto - WSJ
・Uber and Volvo commit $300 million to developing autonomous cars together - Recode
・Uber's self-driving cars will pick up their first customers this month - The Verge