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IoTとユーザーの囲い込み

IoT and user lock in

2016.10.24

Updated by Mayumi Tanimoto on 10月 24, 2016, 08:00 am JST

情報通信の世界ではユーザーを自社のサービスやデバイスに囲い込むのが重要なわけですが、IoTに関しては、ちょっと考える必要があるかもしれません。

その例が、日本でも最近話題になり始めているスマートメーターです。イギリス政府は2020年までに3,000万の家庭に5,300万台のスマートメーターを設置するという大風呂敷を広げたわけですが、実装の遅れや(やっぱり)、電波が届かない(携帯すら繋がりませんから)、セキュリティの問題(思った通り)が勃発して、予想通り責任の押し付けあい状態になっています。

最大のリスク一つは、電力会社のオペレーションの部分ではないかとこの連載でも指摘したわけですが、最近問題になっているのが、スマートメーターを実装した後の事業者の切り替えです。

イギリスの場合、スマートメーターは業者間の互換性がありません。例えばブリティッシュガスのスマートメーターを入れて、他の業者に変えても、スマートメーターがデータを送受信できる機能が失われてしまいます。

つまり「スマートではないただのメーターになってしまう」ということです。

「スマートではないただのメーター」とは、電力会社は毎月「予想」に沿った請求書を送ってきて、料金は、数ヶ月ごとにメーターを読む人が家に来て帳尻を合わせるという、昔ながらのメーター方式になってしまう、ということです。デバイス事態はスマートでも、通信できないんじゃどうしょもないですね。ちなみにメーター読む人は日本みたいに毎月来ないんです。当然差額がでるわけですが、それは後で埋め合わせます。

スマートメータープロジェクトは、Capita傘下のData and Communications Company (DCC)が運営していますが、中央収集型ネットワークが完成すれば、事業者間の互換性が満たされるといっているのですが、ネットワークプロジェクトは、今年の4月に完成のはずだったのですが、すでに三回も締め切りが先送りにされ、一体いつ完成するのは不明な状態になっています。日本だったら大ニュースになりそうですけど、ここでは全然報道されません。。。

こんな状況なので、「スマートメーター意味ないんじゃね?」とか考える消費者も少なくなく、導入がなかなか進みません。

意味がないというより「入れたらヤバイ」に近いかもしれません。

ところでこの件、IoTのサービスデザインに関して様々な示唆がありますね。

情報通信の世界ではユーザーを囲い込むのが重要なわけですが、IoTの場合、それをやりすぎるとユーザーがサービスを導入するインセンティブが削がれてしまう、ということです。

ウェブサービスやSIMフリー携帯であれば事業者の変更は簡単ですが、IoTの場合は、スマートメーターやホームセキュリティなど、生活の基本インフラに直結することも多いわけで、重みが違います。業者を変えられない、取り替えられない、変えるのに高額となると、やっぱりやめようかな、と思うユーザーが多いということです。

携帯や一部のウェブサービスの場合は、なければ困るという状況だったりしますが、多くのIoTサービスの場合は、絶対に必要だというものはないので、まず導入してもらうにはどういう設計にするべきか、熟考が必要ですね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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