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The Meadow Building at Christ Church College in Oxford

イギリスの産学連携エコシステム

Ecosystems of UK's tech transfer

2016.11.02

Updated by Mayumi Tanimoto on 11月 2, 2016, 08:00 am JST

産学連携という言葉が流行り始めてからしばらくになりますが、日本では産学連携の仕組みの見直しを行う大学も出てきていますね。

最近話題なのは、東京大学による見直しでしょう。「産学連携から産学協創へ」というメッセージの下で、「単なる研究交流ではなくトップダウンでの連携を進める」「産学協創による『知のプロフェッショナル』の育成、及び活用」「イノベーションの観点からの産学協創」「人材交流の活性化」という目標を発表していますが、漠然とした内容です。

生み出された成果の利益配分はどうなのか、研究者個人の利益はどうするのか、知的所有権はどう処遇するのか等いまいち具体的な絵が浮かんできません。

イギリスでは、産学連携で最もよく知られているのが、オクスフォード大学の「Isis Innovation」と ケンブリッジ大学の「Cambridge Enterprise」ですが、双方のポイントは、大学側は成果物の知的所有権を所有せず、スピンオフしたビジネスの株式を所有することでリターンを得る、ということです。

2014/15年度は、Cambridge Enterpriseは£1,560万(約20億円)、Isis Innovationは£2,458万(約30億円)を株式の現金化より得ています。得られた現金は研究開発活動に再投資されるか、各学部に分配されます。

ベンチャーキャピタルのPlayfair CapitalのパートナーであるNathan Benaich氏は、大学が投資しなかったビジネスが成功する場合もあるが、同級生や卒業生がリスクをとってテクノロジービジネスに取り組み、彼らが成功する姿を見るのは、学部生や院生にとって大きな刺激になり、金銭的リターン以外の意味もある、と述べています。

最近AI関連では、Evi Technologies、Dark Blue Labs 、Vision Factoryなどギリス発のベンチャーをGoogleやAmazonが買収する例が目立ちますが、そういうベンチャーの多くは大学発であることは注目するべきでしょう。

AI関連のビジネスはほとんどがソフトウェアであり、知的所有権を持つのは開発者やベンチャーの経営者であり、大学側は所有しません。

従って、成功した場合の取り分が大学に行くわけではないので、研究者や学生は開発や起業のインセンティブがあるわけです。大学に籍を置いたままの企業経営や民間企業との兼務は、外のアイディアやネットワークを持ってくるということで推奨されるところもあります。

民間企業や政府など、外部組織との共同プロジェクトやコンサルティングも、一定の費用を大学側に払えばあとは教員個人の収入になりますから、本業よりそっちの方が忙しい人もいます。

コンサルティングの場合、大学の研究者は、民間のコンサルティングファームの人がもらう程度の報酬を得られることもあります。自治体や政府が依頼者でも無償労働ということは少ないです。(無償だったら誰もやりません)

イギリスの大学はほとんどが国立ですが、ケンブリッジやオクスフォードだけではなく、他の大学の研究者でも企業経営を兼任する研究者も少なくなく、大学間の人の移動も盛んです。

上位の研究者の報酬は交渉によるので、優秀な人ほど多くの報酬が支払われる仕組みで、研究者間の格差も小さくありません。

多くはありませんが、レイオフや降格もあります。大学教員とはいっても身分が安定しているわけでもなく、社会的な尊敬もそれほどはなく、報酬も企業経営や民間企業経営に比べると安いので(とはいっても、上位の研究者の場合は、日本で大企業の幹部程度の報酬が貰えることもあります。ただしシティやテック系起業に比べると激安です)、大学に籍をおいたままで、起業や開発するインセンティブがあるわけです。

日本で産学連携を盛んにするには、研究者に金銭的報酬が発生する仕組みを導入すること、ワーキンググループなどではボランティアを強制せず、妥当な報酬を支払うべきでしょう。

研究者は専門家ですから、妥当とは民間企業以上の報酬のことを指します。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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